スウェーデン・エステルスンドで開催されたカーリングのミックスダブルス世界選手権。日本代表として参加した藤澤五月(ロコ・ソラーレ北見)と山口剛史(SC軽井沢クラブ)のペアは、日本勢過去最高の5位という結果を残した。 山口は「やるからには…
スウェーデン・エステルスンドで開催されたカーリングのミックスダブルス世界選手権。日本代表として参加した藤澤五月(ロコ・ソラーレ北見)と山口剛史(SC軽井沢クラブ)のペアは、日本勢過去最高の5位という結果を残した。
山口は「やるからには金メダルを目指していたので、悔しさもあるけれど……」と前置きしたうえで、こう語った。
「基準となるベスト8以上の成績を残せたのはよかった。”ジャパン”としての仕事はできたのかなと思っています」
ミックスダブルス世界選手権で5位になった藤澤&山口ペア
ミックスダブルスは、今年の平昌五輪から初めて採用された五輪の新種目だ。日本勢はそこでの出場権は得られなかったが、4年後の2022年北京五輪に向けては、本格的に出場を目指していく方向性にある。
もし北京五輪の出場枠が平昌五輪と同じレギュレーションで争われるとした場合、五輪から逆算して直近2大会の成績によって決められる。つまり、2020年と2021年の両世界選手権において、成績に応じて振り分けられるポイントを稼がなければいけない。
ポイントは、金メダルが14ポイント、2位が12ポイント、3位が10ポイント、以下、4位が9ポイント、5位が8ポイント……と、12位(1ポイント)まで与えられる。
平昌五輪を例にすると、参加8カ国中(※開催国枠の韓国を除く)、ボーダーラインとなる総合ポイント7位で出場枠を得たのは、フィンランド。2016年のカールスタッド(スウェーデン)、2017年のレスブリッジ(カナダ)の2大会で、ともに7位に入賞して、合計12ポイントを獲得していた。
ちなみに、このフィンランド代表の、オオナ・カウステ&トミー・ランタマキのペアと今回、藤澤&山口ペアは予選ラウンドで対戦。エキストラエンドまでもつれる接戦を演じて勝利している。
先述の山口が示す「基準」とは、1大会ごとに6ポイント前後、要するに五輪出場枠の目安となるポイントが獲得できる、ベスト8以上の成績を残すことだ。ただ、他国との兼ね合いもあるが、2大会合計12ポイントでは決して安泰とは言えない。五輪出場を確実にするためには、2大会とも8強入りし、どちらかで4強入りを果たすのが理想だろう。
では、今大会ではあと1勝だった4強、さらにその先のメダルチームと日本の差は大きいのだろうか。山口が言う。
「トップ4とベスト8との差は、経験にしても、戦略にしても、正直あります。でも、埋められないほどの差か? と言えば、そんなことはない。(日本勢も)メダルは狙えると思う」
実際、彼らは今回準優勝のロシアに予選で勝っている。山口の意見に同調して、藤澤はこう語る。
「パッとやって、パッと勝てるわけでは決してないけれど、(メダル争いに加わる)チャンスは(日本勢も)あると思います。ストレートアイスとカールアイス(※大きく曲がるアイス)、どちらでも対応できるスキルは必要。あとはペア同士で、それぞれの投げる石や、お互いのクセを知らないといけない」
藤澤と山口は今回、国内のトップカーラーが出場すれば、ある程度の成績を残せることを証明した一方で、初戦、2戦目と連敗を喫して苦しいスタートとなった。これは、世界戦で勝つため、ミックスダブルスの戦術にアジャストするためには、やはりペアがそろって、それなりの練習を積む期間が必須であることも示したと言える。
振り返れば、昨年の世界戦に出場した小笠原歩(北海道銀行フォルティウス)も、ミックスダブルスの強化について質問されて、「同じペアで世界のアイスに立ち続けることに意味がある」と強調している。
来年、藤澤&山口ペアが世界戦に再挑戦するかと言えば、まだ不透明だ。それぞれの所属チームが異なり、そのチーム状況も違うため、ミックスダブルスの日本選手権に出場するかどうかも未定だ。
JCA(日本カーリング協会)は北京五輪に向けて、ミックスダブルスの強化を続けることを明言しているが、前述したとおり、北京五輪までは4年あるものの、出場枠をかけた戦いが始まるまでには、実質2年しかない。今回、藤澤&山口ペアが持ち帰った世界との戦い方や距離感を、ミックスダブルス専門にプレーしている選手、4人制から参戦している強化指定選手らと、JCA主導で早急にシェアすべきだろう。
そして今後、どのペアを世界に送り込むのか。代表ペアの活動費や、期間の確保。4人制との調整や、トライアルの有無。出場枠を得た場合の国内選考の方法などなど……、あらゆる可能性を考慮して、最善でフェアな強化案を打ち出さなければならない。それも、五輪ポイントが絡む、2年後の世界選手権までに、だ。
北京五輪へのレースは、すでに始まっている。