【連載】ジェンソン・バトンのスーパーGT参戦記 2018年、国内最高峰レースのひとつ「スーパーGT」に元F1ワールドチャンピオンのジェンソン・バトンがフル参戦する。キッカケとなったのは、昨年スポット参戦した鈴鹿1000km。そのころから…

【連載】ジェンソン・バトンのスーパーGT参戦記

 2018年、国内最高峰レースのひとつ「スーパーGT」に元F1ワールドチャンピオンのジェンソン・バトンがフル参戦する。キッカケとなったのは、昨年スポット参戦した鈴鹿1000km。そのころから本格的にスーパーGTへの挑戦を考え始めたという。



ジェンソン・バトンにスーパーGTへの想いを語ってもらった

 今年所属するのは「チームクニミツ」。山本尚貴とコンビを組み、RAYBRIG NSX-GT(ナンバー100)でスーパーGTシリーズを戦うことになった。現在バトンは国内外のテストに参加しながら、4月7日~8日の開幕戦に向けて準備を進めている。

 開幕まであと1ヵ月と迫った、現在の心境について話を聞いてみた。

―― 改めてなぜ、今シーズンはスーパーGTにフル参戦しようと決意したのですか?

ジェンソン・バトン(以下:バトン) 僕は何年も前からスーパーGTのファンで、ずっとレースの動向は追いかけていたんだ。8年くらい前に僕の友人がチームクニミツのマシンでテスト走行する機会があったので、そういったつながりもあって興味を持ち続けていた。

 スーパーGTは3つの自動車メーカーがしのぎを削り、さらに2つのクラス(GT500とGT300)のマシンが同時にレースをする。そういうところもエキサイティングに感じている。また、僕自身も以前からホンダとの関係があったから、今回こういったすばらしい機会をもらえてうれしいよ。

 昨年の鈴鹿1000kmにスポット参戦したけど、あれはとても楽しかった。結果は決していいものではなかったけど、雰囲気はすばらしいし、僕自身にとっても勉強になることが多かった。

 僕がこれまで経験してきたカテゴリーとも違い、マシンの重量があって、クルマの動きも(F1と比べると)かなり違う。鈴鹿が終わってからフル参戦したいと真剣に考え始め、鈴鹿のF1日本GPあたりでホンダの山本さん(山本雅史モータースポーツ部長)としっかり議論して決めたんだ。

 また、スーパーGTでは1台のマシンをふたりのドライバーがシェアしなければならない。1日4時間のセッション時間はあっても、そのなかで限られた時間しか乗ることができないのが特徴だ。だから正直、もっと勉強しなければいけないと思っている。

 でも、テストはすごく充実しているよ。今はチームメイトの山本選手からいろいろ教わっているところなんだ。

―― 今シーズンは初めて走るコースもありますし、走行時間の限られるなかでコースを覚えなくてはなりません。どのように対応しようと考えていますか?

バトン 今回のテスト(岡山国際サーキット)みたいに、シーズン中に開催されるコースを走れるのはうれしいよ。僕は日本に数多くある、古いタイプのサーキットが好きなんだ。ひとつのミスも許されず、高低差のあるサーキットが多くて、チャレンジし甲斐いがあるからね。

 また、スーパーGTはプラクティスの時間がすごく限定されている。だからサーキットを覚えるために、ドライビングシミュレーターを使うつもりだよ。これから開幕前のテストで鈴鹿や岡山、富士を走ることができるし、その他のサーキットも事前にシミュレーターで練習してから向かう予定だ。ただ、タイのサーキットだけはぶっつけ本番になるだろうね。

―― 今シーズンの目標は、もちろん優勝ですか?

バトン そうだね。優勝することが目標だし、そのためにレースに参戦している。でも、スーパーGTの場合は他のレースとは違って、ウェイトハンデのシステムがある。これは非常に面白いシステムだと思っているよ。

 だから、1戦目で勝てなかったとしても、ライバルがウェイトを積むことによって中盤戦以降もチャンスが出てくるだろうし、チャンピオンシップを争っていくことも十分に可能だ。でも今、僕たちが目指しているのは「開幕戦で1番になる」ことだよ。

 もちろん、他のドライバーも勝ちたいと思っているから、簡単に勝てるものでもないだろう。だけどF1とは大きく違って、みんながチャンピオンを獲得できるチャンスがある。F1の場合はチャンピオンのチャンスがあるのはわずか1~2チームだけで、それ以外のチームはシーズンが始まった時点で勝つチャンスがないとわかってしまうからね。一方、スーパーGTの場合は多くのチームに勝つチャンスがある。だから面白い。

―― 昨年の鈴鹿1000kmにスポット参戦して以降、スーパーGTを戦っていくうえで足りない部分や、改善していきたいと思った部分はありますか?

バトン 予選での走り方だね。現段階では、決勝レースのペースは問題ないと思っている。鈴鹿にスポット参戦したときも感触はよかったし、今も違和感なくこなせている。だけど予選に関しては、もっと勉強して取り組まないといけないところがあると思う。

 たとえば、タイヤウォーマー。スーパーGTでは禁止されているから、どのようにウォームアップしていくかを考えるのは、僕にとって新しい挑戦だね。マレーシアでテストしたときは気温が高すぎたので参考にならない点も多かったけど、日本でのテストでは気温も安定しているし、開幕戦のコンディションにも似ているから、いい練習になっているよ。

 ただ、スーパーGTの予選は本当にハイレベル。どのドライバーもすごく速い。Q2に残るのは至難の業だ。本番でいい仕事ができるように、集中して取り組んでいるよ。

―― 昨年の鈴鹿でもサイン攻めにあっていましたが、スーパーGTのファンの印象はいかがですか?

バトン 日本に来るのは毎回、大好きなんだよ。ファンの熱気がすばらしい。特に日本のファンは、全員のドライバーを熱心に応援してくれている。

 スーパーGTはドライバーとファンとの距離がものすごく近いよね。他のレースにはない特別な雰囲気で、それがこのレースのよさだと思うよ。鈴鹿や富士のような大きなサーキットは盛り上がりそうだし、今年は初めて行く場所も多いから、そこで新しいファンに会えるのも楽しみだね。

―― 開幕戦までに今後も何度かテスト走行の機会がありますが、どういった内容を試したいと思っていますか?

バトン クルマのセットアップのことについて、もっといろんなことを試したいと思っている。(フォーミュラカーと比べると)車重が重いから、コーナリング時のロールだったり、細かなクルマの挙動も全部把握しきれていないんだ。これまでF1で経験してきた動きとまったく違うから、テストのなかで学んでいかないといけない。

 あとはさっきも話したけど、新品タイヤを使ってのタイムアタックだね。ロングランは問題ないと思っているから、予選でライバルに後れをとらないようなパフォーマンスを発揮できるようにしなきゃいけない。とにかく1周1周、ベストを尽くして改善していっている状態。これを開幕戦まで継続してやっていくよ。

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