2018年のMotoGPは全19戦、昨年よりも1戦多いレース数が予定されている。増えるのは、タイ東北部ブリラムのチャーン・インターナショナル・サーキット。10月上旬の第15戦としてカレンダーに組み込まれているが、このMotoGP初開催…

 2018年のMotoGPは全19戦、昨年よりも1戦多いレース数が予定されている。増えるのは、タイ東北部ブリラムのチャーン・インターナショナル・サーキット。10月上旬の第15戦としてカレンダーに組み込まれているが、このMotoGP初開催地で2月16日から18日の3日間にプレシーズンのオフィシャルテストが行なわれた。各チームとライダーにとっては、10月のレースに備えて情報とデータを収集しておくためにも重要なテストだ。



テストで上位タイムをマークした22歳のアレックス・リンス

 3日間のスケジュールを終えてトップタイムを記録したのは、レプソル・ホンダ・チームのダニ・ペドロサ。

「ここを走行するのは初めてだったので、コースインするたびに少しずつ順応しながら限界を探っていった。10月のレースに向けて、ギアボックスや路面状態、マッピングなどをいろいろ知ることができてよかった」と、収穫の多いテストになったと話した。1月のセパンテストに続き、今回も充実したタイムと内容で終え、開幕に向けた準備は着々と進んでいる様子だ。

 ここ数年ではもっとも上々の仕上がり具合と言えそうだが、ペドロサ自身は「目標はあくまで、開幕戦でトップグループを争うこと。今はまだテスト段階とはいえ、フィーリングは少しずついい方向に進んでいる。さらにもっとテストを重ねて詰めていきたいところはあるけど、最初のセパンはポジティブだったし、今回もいい内容だった。なによりチームががんばってくれていて、暑いなかでいい情報をたくさん収集できた」と、あくまでもこの人らしい慎重な発言にとどめている。

 しかし、ホンダ勢の仕上がりがよさそうなことは、3日間の総合順位にも表れている。トップタイムのペドロサを筆頭に、そこから0.188秒差でチームメイトのマルク・マルケスが3番手、さらにその0.095秒背後にLCR Honda Castrolのカル・クラッチローと、3名のHRCファクトリーライダーがトップ4圏内に名を連ねている。ホンダ陣営の日本人ルーキー中上貴晶も、3日間を通して新人勢では最上位タイムを記録し、最後はペドロサから0.675秒差の総合10番手でブリラムテストを終えた。

「チームもとても喜んでくれました。タイムを上げたときは、監督のルーチョ(・チェッキネロ)さんはガッツポーズをしてくれたし、チームメイトのカルのスタッフも祝福してくれました。そういったことも、自分にとっては大きなモチベーションと原動力になります。次回のカタールテストでは『開幕戦から行けるぞ!』という状態にしたいので、今回、総合トップテンで終われたのはとてもポジティブだと思います」と、中上は笑顔で3日間のテストを振り返った。

 ところで、今回のブリラムテストでは、従来のチャンピオン争い常連勢とは少し異なる顔ぶれが上位タイムを記録し、2018年シーズンの活躍を期待させる走りを見せた。

 そのひとりが、アレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)だ。

 昨シーズンにMoto2からステップアップしてきた22歳のリンスは、開幕直後に左手を骨折し、シーズン前半を棒に振ってしまった。しかし、復帰後の終盤には上位陣に迫る走りを見せ、日本GPでは5位、最終戦バレンシアGPでは4位に入って高いポテンシャルをアピールした。今年は、1月のセパンテストでも総合6番手タイム。今回も初日早々に2番手を記録し、3日間の総合では5番手で締めくくった。

「テストでは、皆がいろんなモノを試したりするので本当の実力はわからないけど、マレーシアとここで僕たちはとてもいいテストができた。一発タイムにこだわらず、いいレースペースを刻めた。トップタイムではないけれども、トップ勢に近いところで走れている」

 良好な手応えで自信を深めていることは、この言葉からも十分にうかがえる。今シーズンはトップライダーたちに食い込んで上位争いをする自信が深まってきたのかどうか、彼に訊ねてみると、「タイム上ではそう見えるかもしれないけど、それを話すのはまだ早すぎるね」と、やや照れたような笑みを浮かべた。

「マルクやホルヘたちとバトルしてタイトルを争うためには、僕はもっと勉強しなきゃ。でも、去年からかなり前進できていると思うよ」

 そしてもうひとり、今シーズンに注目しておくと面白そうな存在が、ホンダからドゥカティ勢のアルマ・プラマック・レーシングへ移籍したジャック・ミラーだ。

 2014年にMoto3クラスで最終戦までもつれ込む激しいチャンピオン争いを繰り広げたミラーは、翌2015年に19歳でMotoGPへ「飛び級」デビューを果たした。2016年のオランダGPで最高峰クラス初優勝を達成し、昨年はその高い資質を買われて鈴鹿8耐にも参戦した。

 ミラーは1月のセパンテストでも3日間を通じてトップファイブを維持し、順応性の高さを強く印象づけた。今回のブリラムテストでもリンスに次ぐ総合6番手で、ドゥカティ勢の最上位。ファクトリーのアンドレア・ドヴィツィオーゾよりも0.007秒上回るラップタイムを記録し、「MotoGPに昇格して以来、こんなに気持ちよく走れたことはなかった」と好調な手応えを述べた。

 ちなみに、ファクトリーのドヴィツィオーゾが最新スペックの2018年仕様に乗っているのに対し、ミラーのマシンは昨年にドヴィツィオーゾがチャンピオン争いを繰り広げた2017年仕様である。

 ホンダ時代を振り返り、ミラーは「この3年間でたくさんの経験を積んできた。ホンダではマルクがチャンピオンを獲っているし、ダニもずっと速さを発揮している。僕がバイクをしっかり走らせられなかっただけなんだ」と話し、プレシーズンテストですでに高い戦闘力を発揮していることに関しては「今年について語るのは、まだ時期尚早だよ」と謙虚な姿勢を見せた。

「最終戦後のバレンシアではいいテストができて、年末のヘレスは少し厳しかったけど、年が明けてからセパンとここではうまく走れている。バイクはとてもよく走っていて、ドゥカティは旋回が厳しいと言われるけど、コーナーも流れるように走れている。(次回テストと開幕戦が行なわれる)カタールでは、ドゥカティはとても速いから今からとても楽しみだよ。その勢いで、第2戦のアルゼンチンと第3戦のテキサスにも臨みたいね」

 MotoGPのチャンピオン争いはホンダやヤマハ、ドゥカティのファクトリー勢がおなじみの顔ぶれになっているが、今年はそこにフレッシュな顔ぶれが加わり、さらに刺激的な戦いが展開されていくかもしれない。

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