2018年のMotoGPは、各陣営の選手たちが何台も入り乱れて激しいバトルを繰り広げながら推移していくシーズンになりそうだ。接戦をモノにして開幕戦を制したアンドレア・ドヴィツィオーゾ(中央) 開幕戦カタールGPは、それを予感させるに十…

 2018年のMotoGPは、各陣営の選手たちが何台も入り乱れて激しいバトルを繰り広げながら推移していくシーズンになりそうだ。



接戦をモノにして開幕戦を制したアンドレア・ドヴィツィオーゾ(中央)

 開幕戦カタールGPは、それを予感させるに十分な展開で金曜からのセッションが推移した。そして、決勝レースの最終ラップで緊張と興奮が最高潮に達する、二輪ロードレースの醍醐味を詰め込んだような流れになった。

 3回のフリープラクティスを経て、上位12名がトップグリッドを争う土曜の予選QP2では、このセッションに進出した12名のほぼ全員が最終盤に最速ラップを塗り替え合う息詰まるタイムアタックが連続した。

 ポールポジションを獲得したのは、最高峰クラス2年目のヨハン・ザルコ(モンスター・ヤマハ Tech3)。昨年のチャンピオン、マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が僅差で2番手につけた。サテライトチームながらファクトリーマシンを駆るドゥカティ陣営のダニロ・ペトルッチ(アルマ・プラマック・レーシング)が3番グリッド。同様に、ホンダ陣営の第3ファクトリーマシンに乗るカル・クラッチロー(LCR ホンダ・カストロール)が2列目4番手。金曜の走り出しから頭ひとつ抜けたパフォーマンスを披露していた昨年ランキング2位のアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)、そして昨シーズン終盤から今年のプレシーズンテストで切れ味のあるスピードを見せてきたアレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)が2列目の5、6番グリッドを占めた。

 ポールポジションのザルコから0.709秒差で8番グリッドにつけたバレンティーノ・ロッシ(モビスター・ヤマハ MotoGP)が「予選は2列目以内が目標で、確保できたと思ったけど、終わってみたら3列目になっていた」と土曜夜に話した言葉にも、このセッションの激しさがよくあらわれている。

 恒例のナイトレースとして日没後の午後7時にスタートした日曜の決勝は、序盤からレースをリードするザルコを彼ら上位陣の選手たちが僅差の大集団で追う展開になった。

 全22周のうち17周目までトップを快走していたザルコを、18周目1コーナーのブレーキングでドヴィツィオーゾがオーバーテイクすると、即座にマルケスも反応してドヴィツィオーゾに迫る。その機に乗じてロッシも動きを見せ、前の2台を追った。

「目標はドヴィをコントロールすることだった。タイミングや場所に関係なく、彼がザルコを抜いたら自分もついていこうと思っていた」(マルケス)

 そして、マルケスは最終ラップの最終コーナーでドヴィツィオーゾに乾坤一擲(けんこんいってき)の勝負を仕掛けた。

 ブレーキングで深く突っ込み、いったんはドヴィツィオーゾの鼻先に出たものの、わずかに外へはらんだマルケスの隙を突くようにメリハリよくクルリと旋回してコーナーを立ち上がったドヴィツィオーゾが鋭い加速でふたたび前を制して、0.027秒早くゴールラインを通過。昨年のオーストリアGPや日本GPの最終ラップをそのまま引き写したような、息詰まる劇的なバトルに勝利した。

 過去3年ずっと2位だったカタールGPで優勝を遂げたドヴィツィオーゾは、開幕戦でまずは並み居るライバルたちに一歩先んじた格好だ。

「戦略的には単独でゴールするつもりだったけど、無理だったね」と、ドヴィツィオーゾは安堵の笑みをうかべた。

「マルクは何かしてくるだろうと思っていた。最終コーナーを完璧にコントロールできてよかった。ドゥカティのパワーを活かして、しっかり旋回できた」

 一方のマルケスは、「いつかこのバトルに勝ちたいけど、また負けちゃったよ」と言いながらも、不得意なコースを2位で終えてまずは及第点といった様子で、「今回は表彰台が目標だったので、いいリザルトになった。5ポイント差でまとめることができたのでよかった」と笑顔で話した。

 一方で3位となったロッシは、この開幕戦が始まる前の木曜に、2019年からさらに2年間のヤマハとの契約更改を発表したばかり。来年以降に40歳を超えてもトップで争えることを、今回のレースで証明した格好だ。

「最後はマルケスの後ろにつけていようと思った。彼はきっと最終コーナーで勝負を仕掛けるだろうから、その結果で彼のラインがワイドになったら自分にもチャンスができるかもしれないと思ったけど、すでに彼らとはかなり距離が離れてしまっていた」

 表彰台を獲得したこの3選手に加え、冒頭に名前を挙げたトップグループの選手たちが今シーズンの優勝争いの有力候補だ。また、プレシーズンテストから土曜の走行まで苦戦気味に見えたマーベリック・ビニャーレス(モビスター・ヤマハ MotoGP)も、レース終盤に驚異的なタイムを連発して怒濤の追い上げを見せ、6位でゴールラインを通過した。このリザルトの数字自体に目覚ましさはないものの、レース内容からは彼本来の走りがようやく復活してきた気配は十分に感じとれた。

 3週間後の第2戦・アルゼンチンGPも、さまざまに異なる選手の名前が次々と登場する、そんな波瀾万丈の展開になりそうな気配が濃厚である。