張本智和 写真:アフロスポーツ 14歳の怪童こと張本智和(JOCエリートアカデミー)が覚醒した。6日に開幕した「LION ITTF-ATTU アジアカップ横浜2018」<4月6~8日/横浜文化体育館>の第1ステージ(予選リーグ)、男子グルー…

張本智和 写真:アフロスポーツ

 14歳の怪童こと張本智和(JOCエリートアカデミー)が覚醒した。6日に開幕した「LION ITTF-ATTU アジアカップ横浜2018」<4月6~8日/横浜文化体育館>の第1ステージ(予選リーグ)、男子グループAに入った張本は世界ランク1位の樊振東(中国)と対戦し撃破。卓球帝国・中国の次代を担う20歳の昇り龍にわずか1ゲームしか与えず、ゲームカウント3-1で勝利した。



 張本にとって樊振東は水谷隼(木下グループ)と並ぶ憧れの選手。2月のチームワールドカップ(団体)では初対戦でストレート負けと実力の差を見せつけられたが、今回は母国のファンの前でとてつもなく大きな金星を手にした。

 今年1月の全日本選手権で史上最年少王者に輝いて以降、「(この3カ月間は)いい成績が出せなかった」と言う張本が、4月の最新世界ランクで自身初の男子ナンバーワンに君臨した上り調子の樊振東に勝てたのはなぜなのか? 樊振東の前のゲラシメンコ(カザフスタン)戦を見る限り張本の調子は決していいようには見えなかった。ゲームカウント3-1で勝ったもののミスが多く、ここ最近の試合にも見られた迷いが感じられた。

 ところが樊振東との試合では一変する。得意のバックハンドを軸にゲームを組み立て第1ゲームを11-8で奪うと、第2ゲームは逆に8-11で奪われたが、続く第3ゲームはバックハンドのストレートが次々と決まり9-9からこのゲームを奪った。バックストレートはややもすると樊振東の強烈なフォアカウンターを浴びる可能性があるのと、より厳しいコースを狙っていくことになるため張本は「リスクのあるプレー」と言う。しかし、ベンチコーチに入った男子日本代表の倉嶋洋介監督がことあるごとに「天才的」と称賛するバックハンドが決まり出すと張本は勢いづく。特に「樊振東のボールは(球筋が)きれいなのでタイミングが合いやすい」(倉嶋監督)ということで、張本も自信を持ってバックハンドを打っていけたようだ。

張本智和 写真:アフロスポーツ

 もう一つ、バックハンドでポイントする布石として、相手を巧みに動かす台上プレーも光っていた。わずか1カ月半前のチームワールドカップで樊振東と対戦した時には、相手から早くポイントを奪おうと焦る気持ちが打ち急ぎにつながり攻撃が単調になりがちだった。

 しかし、今回はストップやツッツキなどを入れ、相手のタイミングを外したり相手を動かしたりして、それから得意のバックハンドで攻撃する場面が多く見られた。その際、「バックよりも隙があるフォアを狙っていった」と張本。実際、樊振東のフォア側を鮮やかに抜いていくボールは印象的で、勝負を決めた第4ゲームの最後の1本もやはりバックストレートへのブロックだった。張本いわく「今日の試合を物語っていた1球」だそう。

 さらに「(中国人選手は)2020年東京五輪までに1回は越えたい壁だった。東京五輪で金メダルが取れるという自信が少しついた」と満足そうな表情で今大会でのさらなる活躍を誓った。

(文=高樹ミナ)