<2018年2月22日〜2月25日 ITTFチームワールドカップ2018(ロンドン)>世界の強豪12チームが集結するITTFチームワールドカップが2月22日から25日(現地時間)まで開催され、男子の部も女子同様、中国の優勝となった。日本男子…
<2018年2月22日〜2月25日 ITTFチームワールドカップ2018(ロンドン)>
世界の強豪12チームが集結するITTFチームワールドカップが2月22日から25日(現地時間)まで開催され、男子の部も女子同様、中国の優勝となった。
日本男子は丹羽孝希(ITTF世界卓球ランキング6位、2018年2月現在)、張本智和(同11位)、大島祐哉(同18位)、上田仁(同27位)が代表として出場。これまで男子団体のエースとして活躍してきた水谷隼が不在の中、日本代表の団体戦初出場となる張本をエースポジションのシングルス2点起用し、同じく初出場の上田とリオ五輪代表の丹羽をダブルスと要所に置くオーダーで初の銀メダル獲得を果たした。
銀メダル獲得の一番の立役者は上田仁。決勝まで単複6戦全勝の活躍を見せ、準決勝のラストではゲームオール6-10からの大逆転で勝利するなど、大車輪の活躍を見せた。国際卓球連盟(ITTF)からも「10年のワールドチームカップの歴史の中で最もドラマチックな試合だった」と評された。
日本男子、ITTFチームワールドカップ2018の軌跡
準々決勝 3-2 香港
グループリーグを無事に1位通過した日本に立ちはだかったのは香港。香港は今大会第4シードであったが、グループリーグでブラジルに敗れたため、2位通過でトーナメントに進出している。
1番はグループリーグで好調を維持した丹羽孝希/上田仁ペア。対する林兆恒/呉柏男は右利き同士の実力者ペア。好ラリーの連続となった試合をフルゲームで日本ペアが制した。
続く2番の張本智和の相手は香港のエース黄鎮廷(同7位)。張本が黄をブロックで振り回し接戦に持ち込む展開が予想されたが、蓋を開けてみれば0-3のストレート負け。日本のトップ選手にはほとんどいない、ペンホルダーから繰り出される強力なフォアハンドドライブに苦戦した。
流れを戻したい日本はダブルスで勝って勢いに乗る上田仁が3番で登場。呉柏男(同61位)に対して、ストレートで勝利し仕事を果たした。競った場面でも落ち着いたプレーで、見ていて安心感を抱いたファンも多かったのではないだろうか。
続く4番は丹羽孝希。ここで決めたい日本であったが、再び黄鎮廷が立ちはだかった。黄の回転量の多いボールに対応しきれず、1-3で敗北。勝負の行方はラストの張本に託された。
5番張本智和と林兆恒(同58位)の対戦は、互いに1ゲームを取り合って迎えた第3ゲーム、張本は3-8と大きくリードを許してしまう。しかし、ここから意地の8点連取を見せ大逆転。第4ゲームもその勢いを維持し11-5と圧勝し、日本に嬉しい準決勝進出をもたらした。
準決勝 3-2 韓国
準決勝の韓国戦は歴史に残る劇的な試合となった。
1番のダブルスは好調の丹羽孝希/上田仁ペア。好ラリーが続くフルゲームの接戦を制し、エースの張本にバトンを渡した。
2番はエース張本智和と、今大会好調の丁祥恩(同31位)との対戦。序盤から得意の高速両ハンドが冴え渡り、11-9,11-9で2ゲームを連取。勝負強さも見せた。第3ゲームは奪われたものの、すぐに立て直し3-1で勝利。日本の決勝進出に王手をかけた。
3番は、何としてもここで決めたい丹羽孝希であったが、相手は過去に世界ランク7位まで上がったこともある鄭栄植。得意のカウンターが振るわず、逆に最後はカウンターを決められしまう形で、1-3で敗れた。
続く4番は再び張本智和。先ほどの出場から継続して調子のいい高速両ハンドを武器に、幸先よく2ゲームを連取した。しかし、相手の李尚洙(同15位)も、張本以上の高速両ハンドを見せ、逆転。フルゲームで敗れ、勝負はラストの上田仁に託された。
ラストで気持ちも入った上田仁と丁祥恩の戦いは、互いに一歩も譲らずフルゲームにまでもつれ込んだ。5-5から6-6とシーソーゲームの展開となったが、エッジなどの不運も重なり、一気に6-10にされてしまう。しかし、ここからチーム最年長の上田仁が意地を見せる。4点連取でデュースに持ち込むとその後も一進一退の攻防を制し、16-14で奇跡的な逆転劇を魅せた。
勝利の瞬間、ベンチの丹羽孝希と張本智和も抱き合い、喜びを分かち合った。チームワールドカップでは日本男子史上初となる決勝進出を果たした。
決勝 日本 0-3 中国
決勝の相手は過去10回のチームワールドカップのうち8回優勝している中国。
日本は1番に丹羽孝希/上田仁ペアを起用し、馬龍/許昕という最強ペアに立ち向かった。序盤から持ち味の速攻プレーが決まるシーンが多く見られたものの、中国ペアに下がったところからでもパワーのあるボールで応戦され、ストレート負け。「ペアと交互に打つため次の打球までに動く時間がある」というダブルスの特徴を最大限に活かした許昕のフルスイングを止めることができなかった。
続いて張本智和と樊振東(同2位)が対戦。攻撃的な両ハンド(フォアハンドとバックハンド)が特長という両選手の試合は序盤から高速ラリーが展開され、見応えのあるものとなった。第1ゲームでは張本の高速バックハンドが樊を苦しめる場面が幾度となく見られたが、重要な場面では樊振東が張本を上回るタイミングのバックハンドとパワー溢れるフォアドライブで得点。第2ゲーム以降は張本のピッチに慣れた樊振東が、世界一と称される両ハンド攻撃で実力差を見せつけストレートで勝利。張本のスピード卓球をパワーでねじ伏せた。
一縷の望みをかけてコートに向かった3番の丹羽孝希は、世界チャンピオンの馬龍に対して、1ゲーム目を落とすも、2ゲーム目は馬龍の手元を狂わす変化サーブと得意のカウンターが面白いように決まり、ゲームを取り返す。しかし、そこから馬龍が本領発揮。馬龍のフットワークを活かした連続攻撃に対して、丹羽は得意のカウンターを要所で見せるにとどまり、完敗した。
結果としては、女子に引き続き、男子も中国にストレート負けとなった。
しかし、日本男子は水谷不在の新しいチームで苦しい試合を乗り越え、決勝までたどり着く経験をした。この経験を活かし、4月の世界選手権団体、そして2020年の東京五輪までにこの距離をどこまで縮めることができるのか、今後の日本選手の活躍から目が離せない。
ITTFチームワールドカップ2018の結果
優勝:中国
準優勝:日本
ベスト4:韓国、イングランド
ITTFチームワールドカップ2018:男子の結果詳細
グループリーグ第1試合 3-0 エジプト
丹羽孝希/大島祐哉 3(6,-7,2,8)1 サレ/ベイアリ
張本智和 3(3,7,-9,-9,4)2 アサール
大島祐哉 3(8,6,8)0 ベイアリ
グループリーグ第2試合 日本 3-1 イングランド
丹羽孝希/上田仁 3(5,-9,6,-9,7)2 ウォーカー/ドリンコール
張本智和 0(-11,-8,-5)3 ピッチフォード
上田仁 3(8,-9,10,6)1 ドリンコール
丹羽孝希 3(14,8,7)0 ピッチフォード
準々決勝 日本 3-2 香港
丹羽孝希/上田仁 3(-9,5,-3,4,6)2 林兆恒/呉柏男
張本智和 0(-9,-8,-7)3 黄鎮廷
上田仁 3(4,9,12)0 呉柏男
丹羽孝希 1(9,-11,-3,-8)3 黄鎮廷
張本智和 3(8.-8,8,5)1 林兆恒
準決勝 日本 3-2 韓国
丹羽孝希/上田仁 3(11,-6,-10,9,5)2 李尚洙/鄭栄植
張本智和 3(9,9,-8,7)1 丁祥恩
丹羽孝希 1(-7,7,-9,-9)3 鄭栄植
張本智和 2(8,6,-2,-14,-8)3 李尚洙
上田仁 3(10,-5,-6,6,14)2 丁祥恩
決勝 日本 0-3 中国
丹羽孝希/上田仁 0(-8,-9,-7)3 馬龍/許昕
張本智和 0(-7,-4,-8)3 樊振東
丹羽孝希 1(-8,3,-5,-3)3 馬龍
試合結果の見方
表記ルール: 選手名A ゲーム数(各ゲームのポイント)ゲーム数 選手名B
各ゲームのポイントの表記例: 選手Aが選手Bと対戦し、1ゲーム目11対6、2ゲーム目11対5、3ゲーム目12対10で選手Aが勝ち、選手Bが負けた場合、
「選手A 3(6,5,10)0 選手B」 または 「選手B 0(-6,-5,-10)3 選手A」 と表記。
文:中川正博(Rallys編集部)
写真:アフロ