原口元気にとって、それは予想だにしないアクシデントだった。 ヘルタ・ベルリンから2部フォルトゥナ・デュッセルドルフに加入して3試合目、先発して2試合目のザントハウゼン戦。相手のMFフィリップ・クリングマンとの競り合いで頭部を衝突させた…
原口元気にとって、それは予想だにしないアクシデントだった。
ヘルタ・ベルリンから2部フォルトゥナ・デュッセルドルフに加入して3試合目、先発して2試合目のザントハウゼン戦。相手のMFフィリップ・クリングマンとの競り合いで頭部を衝突させた原口は、後半5分で退いた。
クリングマンは担架で運ばれたものの、原口は歩いてピッチを出たことから、当初は軽傷と予想された。だが、実際は脳震盪(しんとう)を起こしており、その後の約10日間は、読書やテレビ、スマホ、音楽なども禁じられて、安静にしなくてはならないという苦しい生活が続いた。
デュイスブルク戦に先発、84分までプレーした原口元気(デュッセルドルフ)
やがて少しずつ練習に参加できるようになり、試合に戻れたのは離脱から1カ月以上たった3月4日のザンクトパウリ戦だった。ただし、そのザンクトパウリ戦の試合中も、時間帯によってはめまいが起こるような状態だったという。幸い、その後の回復は順調で、続く3月11日のデュイスブルク戦では出場時間も84分にまで伸びた。ほぼ完治したと言ってよさそうだ。
そもそも原口が2部のチームに来てまで求めたのは、出場機会を増やし、それによりトップコンディションを取り戻すことだった。そして、ヘルタ時代の守備も頑張れる攻撃的MFというより、浦和レッズ時代のようにゴール前に入って仕事をする、そんなプレーを取り戻すことをテーマとしていた。
さらに、1部から2部へ冬の移籍で移った者として、「1部に昇格させるために来た」と、助っ人としてチームを助けたいという気持ちも強かった。実際、原口がプレーした離脱前と復帰後の5試合は全勝。チームは2位ニュルンベルクに勝ち点5差をつけて首位に立っている。
「その(昇格させる)ために来たので。出た試合は5戦5勝(笑)。ラッキーな部分もあるけど、少しそこはポジティブかな、気分的に」
今は出場することだけでなく、自分のプレーでチームに貢献できることの喜びを感じているようだった。
ゴール前での得点に絡むプレーを目指すという意味でも、現在まで1得点3アシストと、数字がついてきた。
また、数字に残らなくても、ゴールを意識したプレー、得点に直結するプレーができている。例えばデュイスブルク戦の33分、原口は左からカットインし、GKを直撃する強烈なシュートを放った。「ボールを持ったときの感覚がいい」と言う。
40分の先制点につながったシーンは、相手のCKをCBが大きく蹴り出したボールに原口が反応。宇佐美貴史と2人でカウンターを仕掛けた。これはうまくいかなかったが、その後、味方がこぼれ球をつないでゴールを決めた。
「ドリブル自体は調子がよかったし、あとはなにかしら形になるように……。もう少しでなりそうなシーンがいくつかあったので、それが形になってくれれば、このチームをもっと助けられると思います」
デュイスブルク戦の後、原口は自らのコンディションをこのように語っている。
「最後のところは、もう少しコンディションが上がれば間違いなくいけると思う。やっぱり1カ月休んでいたのを取り戻すためには2~3試合はかかるかなと思うので、もう少し、かかると思います」
ここからまた試合出場を重ねていけば、さらに調子を取り戻していけるはずだ。
一方で気になるのは、3月15日に発表される日本代表欧州遠征メンバーに入るかどうか。ハリルホジッチ監督は、最終予選の序盤で4戦連続得点を決めた原口でさえ、試合に出ていないことの影響を懸念しているようだ。だが、本人には気にしている様子は見られなかった。
「決めるのは僕じゃないから、なんともアレですけど……どうなるか、見てみないとわからないっす」
こんなあっさりした受け答えにも、回復への自信が感じられた。