ポルトガルリーグ第25節アヴェス対ポルティモネンセの一戦は、3-0でアヴェスが勝利した。日本代表初選出が有力視されるポルティモネンセの中島翔哉は、これで3試合連続のフル出場。下位相手に完敗を喫したチームの中にあって、随所にキレのあるプ…

 ポルトガルリーグ第25節アヴェス対ポルティモネンセの一戦は、3-0でアヴェスが勝利した。日本代表初選出が有力視されるポルティモネンセの中島翔哉は、これで3試合連続のフル出場。下位相手に完敗を喫したチームの中にあって、随所にキレのあるプレーを見せた。



日本代表への選出が期待されている中島翔哉(ポルティモネンセ)

 1月初旬、ポルトガルの地元紙などではすぐにでもビッグクラブへの移籍が実現しそうな報道がなされていた中島だったが、FC東京から保有権を買い取ったクラブ側が高額の移籍金(2000万ユーロ=約27億円)を設定し、値下げには応じない姿勢を打ち出したこともあり、冬のマーケットでの移籍は実現しなかった。

 だが、その後も得点(現在9得点、得点ランキング9位)、出場時間ともに順調に伸ばしており、依然として周囲の評価は高い。

 試合前、取材パスを受け取る際に、こちらが日本人だとわかると、ホームのアヴェスの広報担当者から「ショーヤは今までセレクション(代表)に選ばれたことがないのか? 不思議だね、いい選手なのに」と、声をかけられた。

 日本代表のスタッフが視察に訪れているという情報が流れていた影響もあったのかもしれないが、欧州では他国(それもアジアの国)の代表のことなどあまり気にしないのが普通である。ましてや、社交辞令込みだとしても相手チームの選手をわざわざ褒めるというのは珍しい。

「(中島に)活躍されるのは困るけど、いい写真が撮れるといいね」と広報に言われて送り出されたアヴェス戦の前半、中島は相手守備陣の二重、三重の包囲網に苦しんだ。

「(シーズン)最初より、やっぱりそういう(厳しくマークされる)のはあります。ただ、それは当然のこと。それを利用したり、味方もいますし、もっといいプレーがチームとしてできると思うので、そこは状況を見て、相手がケアしているんだったらもっと違うプレーを出すとか……今日はもっといいプレーができたと思うので、とても悔しいです」

 試合後の中島は反省しきりだった。

 ただ、厳しいマークにも慣れた後半は、再三ドリブル突破も決め、時折ポジションを中央に移してはパスを呼び込みチャンスを演出。56分には、GKが反応もできずに見送るしかないシュート(惜しくもポスト直撃)を放つなど、一定の存在感は発揮した。

 ポルトガルは、フィーゴをはじめとして、リカルド・クアレスマ(ベシクタシュ)、ナニ(ラツィオ)、ゴンサロ・グエデス(バレンシア)、そして今ではストライカー然としているが、クリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリード)など、単独でサイドの局面を打破できる名手が多く輩出してきた。そういった選手を日常的に見てきたので、サイドの選手を見るファンの目は肥えている。

 基本的にはアウェーチームの選手を褒めることなど皆無に近いポルトガルのファンだが、それでも相手がすばらしいプレーをしたときは、自然に感嘆の声(と同時に、自チームの選手のやられっぷりを嘆く溜息)があがることがある。

 選手単独での突破を「強引」「持ち過ぎ」「独善的」と忌避、揶揄(やゆ)する国もあれば、「積極的」と評価する国もある。ポルトガルは明らかに後者だ。突破が失敗ばかりでは批判されるのは当然だし、どちらが正しいかという議論はさておくとして、敢然とした姿勢で対峙する守備陣に切り込んでいく姿が好まれるポルトガルのサッカーと、中島のプレーは相性がよかったのだろう。

 中島自身も「すごく合ったリーグだと思います、すごくいい選手、いいチームが多いと思うので、やっていて面白いです」と語っている。

 そしてサイドの好選手を数多く生んできた国において評価される中島のプレースタイルは、少なからず閉塞感が感じられる最近の日本代表にも、新しい選択肢をもたらす可能性が十分にあるのではないか。

 試合に関しての質問のあと、「ハリルホジッチ監督に関する報道で頻繁に中島の名前が出るようになり、選出は決定的という報道も出ているが……」という問いに対して、中島は「それ(代表への選出)は自分が決めることではないですけれど……今日より次はもっといいプレーをして、ということしか考えていないので」と、冷静に答えている。

 その一方で、以前から「もちろん、そういった大会(W杯)に出るのは、選手としてもすごく大事なこと」とも語っており、代表を意識していないはずはない。間もなく発表される日本代表のベルギー遠征招集リストに、中島の名前は入っているだろうか。