NBAプレーオフ2018・ファーストラウンド展望@イースタン編 4月14日(日本時間15日)、NBAプレーオフ2018がついに開幕する。予想外の出来事が多かったレギュラーシーズンと同様に、今年のプレーオフも波乱は必至だ。ファーストラウンドを…

NBAプレーオフ2018・ファーストラウンド展望@イースタン編

 4月14日(日本時間15日)、NBAプレーオフ2018がついに開幕する。予想外の出来事が多かったレギュラーシーズンと同様に、今年のプレーオフも波乱は必至だ。ファーストラウンドを勝ち抜き、カンファレンス・セミファイナルに駒を進めるのはどのチームか--。まずは4カードすべてで番狂わせの匂いのするイースタン・カンファレンスの見どころをチェックしよう。



今夏にもFAとなる可能性があるレブロン・ジェームズ

トロント・ラプターズ(1位/59勝23敗)
vs.
ワシントン・ウィザーズ(8位/43勝39敗)

 今季のラプターズは強い。誕生23年目にしてシーズン勝利数で球団最多記録を樹立し、チーム史上初となるカンファレンス第1シードを獲得。辛口コメンテーターで知られるチャールズ・バークレーも、「今季のラプターズは、これまでのラプターズではない。イースタンからNBAファイナルに進出するのはラプターズ」と太鼓判を押す。

 ラプターズ躍進の大きな要因のひとつが、エースのデマー・デローザン(SG)の進化だ。これまではドリブルからの1on1に固執する傾向があったが、過去8シーズンで平均2.8本だったアシストが今季は平均5.2本と急増し、チームのフロアバランスを重視するようになった。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 また、昨季は1試合平均1.7本で成功率26.6%だったスリーポイントシュートが、今季は平均3.6本・成功率31.0%に向上している。チームを勝たせるプレーヤーに変貌を遂げたと言っていいだろう。

 しかし、対戦するウィザーズとの相性はお世辞にもいいとは言えない。レギュラーシーズンの対戦成績はウィザーズのエース、ジョン・ウォール(PG)が全対戦で欠場していたにもかかわらず、2勝2敗の五分だ。

 ウォールは左ひざの内視鏡手術でレギュラーシーズンの多くを欠場し、3月末にようやく復帰。なんとかプレーオフに間に合った形だが、4月5日のクリーブランド・キャバリアーズ戦では28得点・14アシスト、4月10日のボストン・セルティックス戦では29得点・12アシストと、強豪相手に衰え知らずの爆発力を披露している。

 また、ラプターズの2枚看板がSGのデローザンとPGのカイル・ロウリーであるのと同様に、ウィザーズの2枚看板もウォールとブラッドリー・ビール(SG)のバックコートコンビ。レギュラーシーズンの成績を並べると、ほぼ互角だ。

PGロウリー(平均16.2得点・6.9アシスト)
SGデローザン(平均23.0得点・5.2アシスト)
PGウォール(平均19.4得点・9.6アシスト)
SGビール(平均22.6得点・4.5アシスト)

 ラプターズは第1シードではあるものの、楽観視できるほどウィザーズとのチーム力に差はない。リーグ屈指のバックコートコンビが激突するこの対決は、互いにマッチアップするであろうガード陣の出来が勝敗を大きく左右するだろう。

ボストン・セルティックス(2位/55勝27敗)
vs.
ミルウォーキー・バックス(7位/44勝38敗)

 第2シードのセルティックスがピンチだ。振り返れば、大きな期待を背負って加入したゴードン・ヘイワード(SF)が開幕戦の試合開始5分で左足首を骨折。それでも、ルーキーのジェイソン・テイタム(SF)、2年目のジェイレン・ブラウン(SG)といった若手の驚異的な活躍で、その穴を感じさせなかった。

 しかし、3月に入って平均24.4得点のエース、カイリー・アービング(PG)が古傷の左ひざの痛みを訴え、大事をとって欠場。休養をとって万全の態勢でプレーオフを迎える予定だったが、左ひざに埋め込まれたボルト周辺に細菌感染症が確認されて手術することになり、残りシーズンの全休が決定してしまった。

 今季のレギュラーシーズンにおいて、「ギリシャの怪物」ヤニス・アデトクンボ(SF)を擁するバックスとの対戦成績は2勝2敗。しかし、アービングが欠場した4月3日の対戦ではバックスが106-102で勝利している。

 セルティックスは第2シードの座こそ確保したが、現状は満身創痍である。アップセットが起こる可能性はかなり高い。

フィラデルフィア・76ers(3位/52勝30敗)
vs.
マイアミ・ヒート(6位/44勝38敗)

 現在、リーグでもっとも勢いがあるのは76ersだ。16連勝でレギュラーシーズンを終え、しかも後半の8連勝はエースのジョエル・エンビード(C)を欠いての成績である。

 2017年ドラフト全体1位のマーケル・フルツ(PG)は肩の故障などでレギュラーシーズン出場14試合にとどまったが、レギュラーシーズン最終戦となったバックス戦で25分の出場ながら13得点・10リバウンド・10アシストをマークし、リーグ史上最年少19歳11ヵ月でトリプルダブルを記録。待望されたフルツの復帰で76ersのチーム力はさらにアップした。

 しかし、圧倒的に76ersが有利なわけではない。現在、エンビードは眼窩底(がんかてい)骨折で欠場中で、ヒートとのファーストラウンドに出場できるか微妙な状況だからだ。

 さらにヒートには、「リーグ屈指のビッグマン」ハッサン・ホワイトサイド(C)がいる。ホワイトサイドはスモール・ラインナップを敷くチームの方針に不満をこぼしているものの、76ers戦でインサイドがストロングポイントになることは明白だ。日ごろのウップンを晴らす活躍が期待される。

 また今年2月、NBAチャンピオンに3度導いた英雄ドウェイン・ウェイド(SG)がキャブスから復帰している。76ersとのレギュラーシーズンの対戦成績は2勝2敗だが、ウェイド復帰後はヒートが2連勝中だ。2月27日の対戦でウェイドは残り時間5.9秒に逆転弾となるジャンパーを沈め、27得点をマークしている。

 シード的には76ersが上位でも、ウェイドが復帰したことによって精神的上位にいるのはヒートではないだろうか。

クリーブランド・キャバリアーズ(4位/50勝32敗)
vs.
インディアナ・ペイサーズ(7位/48勝34敗)

「昨季のイースタン覇者」=レブロン・ジェームズ(SF)率いるキャブスがレギュラーシーズンをカンファレンス4位で終えるなど、誰が予想できただろう? しかもキャブスは、開幕直後と現在でロスターを一変させている。今季開幕からなかなか波に乗れないでいると、アイザイア・トーマス(PG/ロサンゼルス・レイカーズ)、デリック・ローズ(PG/ミネソタ・ティンバーウルブズ)、ドウェイン・ウェイド(SG/マイアミ・ヒート)らスター選手をすべて放出。大胆にもシーズン中の再建に踏み切った。

 再建を急いだ理由は明確である。今夏、レブロンがオプションを破棄してFAになる可能性が高いからだ。来季の契約候補はキャブス以外に、76ers、レイカーズ、ヒューストン・ロケッツが噂されており、レブロンは契約するチームの条件として「優勝できる環境」を求めている。今季キャブスが優勝に絡めなければ、レブロンはあっさりとチームを離れる可能性も十分にあるため、再建を急がざるを得なかったのだ。

 しかし、対するペイサーズはクセ者だ。FAになって見返りなくポール・ジョージ(SF/オクラホマシティ・サンダー)を失うよりはマシと、ペイサーズは昨オフにビクター・オラディポ(SG)とドマンタス・サボニス(C)との引き換えにジョージを放出。その決断は功を奏し、オラディポは平均23.1得点の大活躍を見せ、サボニスも貴重なバックアップとして平均11.6得点・7.7リバウンドの好成績を残している。

 ペイサーズはオラディポ以外のスーパースターが不在のチームで、10人をローテーションさせて総合力で勝負するスタイルだ。派手さはなくとも機動力とシュート力を兼ね備えた選手が多く、対戦相手に合わせて選手を変え、その日好調な選手がプレータイムを長くする。

 レギュラーシーズンで対戦した4試合は、キャブスのロスターが一変するトレードデッドライン前の対戦とはいえ、3勝1敗でペイサーズが勝ち越している。レブロンがキャブスのユニフォームを脱ぐ日が想像以上に早く訪れても決しておかしくはない。

 イースタンのファーストラウンドは、どのカードで波乱が起きても不思議ではないだろう。出場8チームのシードこそ確定したが、イースタンの覇権の行方は今なお、ゆらゆらと揺れ動いている--。