運動通信をご覧の皆さま、WOWOW NBAキャスターの長澤壮太郎です。いよいよNBAファイナルのチームが決まりました。でもその前に、西地区のカンファレンスファイナルの戦いが激熱すぎて、そこを語らずしてNBAファイナルを語ることはできません。…

運動通信をご覧の皆さま、WOWOW NBAキャスターの長澤壮太郎です。

いよいよNBAファイナルのチームが決まりました。

でもその前に、西地区のカンファレンスファイナルの戦いが激熱すぎて、そこを語らずしてNBAファイナルを語ることはできません。

勝利したウォリアーズはもちろん素晴らしかったのですが、なんといってもサンダーの覚醒っぷりがハンパじゃなかったですね。

 

ここで大きな声で言いたいのですが、WOWOWの放送でもNBA井戸端会議(WOWOWぷらすと@ニコニコ動画)でも、シーズン開幕から私とNBAアナリストの佐々木クリスさんは、オクラホマシティ・サンダーが来る!と予想していました。

実際負けてしまったので、細かく言うと来て!はいませんが(笑)

クリスさんは真面目で謙虚なので遠慮して言いませんが、僕は独断と偏見で大きな声で言いたい!このサンダーこそ、まさしく僕が予想していたサンダーなのです! KD (ケビン・デュラント)、ラッセル・ウェストブルック二大スターの共存、二人を固めるサポートメンバー、全てが噛み合うと彼らはこんなにも脅威なのです。

ただ開幕こそ優勝候補に上がってはいたものの、シーズンが進むにつれ彼らを優勝候補にあげる専門家はいなくなりました。不幸な状況の重なりがそうさせたのですが、理由は大きく三つありました。

 

最初の理由は、王者ウォリアーズのシーズン記録(※73勝9敗はNBAレコード)が圧倒的過ぎたため。

二つ目の理由は、常勝軍団スパーズがウォリアーズに負けず劣らずの素晴らしいシーズンを過ごしたため。

三つ目の理由は、サンダーのチーム内の状況があまりにも急激に崩れたためです。

あまり報道されませんが、今年のサンダーは予期せぬ悲しいニュースに見舞われていました。アシスタントコーチのモンティ・ウィリアムズが奥様を事故で亡くされてチームを離脱。同時期にもう一人のアシスタントコーチのモー・チークスが腰のオペのため6週間離脱。NBA新人監督をサポートするはずだったベテランコーチ二人の離脱は大きかった。それに加え、共同オーナーの一人がシーズン中に自殺してしまうという異例の事態にも見舞われてしまいました。このチーム状態を知っていた専門家やメディアは、今年のサンダーにはツキがないと誰もが判断していたのです。

 

しかしそんな状況の中、主軸のKDとラッセルの精神的な成長が大きくチームを変え、予想を超えるプレーオフの活躍を生み出したと言えるでしょう。

KDは今年FAになるため、開幕からずーっと移籍についての話題が絶えませんでした。しかしその中で彼はリーダーとして行動し、試合後の会見も全てラッセルと一緒に受け答えをすると表明。率先してラッセルとの一体感をチームにもたらし、試合後の会見ではラッセルに向けられた批判的な質問を代わりに答える場面も多々見られました。可愛い弟分をしっかりサポートすることによって、明確にお兄さんリーダーとしての役割が浸透しました。一方のラッセルは、いつも通りコート上で120%のプレーをしながらも仲間をお膳立てするパスを量産するプレーメイクを覚え、PGとして急成長を遂げました。この二人の一体感はチームに浸透し、サブの役割を皆がすんなりと受け入れる行動へと繋がったのです。これまでのサンダーの弱点とされていたバラバラ感。KDが活躍すればラッセルが譲る、逆もしかりで、結局スーパースターの二人は共存できない。また二人が交代で攻めてくるパターンの繰り返しで、相手チームとしては予想しやすいとも指摘されていました。そんなチームが主軸二人の変化に伴って、いつの間にか噛み合う組織に仕上がっていったのです。

 

惜しくも今回の西プレーオフ決勝でウォリアーズ相手に3勝1敗で王手をかけておきながら、まさかの3連敗で負けてしまいましたが、試合内容で圧倒していたのはサンダー。勝負に勝ったが、試合に負けた。そんな状況だったと言えるでしょう。

 

また、今回のプレーオフにセオリーは全く存在しなかったと、地元のメディアも定説や数字の確率が日々試合ごとにひっくり返される状況に悩まされていました。その意味で言うと、ウォリアーズが1勝3敗で王手をかけられた時点でこのシナリオは決まっていたのかもしれません。プレーオフ1勝3敗からシリーズに勝利したチームは233チーム中たったの9チームです。その確率はたったの3.86%。サンダーは96.14%の勝率を逃したことになります。

 

ただ、今回のシリーズを終えサンダーが勝ちを譲ったと思う人は誰もいないでしょう。どちらかというと最後の最後に勝ちをもぎ取られた印象の方が強いです。この負けをもって、今後の強いサンダーが誕生する条件が揃ったようにさえ思えます。そしてKDのFA問題もメディアは騒ぎたてると思いますが、直接対決して勝ったスパーズへ行く可能性はゼロに近い、そして直接対決で負けたウォリアーズ入りもゼロに近いと感じています。今シーズンの手応えで、優勝に一番近いチームがサンダーであると感じている気がします。そこでサンダーと2年契約(最終年はオプション)を結び、ラッセルと同時に完全FAを表明するのが、一番納得するパターンではないかと思うのです。

 

一方、2年連続でNBAファイナルへ進出したウォリアーズは、いよいよキャバリアーズとの頂上対決に挑みます。終わってみれば東地区1位対西地区1位の組み合わせ。

結果、振り返ると当然にも思えますが、両チーム色々なドラマを抱えてのシリーズに期待度はマックスに登り詰めています。

昨季も同じ対決でしたが、ウォリアーズが終始圧倒し40年ぶりに優勝しました。キャバリアーズはレブロン・ジェームズがNBAファイナルの歴史の中で物凄い活躍をしましたが、相棒の二人、アービング、ラブが怪我で離脱していませんでした。今回は両チームとも万全です。

レブロンにはキャバリアーズを牽引して悲願の優勝を故郷のクリーブランドに捧げてほしいですし、ステフィン・カリーを擁するウォリアーズには73勝したシーズンをしっかり優勝で締めてほしい。どっちのチームにも勝ってほしいのですが、ここまで来て同時優勝ってパターンもありえないと思うので、とにかく第7戦まで行く競り合いに期待したいですね。

6月3日金曜から始まるNBAファイナル、クリーブランド・キャバリアーズvsゴールデンステイト・ウォリアーズ。是非、WOWOWでお楽しみください!午前9時40分〜WOWOWプライムで現地会場より生中継です。

 

長澤 壮太郎(ながさわ そうたろう)

生年月日: 1973年5月3日
出身地:東京都
大学在学中にモデルとしての活動を開始。日本国内のみならず、パリ、ミラノなど海外においても日本を代表する男性ファッションモデルとして活躍中。 

●担当番組
NBAバスケットボールほか
NBAのオフコート情報をお届けする長澤壮太郎presents「So!スポ」を担当。 
■好きなNBAチーム
ニューヨーク・ニックス
理由:ホームタウンチームなので
■NBAで注目している選手
ステフィン・カリー(ウォリアーズ)
ケビン・デュラント(サンダー