日本ラグビーフットボール協会は3月31日、指導者の資質向上の啓発と学習意欲の高い指導者コミュニティーの創出を目的に、日本ラグビー界の発展に貢献したコーチおよびスタッフを表彰する「ジャパンラグビーコーチングアワード」を制定したと発表した。
 選考プロセスは、技術委員会の中にコーチングアワード選考委員会を設置し、選考基準をもとに候補者の選出をおこない、最終的には理事会にて承認される。

 第1回となる2017年度の最優秀賞(コーチ・オブ・ザ・イヤー)は、連覇が難しいと言われている大学ラグビーにおいて、前人未到の全国大学選手権9連覇を達成した帝京大学の岩出雅之監督が選ばれた。帝京大は、卒業後も多くの選手がトップリーグや日本代表、サンウルブズなどでリーダーとして活躍しており、優れたラグビーマンを育成、輩出している。
 岩出監督は「この受賞は、選手たちの努力と結果、そしてそれを支えてくれましたスタッフのサポートや多くの方々のお力添えのおかげと心から感謝しつつ、とても責任のあるものを賜ったと感じております。日々の指導にあたり、勝利への挑戦と学生たちが将来社会で活躍する人材になってほしいという2つの目標を掲げてきました。学生の主体性を高め、考えさせ、ワクワクさせることをどう作り、本気にさせるか。そして、いかに活動に“楽しさ”を作りだしていけるか、いつもそこに考えを巡らせながら指導してきました。今後もラグビー界の発展とその魅力が社会に伝わるよう、また受賞者の一人として、このコーチングアワードの価値がより高まっていくように、これからも多くの指導者の皆様と共に頑張っていきたいと思います」と受賞の喜びを語った。

 優秀賞には、トップリーグ連覇を達成したサントリーサンゴリアスの沢木敬介監督と、花園(全国高校大会)で2季ぶりに東海大学付属仰星高校を日本一に導いた湯浅大智監督が選ばれた。
 沢木体制2年目のサントリーは、強みのアタックだけでなく、統制のあるディフェンスと個々のタックラーの意識の高さは他のラグビー選手の見本となった。沢木監督は「サンゴリアスは選手もコーチも“インターナショナル・スタンダード”(国際標準)でラグビーに取り組んでいます。ラグビーは選手が主役ですが、その能力を引き出し日本ラグビーのレベルアップに貢献できるよう、これからもラグビーの変化にアンテナを張り、日々学んでいきたいと思っています」とコメントした。
 湯浅監督は、全国高校選抜大会で優勝を逃してからチームを根本的に立て直し、そこからの復活劇は圧巻だった。特に花園大会に入ってからのチーム伸び率は大会随一と評価され、「何よりも、ひたむきに取り組み続けた生徒たちを誇りに思います。これからも目配り、気配り、心配り、思いやりを育み、世界の平和や社会に貢献する人財を輩出することができるように日々情熱を持ってひたむきに取り組んでいきます」とコメントした。

 そして、チームに変革を起こし、昨シーズンまでのチーム力を明らかに飛躍させた指導者に贈られる『変革賞』は、伝統の重み、世代交代もありながらトヨタ自動車ヴェルブリッツを7季ぶりにベスト4に導いたジェイク・ホワイト監督と、これまで自他共に認める実力は有しながらも勝負どころで勝ちきれなかったリコーブラックラムズを上位チームに昇格させた神鳥裕之監督、そして、19季ぶりに大学選手権の決勝に進み帝京大学と激闘を繰り広げ、明治大学復活の兆しを証明した丹羽政彦監督(2017年度で退任)が受賞した。

 また、強豪チームに対する果敢なチャレンジやラグビーの中央勢(関東、関西の優勢)に対する地方からの挑戦と開拓の精神で、新しいラグビー文化を全国にアピールした指導者に贈られる『フロンティア賞』は、朝日大学の吉川充監督と、日本航空石川高校の小林学監督、大阪産業大学附属高校の鳥山修司監督が受賞した。
 朝日大の吉川監督は、大学の地域代表が関東・関西のトップチームと互角に戦えることを証明し、同時に、イングランドの名門サラセンズに入団したシオネ・ヴァイラヌなど、留学生を世界で戦えるよう人格形成まで含めたアスリート指導をおこなったことが評価された。
 日本航空石川の小林監督は、外国人留学生に頼らないチーム作り、規律有るパフォーマンスを全国大会で披露。特に留学生は人格形成を含め3年間かけてきっちり育て、大学に送り出していることが受賞理由となった。
 大阪産業大学附属高の鳥山監督について選考委員会は、「大阪府予選における決勝戦のチームの躍動感は多くの観客を魅了した。全国大会に出ていない今シーズンのベストチームの一つ。特にバックスのアタックは日本のラグビーの夢を想像させるレベルだった」と評した。

 チーム全員のスキルレベルを著しく伸ばした指導者に贈られる『スキルコーチング賞』も設けられ、全国ジュニア岩手県スクール代表の青沼澄人氏と、全国ジュニア長崎県代表の藤岡康紀氏が受賞している。
 青沼氏は、ハンドリングスキル(特にアーリーキャッチとフォロースルー)およびコミュニケーションスキルにおける高いレベルの指導により、規律高く、精度の高い、一体感のあるチーム力を披露した。
 藤岡氏は、ハンドリングスキルおよびランニングスキルの徹底した指導によるミスの少なさと個人技に頼らない組織力を感じさせるパフォーマンスを披露した。

 特別賞は、女子15人制の全国女子選手権大会で、安定感に加え、圧倒的な強さを見せつけ2年ぶり3回目の優勝を遂げた日本体育大学ラグビー部女子の古賀千尋監督に贈られた。

 日本代表カテゴリーコーチ賞は、ワールドラグビーU20トロフィーで優勝し最上位大会のU20チャンピオンシップへ昇格したU20日本代表の遠藤哲ヘッドコーチと、高校日本代表を率いてアイルランド遠征の最後にU19アイルランド代表戦勝利に導いた薬師寺利弥監督が受賞。
 さらに、4大会ぶりに女子ラグビーワールドカップ出場を果たした女子15人制日本代表の有水剛志ヘッドコーチ、ワールドカップ・セブンズ2018の出場権を獲得した男子セブンズ日本代表のダミアン・カラウナ ヘッドコーチと女子セブンズ日本代表の稲田仁ヘッドコーチ(女子はワールドラグビーセブンズシリーズのコアチーム昇格も達成)、ユースオリンピック出場権を獲得した男子セブンズユース日本代表の梅田紘一ヘッドコーチと女子セブンズユース日本代表の浅見敬子ヘッドコーチも受賞した。