第6節を終えて、2勝2敗2分けの勝ち点8で14位。それがジュビロ磐田の今季J1でのここまでの成績である。 今季開幕を前に、磐田の評価はそれなりに高かった。優勝候補の一角とまでは言えないまでも、それに次ぐ存在、いわば、ダークホースと目す…

 第6節を終えて、2勝2敗2分けの勝ち点8で14位。それがジュビロ磐田の今季J1でのここまでの成績である。

 今季開幕を前に、磐田の評価はそれなりに高かった。優勝候補の一角とまでは言えないまでも、それに次ぐ存在、いわば、ダークホースと目する向きは多かった。

 2015年シーズンにJ2で2位となってJ1復帰を果たして以降、一昨季は13位、昨季は6位と段階的に順位を上げてきたばかりでなく、内容的に見ても、名波浩監督が目指すサッカーが着実に浸透している様子がうかがえるからだ。

 ところが、今季が始まってみると、開幕からいきなり2連敗。第3節でようやく初勝利を収めたものの、その後も引き分けと勝ちの繰り返しで、スタートダッシュに成功したとは言い難い。

 清水エスパルスと0-0で引き分けた第6節の「静岡ダービー」を振り返ってみても、波に乗り切れない現状を象徴するような試合だった。

 前半こそ、清水にボールを支配される時間が長く続いたが、30分を過ぎたあたりから徐々に試合の流れを引き寄せ、名波監督は「後半は圧倒的に我々のゲーム」と高評価を口にしながら、最終的には「勝ち点2を失った」と嘆く結果に終わった。

 勝ち点が伸び悩んでいる理由は、はっきりしている。得点不足だ。

 ここまで6試合を戦い、失点は5。うち3点は開幕戦で川崎フロンターレに叩き込まれたものだから、以降の5試合ではわずかに2点しか失っていない。清水戦でも名波監督は、守備に関しては「決して後ろに(DFが)余ることなく、後ろ体重にならずにボールに寄せることができた。合格点を与えてもいい対応だった」と語っている。

 その一方で、得点は6試合でわずかに4。勝利した2試合で2点ずつ取っている以外は、4試合無得点という状態に陥っている。キャプテンのDF大井健太郎も「守備は悪くないので、あとはどう崩すか。去年はセットプレーから(得点を)取れたが、今年はそれもできていない」と語る。

 しかも、本来ならカウンターの先鋒役となるはずのMFアダイウトンが、右ヒザのケガで今季中の復帰が厳しい状況。高速ドリブルで左サイドを突破できる”槍”を失ったことは大きな痛手となっている。

 磐田がここから浮上していくためには、攻撃面での活性化が不可欠。大井は「僕らがゼロで抑えていれば、いつか取ってくれると思う。前線の選手があまり考えすぎないようにさせてあげたい」と気遣うが、そうそうのんびりとしてもいられまい。中村俊輔、山田大記、田口泰士など、中盤にはテクニックに優れた選手がいるだけに、それをどうにか得点アップにつなげたいところだ。

 だが、そんな悩める磐田にも好材料はある。FW小川航基の復帰である。



ケガから復帰した小川航基

 小川は昨年4月、ルヴァンカップのFC東京戦でプロ初ゴールを含むハットトリックを達成し、いよいよブレイクかと期待が高まった矢先、5月のU-20W杯で左ヒザに重傷(前十字靭帯と半月板の損傷)を負い、残りのシーズンを棒に振った。その期待のFWが、ようやく長期にわたる治療とリハビリを乗り越え、ピッチに戻ってきたのだ。

 今季J1第4節のサンフレッチェ広島戦にわずか1分間ながら途中出場し、リーグ戦復帰の第一歩を踏み出すと、清水戦では76分から交代出場。前線で積極的にボールを引き出すだけでなく、セカンドボールも果敢に競り合うなど、積極的なプレーが目についた。小川は「チームを勝たせられるようにという思いで臨んだので残念」と言いながらも、手ごたえを口にする。

「途中出場の選手には重要な役割がある。前線でしっかりボールをキープして、攻撃の流れを止めないことを意識してピッチに入ったので、そこに関しては悪くなかったかなと思う」

 現状では、磐田は最前線にFW川又堅碁を置く「1トップ+2シャドー」を基本布陣としているが、小川を川又と並べる「2トップ+トップ下」が可能になれば、攻撃にバリエーションが生まれ、前線の厚みも増すはず。小川は「堅碁くんが前を向いた瞬間に動き出すことを意識した。(2トップの)連係は悪くなかった」と言い、こう続ける。

「2トップでやらないと攻撃の厚みも出てこないと思うが、2トップでもやれるということを監督にもっともっとアピールしないと、なかなかシステム変更はされないと思う。自分が途中出場したときや練習からでも、2トップでアピールしたい」

 とはいえ、長期離脱明けの、しかもリーグ戦ではほとんど実績を残していない20歳に、性急な結果を求めることは酷でもある。本人も「ヒザのことを第一に考えて、まずは焦らないこと。ああいう大ケガからスッと戻れるとは思っていない。これからのサッカー人生に関わってくると思うので、セーブする勇気も持たないといけない」と、冷静に足もとを見つめる。

 焦らず、徐々に徐々に――。小川は自らにそう言い聞かせながら、しかし、「自分が入ったら、もっとチームはよくなるというイメージはずっと持っている」とも言う。

「試合に出られない間は悔しかった。ケガは自分にとってすごく大きなものだったし、そこから力強くなって帰ってきたというところをサポーターに見せなきゃいけない。徐々に(コンディションは)上がってきているが、まだまだ全然自分(の力)だとは思っていない。これからもっともっと取り戻していけると思う」

 東京五輪世代のエースストライカーとしても期待がかかる20歳のFWは、磐田の救世主となれるだろうか。あまり重荷を背負わせてはいけないと知りつつも、小川の”超回復”が待ち遠しい。