「さすがにこれだけ負けるとショックはでかいです。今回に限らず、日本は接戦を勝ち切ることが少ない。勝負どころでチーム力の差が出てくるので、明らかにそこは実力不足で経験の差。自分としては自信を持ってやっているのですが…̷…

「さすがにこれだけ負けるとショックはでかいです。今回に限らず、日本は接戦を勝ち切ることが少ない。勝負どころでチーム力の差が出てくるので、明らかにそこは実力不足で経験の差。自分としては自信を持ってやっているのですが……」



比江島慎が日本のエースとして躍動するも、結果に繋がらない

 1次予選で4連敗。沈痛な表情でそう語るのは、このワールドカップのアジア予選で総得点3位にランクしている日本のエース、比江島慎(シーホース三河)である。

 2019年のワールドカップ出場を目指し、男子バスケットボールはホーム&アウェーで予選を行なっている最中だ。アジアからの出場枠は開催地の中国を除く上位7チーム。昨年11月と今年2月で4試合が終了し、日本はいまだ勝ち星なし。残す1次予選は6月末の2試合のみ。1次予選はグループ4チーム中、最下位が脱落するシステムなので、まさに崖っぷちに立たされたことになる。

 比江島はアジアでも屈指のスコアラーとして存在感を見せているが、日本としては、チームプレーが機能しない、リバウンドが取れない、フリースローを外してしまうといった弱点が目立つ。勝負がかかった場面で臆病な姿を露呈してしまうのは、長年抱えた問題点でいまだ改善されない。アルゼンチン代表を率いてロンドン五輪でベスト4の実績を持つ指揮官フリオ・ラマスにしても、就任したばかりなうえに、リーグ中で練習時間が圧倒的に足りず、日本選手やアジアの特徴をつかみきれていない点も課題となっている。

 とくに痛手だったのが、2月22日に1点差(69-70)で敗れたチャイニーズ・タイペイ戦だ。相手は日本を上回るケガ人が出ていて若手が多く参戦していた。チームのキャリアでは日本のほうが上で、ホームの戦いだったにもかかわらず、消極的な姿勢で試合を落としたのだから自滅である。

 2019年のワールドカップ出場は、男子バスケットボール界にとっては使命だ。バスケットボールはオリンピックの開催地枠が保証されていない競技。FIBA(国際バスケットボール連盟)からは実力不足を指摘されているために、是が非でもワールドカップに出場して成長した姿を示さなければならない。何より、世界の舞台から遠ざかっている日本としては、ワールドカップに出て経験を積み上げていきたい。それなのに、その夢の舞台が遠ざかる危機に瀕している。

 ここで、アジア全体の予選状況と日本の立ち位置を確認したい。

 ここまでの戦いから見えてくることは、どこの国もトップの選手層が出て万全に戦っているのかといえば、決してそうではないということだ。リーグ中に行なわれる予選ゆえに、どこも負傷者や不調な選手がいてベストな布陣を組むことは難しい。それでも、各国が手を尽くしてこの予選に挑んでいる。

 リーグを中断せずに予選に臨んでいるフィリピンは、コンディション維持と選手層の底上げが課題だった。そんな中でこの2月ラウンドは、22日に格上のオーストラリアに対して、控え選手に多くのプレータイムを与えていた。その結果、22日は敗れたものの、若手選手が25日の日本戦で自信を持ってプレーすることにつながった。

 世代交代に差し掛かったイランは昨年11月の予選では代表編成がうまくいかずに1敗を喫してしまうが、この2月からは、代表から2年遠ざかっていた得点源のサマッド・ニックハ・バハラミを復帰させている。チームリーダーが戻ったイランは士気を高めることに成功している。

 ワールドカップの開催地枠を持っている中国は、先を見越した強化をしながら、昨年8月のアジアカップと、この予選に挑んでおり、そのシステムがとても興味深い。

 中国は、40名を超える候補選手を藍隊(BLUE)と紅隊(RED)に分け、その中から毎回12名を選出し、交互に出場させて鍛えている。しかも、ヘッドコーチも競わせ、優秀な成績を残したほうがワールドカップで指揮を執ることになっている。出場メンバーが毎回変わるために起伏が激しいが、選手もヘッドコーチも選考レースとして挑んでいるために、予選といえども必死だ。

 また、昨年からアジア予選に加わり、NBA選手が不在でもアジアでは頭一つ抜きんでているオーストラリアでさえ、準備に余念がない。アンドレイ・レマニスヘッドコーチは、アジア予選についてこのように語っている。

「チーム作りには継続性が必要なため、我々は昨年夏のアジアカップを重要視してチーム作りをスタートさせた。現在は誰が必要かを見極めるために、予選を通してコアメンバーを築いている。アジアに参入することはこれまでとは違うプレースタイル、違う戦術や違う臨み方をする必要があったが、それらはチームの成長にとても役に立っているし、もっと試合の映像を見て研究することが必要だ」

 一方で、日本が何もしなかったわけではない。昨年からこの予選を見越して11月には台湾遠征、2月にはイランと親善試合をするなど、リーグを中断して準備をしている。だが、強豪国が慎重なチーム作りで予選に臨んでいるのを見ると、選手層の厚さや地力の差を痛感せずにはいられない。

 1次予選も残すところあと2戦。最終順位はまだ確定していないが、2次予選進出チームは続々と決定している。

 A組はニュージーランドと中国、日本が所属しているB組はオーストラリアとフィリピン、C組はヨルダンとレバノン、D組はイランとカザフスタンがその顔ぶれだ。さらに、A組の韓国も格下の香港戦を残していることから、3位以上は確定したと見ていいだろう。

 4連敗を喫した日本にもまだ可能性はある。最終戦の7月2日、アウェーで行なわれるチャイニーズ・タイペイ戦で2点差以上の勝利をあげれば、得失点差で上回って3位になれる。ただし、そのためには6月29日にチャイニーズ・タイペイがフィリピンに敗れることが条件である。チャイニーズ・タイペイがフィリピンに勝てば、日本はそこで1次予選敗退が決まってしまう。もちろん格上といえども、日本が6月29日にオーストラリアに勝った場合も自力進出の道は開けてくる。

 日本協会は、NCAA(全米大学体育協会)で活躍する渡邊雄太(ジョージワシントン大)と八村塁(ゴンザガ大)を6月の最終予選に合流させるプランを進めているが、2人の代表加入を待つ前にBリーグ戦士たちにもできることはある。それは外国人選手任せにせず、日本人選手がリバウンドに飛び込み、ゴールアタックするプレーを習慣化することだ。

 4連敗を喫したこの予選で唯一収穫があったとすれば、ホームで開催したことにより、改めてライバル国のタフさを実感し、日本の現状を多くの人が目の当たりにしたことだ。日本選手が抱える消極的な姿が露呈されたのだから、リーグ全体が目を覚まし、より強く意識して取り組まなければ改善できない問題だろう。

 比江島は「一人ひとり、攻め気を出すことがチームの勝利につながる」と語る。その決意を最終決戦で見せてほしい。

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