専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第147回 日本人選手の活躍もあり、大いに盛り上がった平昌五輪ですが、スキージャンプ競技では、気まぐれな風のコンディションによる影響もあってか、実力がありながら不本意な結果に終…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第147回

 日本人選手の活躍もあり、大いに盛り上がった平昌五輪ですが、スキージャンプ競技では、気まぐれな風のコンディションによる影響もあってか、実力がありながら不本意な結果に終わった方が結構おられたようです。

 前後の風であれば、スタート位置をずらすなどの処置によって差がつかないように調整できますが、選手が横からの風で煽(あお)られる場面もあって、見ているほうがヒヤッとしました。

 このイマイチの条件に対して、どうのこうの言う気はありません。勝負は「時の運」とも言われているので、ある程度、与えられたコンディションを受け入れるしかないと思います。

 それよりも、この悪条件をゴルフに当てはめてみると、どうなんだろう……。そんなことを思って、いろいろと書いていきたいと思います。

 ゴルフの試合における、厳しいコンディションを考えてみましょう。やはり、多いのは雨や風になりますが、これらについてクレームが起きた話はほとんど聞きません。

 例えば、200ヤードくらいのショートホール。強風の中でプレーした場合、初日は強いフォローの風で、7、8番のアイアンで打ってもグリーンに乗った。けど翌日は、逆に強いアゲンストの風で、ドライバーで打っても届かなかった。こんなエピソードはよく聞きます。

 昨年、沖縄で行なわれた日本男子ツアー『HEIWA×PGM CHAMPIONSHIP』でも、会場となるPGMゴルフリゾート沖縄のショートホールで、似たようなことが起こっていました。

 でも、プレーヤーにとって条件は一緒ですから。風に対して、クレームを出すことはありません。これぞ、自然との戦い、なわけです。

 もちろん、風に滅法強い選手もいます。

 現在はシニアツアーで奮闘する沖縄出身の友利勝良選手は、かつて低い弾道のボールを打ち、風の影響をさほど受けない打法で脚光を浴びました。我々も、アゲンストの強風のとき、たまたま低い弾道のボールが打てたりすると、「友利~、友利~」と叫んでいますから。



強風や雨など、悪天候の中でのプレーって本当に大変ですよね...

“アゲンストの友利”がいるなら、雨にやたら強い人がいてもいいですよね。これは、ゴルフではなく、F1でのお話です。

 みなさんご存知、すでに伝説になっている”雨のナカジマ”です。

 圧巻だったのは、1989年のオーストラリアグランプリ。中嶋悟選手は予選23位スタートでしたが、本戦のレースは雨の影響を受けて、クラッシュが続出しました。そんな中、中嶋選手はじりじりと順位を上げて、最後は4位フィニッシュ。もう少しで表彰台、という走りを見せました。

 F1に行く前から雨のレースで速いことは知られていましたが、このときに「雨のナカジマ」という呼び名があらためて広まりました。セナ&プロスト&マンセル時代を知るオヤジたちは、みんな知っているエピソードですね。

 さて、ゴルフの話に戻ります。コースセッティングが厳しかった、という話も聞いたことがあります。

 以前、山梨の某有名コースで行なわれたトーナメントでは、グリーンにボールが乗っても、コロコロと転がって、オーバーが多発して話題となりました。これは、グリーンを短く刈り、さらにローラーをかけて硬くしたので、ボールが止まりづらくなったのです。

 そこで予選落ちした選手が「くそコース」と暴言を吐いていましたが、それはどうかと思いますよね。

 だって、条件はみんな一緒でしょ。誰もがグリーンに乗っても止まらないことを知っていて試合をしているのですから。じゃあ、ボールが止まれば、あなたは優勝したのですか?って話になりますもんね。

 とはいえ、普段とは違う環境でプレーするのは、なかなか難しいと言えます。それこそ”アウェーの洗礼”じゃないですか。

 そもそも、ゴルフのトーナメントで”ホーム”ってあるのでしょうか?

 強いて言えば、母国と外国の違いはあるかもしれません。過去に、こんな話がありました。関東の古いリゾートコースで行なわれた試合で、とても奇妙なことが起こったのです。

 そのコースは高麗グリーンを使っており、思いどおりにカップに入らないグリーンに手を焼いた外国人選手がいました。外国人選手はベントグリーンなどの洋芝に慣れていますから、感覚が違ったのでしょうね。すると、その外国人選手、イライラが最高潮に達してしまい、あろうことか、海に向かってわざとボールを打ち込んだのです。

 もちろん、同選手は思い処罰を受けましたがね。それにしても、そのコースは外国人が設計しており、それを外国人選手が否定するって、ちょっとあり得ないです。

 条件と言えば、石川遼選手の初優勝は、最終組じゃなくて、わり早い組でのスタートでした。おかげで、さほどプレッシャーを受けずに回れたのがよかったのではないか、と言われています。

 もちろん、どの組で回っても、優勝は優勝です。のちに賞金王になりますから、超トッププレーヤーであることは間違いありません。

 一方、実力があると言われながら、なかなか優勝できなかった宮里優作選手。それでも、”遅い”初優勝を飾ると、その後は立て続けに勝利を挙げています。

 だから、いかに初優勝を早い時期にもぎとるかが、プロにとっては大事だと思います。

 そういう意味では、我々アマチュアも同様に、いかに好条件でベストスコアを出すか――そういうことを考えることも必要だと思いますよ。

 昔、70台のスコアが出ていた頃、ラウンドするコースに着いて「今日はひょっとしたら、70台が出るかも」という予感がしたことがあります。それは、距離が短くて、簡単で、しかも天候に恵まれていたからです。

 恥ずかしながら、鶴舞カントリー倶楽部(千葉県)のメンバーだったときは、レギュラーティーでもベストが80台で、70台は1回も出ていません。それは東コースでの成績で、もっと難しい西コースではベスト「84」です。

 ゆえに、鶴舞CCに行くときは「今日も70台は出ない」という暗澹たる気分でラウンドしていました。月例などの競技となると、バックティーやブルーティーからですから、なおさらです。最初から諦めモードで、ハンデをうまく活用して、なるべく上位を目指す作戦でした。

 アマチュアは、よく言うでしょ。「今日は天気がよくて風もない。言い訳ができない」と。できるだけ、そういう状況でプレーなさるのがよろしいでしょう。言い訳ができない分、自分がうまくないって、はっきりわかります……って、ほんまかいな。

 ところで、日本の歴史上、最悪のコンディションで、最高の結果をもたらした人をご存知でしょうか?

 それは、桶狭間の合戦で、嵐の中、敵陣に突撃して今川義元を討ち取った、織田信長でしょう。さすが”魔王”。常人では考えも及ばないことを成すんですね。

 だからって、よい子のみなさんは、決して真似をしないでくださいね。嵐になったら、ゴルフは即キャンセルですよ。