北海道コンサドーレ札幌が強い。 3勝2敗2分けの勝ち星先行で迎えたJ1第8節、札幌は柏レイソルとのアウェーゲームに2-1で勝利。勝ち点を14に伸ばし、順位でも4位に浮上した。残留争いの末に11位で終えた昨季から一転、快調に勝ち点を積み…
北海道コンサドーレ札幌が強い。
3勝2敗2分けの勝ち星先行で迎えたJ1第8節、札幌は柏レイソルとのアウェーゲームに2-1で勝利。勝ち点を14に伸ばし、順位でも4位に浮上した。残留争いの末に11位で終えた昨季から一転、快調に勝ち点を積み重ねている。
柏戦の試合序盤は、かなりの劣勢だった。しかも、柏に押し込まれる展開のなかで、9分にあっさりと先制を許した。残留争いをしていた昨季なら、試合はこのままズルズルと敗戦に向かって進んでいったかもしれない。
ところが、札幌は失点から間もない13分に追いつくと、徐々に試合の流れを引き寄せ、後半は完全に試合のペースを握った。そして87分、FW都倉賢が決勝ゴールを頭で叩き込んで試合を決めた。劇的な勝利は、しかし、ただドラマティックなだけではない、非常に強い勝ち方だった。
アウェーの柏レイソル戦も劇的な逆転勝ちを決めたコンサドーレ札幌
札幌は、今季からミハイロ・ペトロヴィッチ監督が就任。まだ8試合を終えたばかりではあるが、キャプテンのMF兵藤慎剛は「3連勝できて成長したところを見せられた。ミシャ(ペトロヴィッチ監督)さんのサッカーが徐々にチームに浸透し、昨年とは違う札幌を見せられている」と自信を見せる。
これまでにサンフレッチェ広島と浦和レッズで独自の攻撃スタイルを確立してきた名将は、もちろん札幌でも、その手腕を発揮している。成果は数字にもはっきりと表れており、ここまでの8試合で総得点12は、セレッソ大阪など3チームと並び、J1最多タイである。
ペトロヴィッチ監督が率いる浦和でもプレーしていたMF駒井善成は、「レッズと比べたら、今はこのサッカーをやってまだ3カ月くらい。まだまだこれから」と言いつつも、「みんながやるべきこと、例えばこう動けば、ここが空くということが、だいぶ浸透してきたのは感じる」と手ごたえを口にする。
とはいえ、ペトロヴィッチ監督は必ずしも浦和時代とまったく同じようにチーム作りを進めているわけではない。それを示すように、饒舌な指揮官は柏戦後、こんな話をしている。
「今季の札幌の戦い方として、前からプレッシャーにいって、相手陣内で(プレスを)ハメ込むようにしたい。それができれば、相手はゴールから遠いところでボールを持つことになる」
ペトロヴィッチ監督が広島や浦和を率いた当時を振り返っても、守備のことだけに特化した話をするのは珍しい。攻撃は最大の防御と考えるペトロヴィッチ監督は、主体的にボールを保持し続けることを前提に戦術を組み立ててきたからだ。
チームが変われば、選手も変わる。当たり前のこととはいえ、かつて率いたチームとまったく同じことをやるのは、無理があるということなのだろう。よくも悪くもこだわりが強かったスタイルに固執するだけではない、柔軟な対応がうかがえる。
「ミシャはレッズのときも、守備のことを何も言っていないわけではなく、ほとんど毎日、ミニゲームをするときに『ここではこうスライドして、ここでハメていく』っていうことは全部言われていた。ミニゲームばかりで、守備の練習をしてないと思われるかもしれないが、そこは勘違いしないでほしい」
駒井はそう前置きしたうえで、続ける。
「代表選手がいっぱいいるビッグクラブでの指揮と、今から成長していくコンサドーレの指揮では全然違うと思う。レッズのクオリティーになかなか及ばないのは間違いないが、ミシャもミシャなりに改善してチームを押し上げようと思っている。僕らはそれについていくだけだと思う」
昨季途中、浦和でペトロヴィッチ監督が解任された際、いの一番に獲得のオファーを出したのが札幌だったと聞く。
当時の札幌は、四方田修平監督(よもだ・しゅうへい/現コーチ)が率い、J2優勝からJ1昇格、そしてJ1残留と着実にステップアップしていたが、それでも新たな変革を求め、ペトロヴィッチ監督を迎え入れた。
この監督人事は、札幌が目先の結果ばかりにこだわらず、チーム作りを長い目で見ている何よりの証拠ではあったが、短期的には少なからず痛みも伴うのではないかとも思われた。実際、ペトロヴィッチ監督は広島時代にはJ2降格も経験している。こと就任1年目の今季に限れば、新監督を迎えることの”副作用”が強く表れても不思議はなかった。
ところが、日本で3クラブ目となるペトロヴィッチ監督のチーム作りは、思いのほか順調に進んでいるように見える。3戦連続ゴールとなる決勝点を決めた都倉は、胸を張って語る。
「ミシャは、ACL(AFCチャンピオンズリーグの出場権獲得となる3位以内)が目標だと言っている。そこをしっかり目指してやっていく」
もはや、残留争いにおびえる選手の姿はない。札幌での”ミシャ改革”は結果ばかりでなく、内容のうえでも、その成果を確実に挙げている。