松山英樹は、2018年のメジャー第1戦、マスターズを19位で終えた。初日から、「73」「71」「72」「69」のトータル「285」、通算3アンダーという結果だった。最終日にはスコアを伸ばした松山英樹だったが...「すべてに課題が残った…

 松山英樹は、2018年のメジャー第1戦、マスターズを19位で終えた。初日から、「73」「71」「72」「69」のトータル「285」、通算3アンダーという結果だった。



最終日にはスコアを伸ばした松山英樹だったが...

「すべてに課題が残った」と松山は唇をかみ締めた。そして、「(マスターズの最終日に)最終組がまだ9番を回っている時点で、こういうインタビューを受けているようじゃあ、到底納得はできないです」と、悔しさを露(あら)わにした。

 どこかで聞いたようなコメントだった。それはかつて、帝王ジャック・ニクラウスが漏らした言葉と同じ意味合いだった。

「マスターズに参加するということは、最終日の遅い午後にスタートして優勝争いをすることなんだ。私がホールアウトするときに、最終組がまだ9番ホールをプレーしている状態では、意味がない」

 マスターズの最終日最終組のスタート時間は、午後3時前後と決まっている。それは、太陽が西に傾き、オーガスタの森の木々が生み出す美しい影がフェアウェーに長く映し出される瞬間が、ちょうど最終組がゲームの佳境となる”アーメンコーナー”を迎えた頃に訪れるからだ。そして、以降、その光と影の中を、優勝争いをする選手たちが通り過ぎていく、という時間を演出するためである。

 松山も、そのことはよく知っている。つまり、冒頭の言葉は「自分は勝つために、優勝争いの渦の中で戦うためにここにやってくるのだ」という意思表示に他ならない。

 けれども、今年のマスターズでは”松山らしさ”が影を潜めていた。

 初日のインタビューのときだった。今の状態を聞いた記者に対して、松山は「いつもの半分以下です」と答えた。

 いわば、本来の松山が、3000ccの排気量と、それに伴う性能を備えたレーシングカーだとすれば、今回は排気量が1500cc以下のマシン状態にありながら、それでレースを走り切らなければいけないのと同じことだ。

 マシンが突然3000ccに回復することはない。とにかく松山は、現時点で備わっている能力を発揮するしかなかった。そうして、松山のゴルフを見ていると、1500ccという状態の中でも持ちうる技量を出し切って、よく走った(ゲームを作った)ようだった。

「練習日の時点では、(予選落ちするのではないかと思って)4日間できるとは想像していなかったですね。でも片や、『できるんじゃないか』という自分もいましたけど。結局、その中間くらいで終わりました。

 ショットも(多くのホールで)フェアウェーをキープしているけど、悪いショットがたまたまフェアウェーにいったりしていた。”小手先のゴルフ”で、よくここまでやってこられたと思う。

 でも、そういうのではなく、しっかりしたものを出さないと、ここでは勝てないし、上位に行けないと思う。改めて、それがわかったという感じです」

 優勝したのは、パトリック・リード(アメリカ)。4日間、パー5のホールだけで13アンダーをマークした。

 対して松山は、同条件で6アンダー。得意のパー5でバーディーやイーグルがとれないもどかしさと、今の状態によって、19位という結果になったのだと思う。

 逆に言えば、半分以下の状態で、ここまでのスコアを作ってこられるだけの実力が今、松山にはあるわけだ。

 心配されるのは、左手のケガの状態だが、松山はこう語った。

「(ケガの影響は結果には)関係ないと思います。ケガをした時点で、ここまでのスケジュールも考えてやっていたので。(今回の結果は)ケガをした中でもできることをやった成果じゃないですかね。

 でも、もう大丈夫だろうと思ってやっていたのが、ちょっと痛くなっている。たぶん、2、3週間休めば大丈夫だと思うけど……。少し考えて、トレーニングとかもやらないといけない。痛みが出ないようにどうやればいいか、わからないので。

 それが、少しずつできていけば、また練習もしっかりできるようになれば、調子も上向いてくるのかなという感じですね」

 まずはケガの完治を優先して、松山には完全復帰を目指してほしい。そして、今季残り3つのメジャー大会で、万全な状態で戦う姿が見られることを期待したい。