F1グリッドガール・フォトギャラリー@前編 1月31日にF1がグリッドガールの廃止を表明するや、性差別と職業差別の線引きを巡って大いに世間の注目を集めた。 F1のグリッドガールというのは日本のレースクイーンとは違い、各グランプリの主催者が地…

F1グリッドガール・フォトギャラリー@前編

 1月31日にF1がグリッドガールの廃止を表明するや、性差別と職業差別の線引きを巡って大いに世間の注目を集めた。

 F1のグリッドガールというのは日本のレースクイーンとは違い、各グランプリの主催者が地元のモデルを募り、スタート前の各マシンの前でプラカードを持って立ったり、観客エリアやVIP向けパドッククラブでファンサービスを行なったりして、そのグランプリやタイトルスポンサーをPRするための存在だ(対して日本のレースクイーンは各チームのスポンサーが起用し、自社PRのためにさまざまな衣装を用意する)。グランプリの華と称され、男性の多いレースの世界に華やかさを与えてくれた。

 だが、一部の性差別論者にとっては外見を売りに見世物のように彼女たちを立たせることは現代の社会倫理に反するものと映り、そんな批判を受けてF1はグリッドガールの廃止を決めた。

 個人の価値観が多様化するなかでは、どちらが正しいと一元論的に語ることはできない議題だろう。ただ、グリッドガールを務めていた女性たちは自ら望んでそこに立ち、選ばれたことに誇りを持って全世界に向けて自国のPRに貢献し、どんな炎天下であろうと風雨のなかだろうと自分たちの仕事をまっとうしてきた。

 その思いが尊いものであったことは、改めてここに記しておきたい。スーパーモデルのナオミ・キャンベルも「私はグリッドガールの存在を不快に感じたことは一度もないし、モデルの仕事と違いはない」と語っている。

 2017年、F1においてグリッドを飾った最後のグリッドガールたちの姿をここにお届けしよう。



第1戦・オーストラリアGP(アルバート・パーク・サーキット)

【第1戦】オーストラリアGP

 かつてはフォスターズやカンタス航空など地元企業がタイトルスポンサーを務めてグリッドガールのコスチュームも用意してきたが、2014年からはF1公式パートナーのロレックスがタイトルスポンサーとなり、同社のコーポレートカラーであるグリーンを基調とした1960年代風のクラシカルで落ち着いた雰囲気になった。ハットに控え目にあしらった同社のロゴとベルトのゴールドも上品さを演出している。



第2戦・中国GP(上海インターナショナル・サーキット)

【第2戦】中国GP

 2004年の初開催以来、チャイナドレスをモチーフにしたコスチュームで通してきた中国GPだが、巨大市場だけに同地でのマーケティングを希望する企業も多く、2017年はハイネケンがタイトルスポンサーとなってグリッドガールのコスチュームも担当した。同社のコーポレートカラーであるグリーンとロゴイメージをあしらったチャイナドレス風のコスチュームに、白のライダースジャケットとスニーカーを組み合わせた斬新なコーディネイト。小雨で気温12度という極寒のなかでがんばっていた。



第3戦・バーレーンGP(バーレーン・インターナショナル・サーキット)

【第3戦】バーレーンGP

 バーレーンGPは2004年の初開催からずっと国営ガルフ・エアがタイトルスポンサーを務め、同社のキャビンアテンダントが機内と同じ制服そのままにグリッドに立ってきた。中東3大エアライン(カタール航空、エミレーツ航空、エティハド航空)と比べればやや地味で古めかしい制服だが、ヒジャブのように帽子から伸びたベールは、水色であったり黄色のチェッカードフラッグ模様であったりとさまざま。航空会社だけに地元バーレーンのみならず、ヨーロッパや東南アジアの美女など他民族にわたっている。



第4戦・ロシアGP(ソチ・アウトドローム)

【第4戦】ロシアGP

 2014年の初開催時はロシア国旗の青・赤・白のミニワンピースとジャケット、2015年は一転して純白のワンピースに黒のロシア帽、2016年はそれに真っ赤なロングコートと、ロシアらしさを前面に押し出してきた。2017年は地元の石油企業ルクオイルがスポンサーとなり白と赤のドレス姿になったが、それでもどこかロシアらしさを感じさせるのは飛びきりのロシア美女ぞろいだから?



第5戦・スペインGP(カタロニア・サーキット)

【第5戦】スペインGP

 地元のサンタンデール銀行やテレフォニカなどが長くタイトルスポンサーを務めてきたスペインGPだが、ここ数年はピレリ、そして2017年はハイネケンがその座に座っている。南欧の陽気さに合わせてか、他のグランプリとはやや趣(おもむき)が違ってスポーティなグリッドガールが登場した。デニム素材のミニワンピースとバンダナでカジュアルな雰囲気ながら、ラテン系の美女だからこその着こなしでエレガントさも感じさせる。



第6戦・モナコGP(モンテカルロ市街地コース)

【第6戦】モナコGP

 モナコGPは長年にわたってタグ・ホイヤーがグリッドガールのコスチュームをしつらえ、モナコのイメージ通りの上品でエレガントなドレスを用意する。南仏と隣り合わせのモナコだけに、褐色の肌をした美女たちがグリッドに立つ。腕にはもちろん、同社の腕時計。2015年にはF1の決勝だけ”グリッドボーイ”が務めたこともあったが、不評だったようでその後は登場していない。



第7戦・カナダGP(ジル・ヴィルヌーブ・サーキット)

【第7戦】カナダGP

 カナダGPのグリッドガールは例年、地元カナダの高級アパレルブランド「ジョセフ・リブコフ」のドレスを身にまとってグリッドに立つほか、モントリオールの街で開かれるウェルカムパーティなどにも出席する。カナダのナショナルカラーである赤色を基調に、ボディラインを上品かつ美しく見せるフォルム、そして金色のイヤリングとブレスレット。プラカードにはカナダGP開催50周年を記念したパネルが加えられた。



第8戦・アゼルバイジャンGP(バクー市街地コース)

【第8戦】アゼルバイジャンGP

 2016年に始まったアゼルバイジャンGP(初年度の名称はヨーロッパGP)は、ナショナルカラーである紫色に地元の伝統的なキルティング模様を取り入れ、ネックレスとフェロニエールと呼ばれる頭飾りでアゼルバイジャンらしさをプラス。東欧とロシア、トルコ、中東の境目に位置するオリエンタルな魅力をアピールしている。



第9戦・オーストリアGP(レッドブルリンク)

【第9戦】オーストリアGP

 2014年に復活したオーストリアGPは、レッドブルが中心となって同社の所有するレッドブルリンクで開催しているが、グリッドガールはオーストリアのチロル地方の民族衣装をそのまま身にまとう。さまざまな色や模様の組み合わせでサーキットを彩り、頭につけた花の髪飾りが山に囲まれた美しい風景と相まってオーストリアらしさを演出している。



第10戦・イギリスGP(シルバーストン・サーキット)

【第10戦】イギリスGP

 1950年にF1世界選手権の第1戦目が開催された伝統の地シルバーストンでは、長きにわたってサンタンデール銀行がグリッドガールのスポンサーを務めてきた。その後、2016年はエミレーツ航空のキャビンアテンダントが務め、2017年はロレックスがタイトルスポンサーとなってオーストラリアGPと同様のコスチュームになった。シルバーストンは曇り空が多く、7月でも気温が20度を超えることは少ないために七分袖のジャケットが加えられ、さらに上品になったテイストがイギリスにぴったり。