最近、錦織圭(日本/日清食品)を苦しめた選手として思い浮かべられるのが、ATPツアー復帰戦となった2月の「ニューヨーク・オープン」準決勝で錦織を破った、ケビン・アンダーソン(南アフリカ)だ。2017年「全米オープン」の決勝でラファエル・…

最近、錦織圭(日本/日清食品)を苦しめた選手として思い浮かべられるのが、ATPツアー復帰戦となった2月の「ニューヨーク・オープン」準決勝で錦織を破った、ケビン・アンダーソン(南アフリカ)だ。2017年「全米オープン」の決勝でラファエル・ナダル(スペイン)に敗れたものの、準優勝となり大きく飛躍した。体も絞られ顔つきも精悍になり、何よりストロークの安定性が増した。もともと総合力のある選手ではあったが、今年は特に活躍が期待できそうだ。

■プロ転向は2007年

アンダーソンは、テニス選手としては比較的珍しい南アフリカ、ヨハネスブルグ出身の31歳のプレーヤーである。身長203cmの上半身から打ちおろす強烈なサーブが印象に残る選手だ。スピードが速いのはもちろんだが、正確で鋭く、ジョン・イズナー(アメリカ)やイボ・カルロビッチ(クロアチア)のように速さが中心のサーブとは少し異なる。当初はストロークの安定性が悪く、左右に振られると多くのミスをするという弱点を突かれてなかなか上位にいけなかったが、その後ストロークの改善が進み、2014年くらいから10番台となる。この頃からトーナメントでも目立つようになり、サーブだけでないオールラウンダーの選手の一人となった。それでも、この頃は錦織の方がかなり強かったものだ。

■2016年怪我に泣く 

強いサーブに頼るテニススタイルが膝、股関節、肩などの故障を誘発し、ランキングは70位まで下がりシード権を失ったのがこの頃。しかし、ノーシードから始まった2017年に復活し、「全米オープン」で準優勝となり大きく飛躍した。

■2018年に自己最高の8位へ

年初のATP250「タタ・オープン・マハラシュトラ」の決勝では、ジル・シモン(フランス)に敗れるも準優勝となる。「全豪オープン」では、初戦で若手の優良株カイル・エドマンド(イギリス)にフルセットで敗れた。2月のATP250「ニューヨーク・オープン」では準決勝で錦織にフルセットで勝利すると、決勝はサム・クエリー(アメリカ)に勝ってツアー4勝目を挙げ、自己最高の8位となった。「男子テニスATPワールドツアー500 アカプルコ」では決勝まで勝ち進み、フアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)に対し4-6、4-6のストレート負けを喫したが、第2セットは五分五分に近かった。

今年は体つきもいくらか締まったように見え、顔も精悍になり、野性味を感じられるようになった。もともと素質は素晴らしいものがあり、ストロークの安定した現在ではランキングで10番以内の常連になってもおかしくない選手だが、惜しいのはメンタルであると言われている。

テニスは、相手の予想に反したショットを打つのが基本。予想されたショットを打っても、なかなか相手のミスは引き出せない。ロジャー・フェデラー(スイス)が同じボールを打って返さないのは有名だが、これは相手にショットの予想をさせないためであるとされる。このようなショットを打つためには、フィジカルだけでなく、余裕を持ってコースを判断するメンタルの強さも必要だろう。自信を得たアンダーソンが、今年は予想もできないショットを打てるようなプレーヤーになることを期待したい。(テニスデイリー編集部)※写真は「男子テニスATPワールドツアー500 アカプルコ」の時のアンダーソン

(Photo by Hector Vivas/Getty Images)