「BNPパリバ ワールドチームカップ 車いすテニス世界国別選手権」(5月23~28日/ハードコート/有明コロシアム、有明テニスの森公園コート)の大会4日目は、9年ぶり3度目の世界一を目指す日本男子が前回大会優勝国のイギリスを2勝0敗で下…

 「BNPパリバ ワールドチームカップ 車いすテニス世界国別選手権」(5月23~28日/ハードコート/有明コロシアム、有明テニスの森公園コート)の大会4日目は、9年ぶり3度目の世界一を目指す日本男子が前回大会優勝国のイギリスを2勝0敗で下し、土曜日に開催される決勝に駒を進めた。日本女子は中国に1勝2敗、クアードの部はイギリスに0勝2敗と敗れて、それぞれ3、4位決定戦に回る。

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 日本男子は、シングルス2の眞田卓(フリー)が予選リーグから世界ランク9位の実力を発揮して対戦相手を圧倒。イギリス戦でも相手の2番手、マーク・マッキャロルから6-4、6-1とストレート勝ちを収めた。

 眞田は、マッキャロルの大柄な体格を生かしたパワーのあるショットと打ち合い、鋭いラリーの応酬を見せた。第1セット、第7ゲームをブレークされ、リードを許すも集中力のスイッチを入れる。「深いコースを狙って、落ち着いてプレーできた」と試合後に眞田は語る。

 日本が先に1勝を挙げて迎えたシングルス1対決。国枝の相手は18歳のアルフィー・ヒューウェット。国枝が「近い将来、世界1位になりうる相手」と評する逸材との対戦だ。

 国枝はファーストセットこそ6-3でものにするも、第2セットは4-6でヒューウェットに挽回され、今大会初のセットダウンを許す。ワールドチームカップが右肘の手術から実戦復帰となる国枝のプレーはミスも多く見受けられ、彼自身「まだすっきりしない感覚」と歯切れも悪かった。

アルフィー・ヒューウェット

 ただ、世界のトップを走り続けてきた国枝の強さは、ここからだった。ファイナルセットに入ると、ボールを打つときの身体の重心を“やや前傾”に修正。これが功を奏した。「重心を前に意識したら、すべてのボールの対応がよくなった。おのずと車いすも動いたので、手応えが出てきた」と国枝。日本のエースが苦しみながらも最終セットを6-1で奪い、決勝進出を決めるチーム2勝目を挙げた。

 決勝の相手は、予想通り世界ランク1位のステファン・ウッデがいるフランス。ウッデとの対戦について国枝は、「今の自分がどれだけできるのかという期待と不安もあるし、僕が休んでいた間(今年2月以降)、多くの大会に勝ちまくっていたようなので、どれほど彼の腕が上がっているか楽しみ」と試合への期待を口にする。男子決勝は28日(土)に行われる。

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 日本女子は今大会も悲願だった初優勝に手が届かず、準決勝・中国に1勝2敗と敗れた。車いすテニスのツアーにあまり参加してこない中国選手との対戦回数、情報量の少なさも危惧していたが、それが結果となって表れてしまった。

 シングルス2の堂森佳南子(ケイアイスター不動産)は、中国のファン・フイミンに2-6、2-6に敗れ、続くシングルス1は上地結衣(エイベックス)がジュ・ジェンジェンに6-3、6-2と勝利。決勝進出をかけたダブルスでは、ファン/ジュ組に試合をうまくコントロールされて1-6、1-6と完敗を喫した。

 試合後に上地は「(私自身は過去の国別選手権で)オランダ以外の国に負けたことがなかったのでショック。オランダに勝って優勝することが目標だったので残念。自分の責任を果たすことができなかった」と無念さを口にした。日本の女子チームは3、4位決定戦にまわってロシアと対戦する。

上地結衣

 昨日、強豪・アメリカを撃破して準決勝進出を決めた日本のクアードチームは、イギリスに敗れて決勝進出を果たせなかった。

 今大会シングルス2で全勝していた川野将太(シーズアスリート)は、世界ランク7位のジェイミー・バードキンに第1セットを1-6で終わると、第2セットも1-4から5-4まで追い上げる場面をつくったが、最後はタイブレークを4-7で奪われて初戦を落とす。

 日本のエース・諸石光照(フリー)はアンディ・ラプソーン(4位)を相手に最初のセットを6-4で奪ってみせたが、その後は1-6、4-6と力及ばず決勝に駒を進めることはできなかった。川野は、「今日の試合で単複合わせて7試合目で、かなり疲労も感じていた。沈んだ気持ちで試合に臨んでしまったことも敗因」と悔しさを滲ませて語った。

川野将太

 開催国枠で出場している日本のジュニアは7、8位決定戦で世界大会“初白星”を挙げた。

 シングルス2の清水克起(愛媛県立しげのぶ特別支援学校)は、第1セットを落としたものの、そこからラケットも振り切れるようになり、鮮やかな逆転勝利を手にした。続くシングルス1の細井誠二郎(東京都立桐ヶ丘高校/67位)も第1セットを6-2で先取すると続くセットでは7-5のストレート勝ち。自身初のワールドチームカップ初勝利を挙げた。

 日本の勝利は決したが、その後のダブルスも行われ、船水梓緒里(麗澤高校)/高野頌吾(小郡市立三国中学校)が4-6、6-0、[10-3] で、こちらも初白星。今大会に初参戦した日本ジュニアは、全員が勝利を味わい、初めての国際大会を終えることができた。

 遠藤コーチは日本のジュニアたちについて「大会初日と今日の顔がまったく別の顔でたくましくなった。緊張感とプレッシャーの中でプレーし、そのプレッシャーをだんだん力に変えていけるようになった。最後の最後で1勝できたのは、将来の糧になる」と語った。

高野頌吾(左)/船水梓緒里

【試合方法】

 車いすテニス世界国別選手権は、各カテゴリーで予選リーグを戦い、その後、順位決定トーナメントを実施して順位を確定。シングルス2本、ダブルス1本を戦い、2勝以上したチームに1ポイントが与えられ、獲得ポイント数で順位を決定する。  試合方式は、シングルス2→シングルス1→ダブルスの順に行う。また、男子(1、2部)と女子のリーグ戦は、それぞれ3ヵ国ずつの4リーグ。クアード、ジュニアは4ヵ国ずつの2リーグに分かれて試合を行う。

(テニスマガジン/ライター◎酒井朋子)