岡崎慎司のアシスト場面は、ニューカッスル・ユナイテッドに0-2とリードされていた83分に訪れた。 MFデマライ・グレイからクロスボールが上がると、岡崎はマーカーとの空中戦に競り勝ち、ボールをゴール前に落とす。最後はFWジェイミー・バー…

 岡崎慎司のアシスト場面は、ニューカッスル・ユナイテッドに0-2とリードされていた83分に訪れた。

 MFデマライ・グレイからクロスボールが上がると、岡崎はマーカーとの空中戦に競り勝ち、ボールをゴール前に落とす。最後はFWジェイミー・バーディーが押し込み、スコアを1点差とした。しかし、反撃はここまで。レスター・シティはニューカッスルとの一戦を1-2で落とした。



ハリルJのコーチが視察する試合で岡崎慎司はアシストを決めたのだが...

 この日、前節まで2試合連続で先発していた岡崎は、ベンチスタートを命じられた。代わりに4-4-1-1のセカンドストライカーに入ったのは、普段はウィンガーの位置で起用されるFWフセニ・ディアバテ。クロード・ピュエル監督は22歳の若いディアバテに岡崎と同じ役割を与えた。

 しかし、この策が機能しない。ディアバテは足を止めずに走り回るが、パスコースの切り方やボールの追い方が効果的でなく、守備面でインテンシティを著しく欠いた。高い位置でのボール奪取からショートカウンターにつなげる場面もほぼなく、反対にマークのズレからニューカッスルに先制点を与えてしまった。

 一方、岡崎のボールの追い方は極めて論理的である。相手ボランチの動きを注視し、そこにボールが入れば素早く寄せる。そして、ボランチからCBまでボールが下がると、さらにCBにも寄せていく。その際、ボランチへのパスコースを消しながらCBにプレスをかけることも忘れない。当然、パスコースが限定されるため、岡崎の後方に控える味方たちは前に飛び出してインターセプトしやすくなるのだ。

 現代サッカーは攻撃と守備が一体化し、守備でボールを奪い返した瞬間に攻撃へと移る。特に、最前線にバーディーというスピードスターが陣取るレスターでは、この「守→攻」のポジティブ・トランジションが生命線を握っており、前線からクレバーなチェイスを仕掛ける岡崎は戦術上のキーマンである。

 その岡崎を先発から外し、ウィンガーを本職とするディアバテを起用していては、苦戦は目に見えている。チームが機能しないことから、ピュエル監督は57分という早い時間帯に岡崎を投入したが、反撃態勢に入ったレスターは前傾姿勢が強すぎるあまり、最後まで陣形のバランスが悪かった。

 実際、岡崎は次のように試合を振り返った。

「(ベンチから)見ていて自分のやっているポジションは難しいなと。特殊な動きを続けながらプレーしなきゃいけない位置なので。直近2試合は、自分のプレーがあまりよくなかったのは間違いないですけど、自分としては『やらなきゃいけない最低限のプレー』がわかっているので。

 それがないと、この試合でも相手のボランチに使われて、サイドチェンジされて……というシーンが多かったじゃないですか。ああいうプレーも、自分がいればどうにかできたと思う。そういう意味で、自分がやってるプレーはレスターにとって大事だと感じました」

 さて、この試合には、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の腹心であるコーチのジャッキー・ボヌベー氏が岡崎の視察に訪れていた。試合日は4月7日。つまり、日本サッカー協会の田嶋幸三会長がパリ市内のホテルでハリルホジッチ監督に解任を直接伝えた日である。同日、ボヌベー氏との契約も解除されたが、その日に同コーチが視察していた事実は今回の解任劇が急展開、かつ秘密裏に進んでいたことを物語っていると言えよう。

 レスター対ニューカッスルの試合後、つまり、ハリルホジッチ監督の解任前の時点で、岡崎は次のように話していた。

「(ボヌベーコーチとは)そんなに話はしてないですけど、見に来てくれるのは自分のモチベーションにつながる。今、自分は『元日本代表』なんで(笑)。(実質的な)最後のワールドカップまで(レスターの公式戦が)あと6試合あるんで、自分としては同じスタンスでやっていくつもりです。

 コーチが来ていようが、(ハリルホジッチ)監督はやっぱり自分の考えを持っている人なので。見に来て『コンディションがどうだった』ということぐらいしか、たぶん(監督には)伝わらないと思う。ただ、自分が結果を残せれば、それが自動的に報告されると思う。

 決定的な仕事ができるのか、チームを勝利に導けるのか。このふたつが今の日本代表にとって大事なこと。僕はどっちも出せる選手だと思っている。チームを助けて、なおかつ自分が決定的な場面で仕事できるようなプレーを、残りの6試合でやっていきたい」

 ハリルホジッチ監督の電撃解任は、W杯の最終メンバーで当落線上に置かれている選手たちにも大きな影響を与える。もちろん、半年間にわたって日本代表から遠ざかっている岡崎も、この中に含まれる。

 後任として日本代表の指揮を執る西野朗技術委員長は、果たしてどんな戦術、いかなる人選で、W杯に向かうのか。西野新監督の判断で、岡崎の運命も変わってくる。