FC東京に競り勝って開幕2連勝を飾ったベガルタ仙台 開幕2連勝という絶好のスタートダッシュも、ベガルタ仙台にとっては不吉な兆候なのかもしれない。 J1第2節、仙台はFC東京を1-0で下した。柏レイソルを1-0で破った開幕戦に続き、無失点…



FC東京に競り勝って開幕2連勝を飾ったベガルタ仙台

 開幕2連勝という絶好のスタートダッシュも、ベガルタ仙台にとっては不吉な兆候なのかもしれない。

 J1第2節、仙台はFC東京を1-0で下した。柏レイソルを1-0で破った開幕戦に続き、無失点での2連勝である。

 だが、仙台を率いる渡邉晋監督は喜びに浸る様子を見せずに、こう語った。

「去年も開幕から連勝したが、その後は全然だった。(次節の)ヴィッセル神戸戦の前にルヴァンカップもあるが、次へ向けて粛々と準備していきたい」

 指揮官の言葉にあるように、仙台は昨季も開幕戦から2連勝でシーズンをスタートした。

 ところが、第3節以降の5試合で、3連敗を含む1勝4敗と急失速。以降、勝ち点は伸び悩み、最終順位は12位に終わった。

 しかも、昨季の開幕2連勝もスコアはいずれも1-0。今季の状況と酷似しているのだから、渡邉監督が気を引き締めるのも無理はない。

 連勝スタートに浮かれるどころか、むしろ慎重さを増していたのは、指揮官だけではない。決勝点を決めたFW石原直樹もまた、「去年も開幕2連勝で、ああいう順位(12位)だった。去年との違いを見せられるように(次の試合へ)準備したい」と語っていた。

 選手や監督から、こうした言葉が聞かれるのは、当然彼らに自戒の思いがあるからに違いない。だが、それと同時に、昨季の失敗を堂々と口にできるのは、同じ轍(てつ)は踏まないという自信の裏返しでもあるのだろう。石原が語る。

「苦しい時間でも我慢できて、ゼロ(無失点)に抑えられたことが勝ち点3につながった。去年は(リードしている試合で)もう1点取りにいくのかどうか、ゲームの終わらせ方を失敗したことがあったが、同じ失敗を繰り返さずにできている結果が、2試合連続の1-0に表れている」

 石原が言うように、FC東京戦の仙台も90分間、思いどおりに試合を進められたわけではなかった。それどころか、FC東京が開幕戦からフォーメーションを変えてきたことで「選手が戸惑い、正直、後手を踏んだ部分があった」(渡邉監督)。前半は押し込まれる時間が長く続いた。

 しかし、ピッチ上の選手たちは冷静に状況を判断し、「(中盤でミスマッチが起き、プレスが)ハマっていなかったので、3トップの1枚が下りて中盤の枚数を増やそうと話していた」(FW野津田岳人)。

 その結果、「立ち位置(選手のポジショニング)を変えてから、落ち着いて試合を進められた」と渡邉監督。「僕が言わなくても、彼らは自分たちで判断してやれている。そこは選手の成長だと思う」と、ピッチ上の判断を称えた。指揮官が続ける。

「うまくいかない時間が長くても、自分たちがやりたいことをやるのではなく、相手が嫌がることをやるのを念頭にゲームを進めよう、と。後半はFC東京が嫌がることを攻守にやれた」

 確かに、前半の仙台は苦しんだ。石原が決めた唯一の得点にしても、FC東京の長谷川健太監督が「シュートの当たり損ねだったと思う」と語ったように、不規則な回転のかかった一撃でありラッキーな面もあっただろう。

 だが、後半57分に先制して以降の30分あまりの試合運びは、ほぼ危なげなかった。焦りから攻め急ぐFC東京に対し、引いて守るのではなく、高い位置からプレスをかけてボールを奪い、両サイドを広く使って攻撃を仕掛ける。仙台は試合の主導権を完全につかんでいた。

 決勝点をアシストしたMF永戸勝也は言う。

「チームとしてのボールの動かし方、攻撃へのつなぎ方が合ってきた。去年は(戦い方を)試行錯誤しながらだったので耐える(だけの)試合が多かったが、今年は耐えながらも自分たちのやり方を出せている」

 12位に終わった昨季を振り返り、渡邉監督は「いい内容のゲームを勝ち切れないことが多かった」と語る。だからこそ、「攻守に主導権を握って相手を圧倒するのが理想だが」と前置きしたうえで、「自分たちがやりたいことをやるだけでなく、相手のよさを消すのもサッカー」と言い、苦しんだ末の連勝に手ごたえを口にした。

「1、2節はいいゲームだった」

 最後にもうひとつ、昨季との違い、というより、昨季までとの違いを付け加えれば、仙台がFC東京に味の素スタジアムで勝利したのは初めてのこと。長年続いた負の歴史に終止符を打つ、歴史的勝ち点3だったのだ。

 どうやら、吉兆の開幕2連勝である。