平昌冬季パラリンピックの興奮がまだ冷めやらぬなか、またまた熱戦必至のパラスポーツの国際大会が東京・品川で開幕する。これが初開催となる国際ブラインドスポーツ連盟(IBSA)が公認するブラインドサッカーの国際大会、「IBSA ブラインドサ…

 平昌冬季パラリンピックの興奮がまだ冷めやらぬなか、またまた熱戦必至のパラスポーツの国際大会が東京・品川で開幕する。これが初開催となる国際ブラインドスポーツ連盟(IBSA)が公認するブラインドサッカーの国際大会、「IBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ」だ。



昨年の3月にはパラリンピック4連覇のブラジルを呼んで親善試合を行なった

 2020年東京パラリンピックでの日本のメダル獲得とブラインドサッカーのアジア、そして世界での普及などを目的に、今年から3年連続で東京都内での開催が予定されている。初年度となる「2018大会」は、3月21 日(水・祝)~25 日(日)まで5日間の日程で、品川区立天王洲公園を舞台に行なわれる。

 出場するのは、世界ランク9位の日本をはじめ、アルゼンチン(同2位)、トルコ(同6位)、フランス(同14位)、ロシア(同13位)、イングランド(同12位)の6カ国代表チーム。日本以外の5カ国は今夏の世界選手権(6月/スペイン)出場権を得ている強豪国ぞろいだ。「初代王者」を目指して世界クラスの高度で迫力あるパフォーマンスが期待される。(※世界ランクは2017年2月時点)

 大会はグループA、Bに分かれて総当たりのあと、順位決定戦が行なわれる。1月31日に組み合わせ抽選会が行なわれ、グループAの日本は3月21日午後2時からの開幕戦でイングランド、22日にトルコと対戦することが決まった。各グループ1位が決勝戦へ、同2位が3位決定戦へ、同3位が5位決定戦に進出する方式だ。

 日本代表の高田敏志監督は2015年11月に就任以来、初出場となる2020年東京パラリンピックを見据え、「新生日本代表」づくりを進めている。目指すは、定評のある堅く組織的な守備力をベースに、できるだけ高い位置でボールを奪ってシュートにつなげる「攻撃的なチーム」だ。今大会は、その進化の過程で迎えることになる。

 高田監督は、「非常にいい相手で楽しみ。攻撃的にいって点を取り、最後は相手より1点でも多く取って勝つチームをつくりたい。観る人も面白い、やっている選手も面白い、興奮する試合をしたい」と意気込む。

 大会アンバサダーで、日本障がい者サッカー連盟の北澤豪会長は、「また、感動できる大会がやってきたな、と思う。『見えてるんじゃないの?』と驚かされるプレーも見られるはず。大陸が変わるとサッカーのスタイルも変わるので、『世界のブラインドサッカー』を体感するには最適の大会。多くの人に観戦してほしい」と呼びかける。

 日本が開幕戦で戦うイングランドは、常に世界の上位にいる強豪国であり、2017年の欧州選手権で3位となって以来、実力は欧州随一との呼び声も高い。日本は昨夏、英国遠征で4勝1敗1分けと互角以上の戦績を収めたが、当時からは両者とも成長しているはず。実力拮抗の見応えあるゲームが期待できるだろう。トルコは過去の戦績から見て、日本にとって相性がいいが、猛者ぞろい欧州選手権で5位になる力があり、侮れない。

 一方のB組では、アルゼンチンが頭一つ抜けている。元々攻守にバランスの取れた世界屈指のチームだが、昨年11月の南米選手権でパラリンピック4連覇中の絶対王者ブラジルに土をつけて優勝した勢いがある。欧州選手権優勝国のロシア、組織力のフランスと、こちらも必見のゲームが続く。

 日本のエースとして得点の期待もかかるキャプテンの川村怜(りょう)は、「どの国が来ても強豪国なので、楽しみ。できれば、アルゼンチンと決勝で当たり、優勝できるよう頑張りたい。ホームだし、攻撃的に戦って勝利につなげたい」と力強く目標を口にする。

 日本は昨年12月、初制覇を目指して臨んだアジア選手権で、まさかの5位に終わり、世界選手権の出場権を逃がした。それだけに、このグランプリ大会は国内で強豪国と戦える貴重な機会となる。

 高田監督はアジア選手権の反省を踏まえたうえで、「目指すサッカー自体が変化しているし、選手もプレーモデルに対応しつつある。(今大会は)全部勝つつもりで頑張りたい」と、今大会での目標を話すとともに、「2020年に向けて日本代表がどういう道に進もうとしているのか、まだ道の途中なので、今大会を『点』で見ながらも、日本代表がこの先どうなっていくのか『線』でも見て、選手の成長を見てほしい」と進化の途中であることを強調する。

 北澤会長は、攻撃的サッカーはリスクもあり、勇気を伴うものであるとし、「アジア選手権での敗退が注目されていましたが、日本は(自分たちの)サッカーを変えた。今大会では以前とは違う日本代表が見られるのではと期待している」とエールを送る。

 ブラインドサッカーは昨年から、ルール変更によりゴールマウスが以前(縦2mx横3m)より大きなサイズ(縦2.14m×横3.66m)になった。得点の可能性が広がった分、守備の負担も増えた。日本代表の守護神として、今年で10年目になるゴールキーパー佐藤大介は、「以前よりボール1個分強ほどの違いがあり、『このコースも入ってしまうんだ』と最初は戸惑いがあった」と明かす。

 だが、対策を講じるなかで、「以前よりも足の運びや向き、体の状態などキーパーとしての基本動作への意識が高まり、トレーニングによって技術も上がっている」という。

 ブラインドサッカーのゴールキーパーはピッチ内では唯一、「見える選手」であり、見えない選手の動きを見ながら、声で指示出ししなければならず、試合後は、「体より頭に疲れを感じる」という役目を担う。自身のプレーだけに集中できない難しさもあるが、佐藤はゴールが広くなり、守備陣との連係もより必要になったことで、「ポジション取りなどの指示の仕方など、以前より考えながらサッカーができている。ゴールが大きくなったことは、今ではプラスにとらえている」と前向きだ。

 視覚に障がいのある選手がプレーするブラインドサッカーは「音」が頼り。だからこそ、観客には「黙って見守ること」が求められ、一般的なスポーツとは少し異なる独特な観戦マナーがある。

 北澤会長は、「まずは見に来てほしい。説明するより、見てもらうことでわかる。静かに見ながら、得点シーンでは絶叫するなど抑揚をつけてほしい。観る側も頑張って」と話す。

 高田監督も、「思わず声が出てしまいそうになる、今までのブラインドサッカーにはなかったパス交換など、『そんなプレーができるの?』といったところも見てほしい」とアピール。

 百聞は一見にしかず――。世界クラスの技を目の当たりにできる貴重なチャンスであり、2020年東京パラリピックをより楽しむための予習にもなるはずだ。

◆道下美里、ブラインドマラソンで世界新も、まだ東京の「金」までの途中

◆ザンビアで武者修行。視覚障害者柔道で東京のメダルを目指す半谷静香