石川佳純 Photo:Itaru Chiba

 2018シーズンITTFワールドツアー最高格付けのプラチナにあたる「ドイツオープン」<3月20~25日/ブレーメン>で日本の女子選手たちが躍動した。21歳以下が対象のU21では芝田沙季(ミキハウス)が優勝。シニアでは「みまひな」こと伊藤美誠(スターツSC)/早田ひな(日本生命/希望が丘高校)ペアが女子ダブルスを制し、石川佳純(全農)が女子シングルスで優勝を果たした。中でもシングルスを制した世界ランク3位の石川は陳幸同、武楊ら中国人選手を倒したとあって、その価値はひときわ大きいと言える。本人も決勝後、「(中国人選手に勝つことは)やはり大きな目標。勝ててすごく自信になる」と話していた。



今大会で特徴的だったのは石川が対戦した5人のうち3人がカットマンだったことだろう。数ある国際試合でこれだけカットマンが続くことも珍しい。石川が破ったのは初戦の佐藤瞳(ミキハウス)、3回戦の武楊、そして決勝のソ ヒョンウォン(韓国)。以前の石川であればカットマンに連戦連勝というのは考えにくかった。彼女はカット打ちが上手いタイプではなかったからだ。本人にも苦手意識はあり、それが顕著だったのが2016年リオ五輪女子個人戦のキム・ソンイ(北朝鮮)に初戦敗退を喫した試合だった。

 あの悔しい敗戦以降、石川はカット打ちを猛練習し、それから約1年半後のチームワールドカップ2018(団体戦/2月22~25日/ロンドン)準決勝で、因縁のキム・ソンイに雪辱。それまでもカットマンに負け知らずで来ていたこともあり、この時、石川のカット打ちに対する苦手意識は払拭された。

ソヒョウォン(韓国) Photo:Itaru Chiba


 その自信はドイツオープンにも表れていた。3回戦の武楊には決して攻め急がず、落ち着いて攻めるボールを見極めた。ロングサーブからの展開も効果的で、チャンスボールは得意のフォアドライブをコーナーやサイドを切る厳しいコースへと決めていく。この角度のついたボールはソヒョウォンとの決勝でも得点源となった。体をオープンにして相手コートの右サイドを切る強烈なフォアドライブはソヒョウォンから何本もノータッチエースを奪った。



また、強化を続けているバックハンドの攻めも良く、「(全戦の)カタールオープンが終わってからの短い時間でもバックハンドを強化していた。その成果が出てすごく嬉しい」と石川。加えて今大会では2回戦の陳幸同(世界ランク9位)、準決勝の鄭怡静(台湾/同8位)といった攻撃型の上位選手にもしっかりと勝てたことは収穫だった。ちなみに陳幸同にはストレート勝ち、鄭怡静にはフルゲームの激戦を制す見事な戦いぶりで決勝へ駒を進めた。

 カットマンを苦手としていたかつての石川はもういない。今はどんな選手にも向かっていける高い技術と強いメンタリティーを手に入れた頼もしいエースの姿がそこにある。

(文=高樹ミナ)