女子国別対抗戦フェドカップ・ワールドグループ(以下WG)2部・プレーオフ「日本 vsイギリス」で、日本(ITF国別ランキング20位)は、ホームコートアドバンテージを活かして、イギリス(同16位)を3勝2敗で破り、2014年以来となるW…

 女子国別対抗戦フェドカップ・ワールドグループ(以下WG)2部・プレーオフ「日本 vsイギリス」で、日本(ITF国別ランキング20位)は、ホームコートアドバンテージを活かして、イギリス(同16位)を3勝2敗で破り、2014年以来となるWG2部への昇格を決めた。



フェドカップ日本代表。左から土橋監督、奈良、大坂、二宮、加藤

 2月に、奈良くるみ、日比野菜緒、加藤未唯、二宮真琴で構成された日本は、インドで行なわれたアジア・オセアニアゾーンIの戦いで優勝し、3年ぶりにWG2部のプレーオフに進出してきた。

 そしてプレーオフでは、奈良、加藤、二宮に加えて、20歳の大坂なおみが代表入り。大坂は、2017年に代表デビューを果たしているが、日本国内での代表としてのプレーは初披露だ。大坂の加入によって、土橋登志久監督が率いる日本代表は、上位国が集うWGに属してもおかしくない戦力に整いつつあった。

「日本はシングルスでエースが育ってきて、安定したシングルス2の候補が何名かいる。ダブルスでは、グランドスラムで優勝できるような選手が育ってきているので、日本はWGのレベルにあると思います。ただ勝ち上がらないといけないので、新しい扉を開くためには、プレーオフでの戦いが重要です」(土橋監督)

 フェドカップ開催前には、3月のWTAインディアンウェルズ大会で衝撃的なツアー初優勝を成し遂げた大坂に注目が集まった。だが、結果的には、エースとしてプレーした大坂がシングルスで1勝、シングルス2としてプレーした奈良くるみが1勝、ダブルスで加藤未唯/二宮真琴組が1勝を挙げ、まさに日本チーム全員で勝ち取ったWG2部昇格となった。

 大会初日のオープニングマッチでは、大坂がヘザー・ワトソンを6-2、6-3で破って、日本代表としての国内デビューを勝利で飾った。大坂はサービスエースを11本叩き込んで、ワトソンに1回もサービスブレークを許さない完勝だった。

「日本での初めてフェドカップですから、ナーバスになった部分はありました。日の丸を背負うというよりは、シャツの背中にある日本の文字に誇りを感じます」(大坂)

 土橋監督は、「大坂は、パワーだけでなく安定感のあるプレーと、大事なところで、サーブや長いラリーなど幅の広いテニスで勝ち切った」と評価したが、エース対決で、大坂はジョアンナ・コンタに3-6、3-6で敗れてしまう。

 一方、今回の日本代表では最年長となる26歳の奈良は初日、コンタに4-6、2-6で敗れたが、日本の1勝2敗で再び出番が来た。そして、もう負けられないという状況下で、意地を見せて7-6(7)、6-4でワトソンを破り、チーム内での存在感をあらためて見せつけた。

「なおみちゃんがフェドに出ると決まった時から、自分がとにかく1勝すれば、(日本が)勝利できるんじゃないかって結構前から思っていた。初日に負けた時も、落ち込むというよりは、次に向けてすぐ気持ちを切り替えることができた。今までフェドで経験してきたことが活きたと思います。大会2日目に、自分の仕事ができたことはよかったです」(奈良)

 2勝2敗となり、最終試合のダブルスで、イギリスは当初のメンバーから変更してコンタ/ワトソン組を投入して勝負に出たが、加藤/二宮組が、3-6、6-3、6-3の逆転勝ちを収めて、日本の勝利を決定づけた。

「アジア・オセアニアゾーンの時から、ワールドグループで戦ってみたいと思っていたので、自分達でつかみ取った結果を嬉しく思います。日本は団結力があるし、特にダブルスは強みでもあるので、もっともっと上に行けるんじゃないかなと思っています」(加藤)

「私はとにかく上に上がりたいと思っていたので、チームのみんなでつかみ取れたのはすごく嬉しいです。さらに上の舞台でも、どれだけ自分の力が出せるのか、もっと挑戦したいと思います」(二宮)
 
 今回の日本代表では、ふだんツアーに帯同している各選手のプライベートコーチも、日本チームに参加した。例えば、大坂につくアレクサンドラ・バインコーチは来日して、一緒に練習に参加し、土橋監督と情報を共有して、できるだけ大坂をいいコンディションへ導こうとした。奈良、加藤、二宮も同様にプライベートコーチがついた。この結果、各選手が最大限の力を発揮しながらそれぞれの役目と責任を果たすことができ、柔軟な土橋流の監督術が功を奏した。

「われわれが計画を立てて、WGへ行くために、どの選手を選ぶのか、どういう準備をするのか、どういうサポートをするのか、これらを考えてつかんだのが今回の昇格です」(土橋監督)

 男子国別対抗戦デビスカップでは、日本男子が、2014年以降WGをキープしており、エースの錦織圭だけでなく、杉田祐一や西岡良仁らが世界トップレベルの試合のなかで、競い合いながら経験値を上げ個々の実力を伸ばしてきた。WGに留(とど)まることで、日本男子チーム全体のレベルアップにつなげてきている。土橋監督は、次は日本女子の番だと期待を寄せる。

「デビスカップ(日本代表)というお手本があるので、チームジャパンとして男子女子関係なくコミュニケーションをとりながら、(日本女子が)WGに残り続け、そして勝ち上がる。できれば2024年までにはチャンピオンになりたいと個人的には思っています」

 ふだん土橋監督は、どちらかというと口数が多い方ではなく、決してビッグマウスのタイプではないが、監督として壮大な目標を初めて口にした。

 勝負への執念を見せ続ける奈良がいて、急成長中の大坂が新しい日本のエースになった。さらに”94年組”によって日本女子ダブルスはかつてないほどの逸材がそろい、層も厚くなっている。そして、何よりも彼女たちにはまだまだ伸びしろがある。だからこそ、土橋監督は壮大な目標を口にするのではないだろうか。

 来季、WG2部への昇格を果たす日本が、どれだけ強いチームへ進化して、これからさらに新しい扉を開いていくのか本当に楽しみだ。