WEEKLY TOUR REPORT米ツアー・トピックス ウェイストマネジメント・フェニックスオープン(2月1日~4日/アリゾナ州、TPCスコッツデール)は、大会3連覇がかかっていた松山英樹が、左手の親指付け根付近を痛めて第2ラウンドの…

WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 ウェイストマネジメント・フェニックスオープン(2月1日~4日/アリゾナ州、TPCスコッツデール)は、大会3連覇がかかっていた松山英樹が、左手の親指付け根付近を痛めて第2ラウンドの前に棄権。大会序盤で、非常に残念なアクシデントに見舞われた。

 松山が不在となったあとは、一昨年の大会で松山にプレーオフで敗れたリッキー・ファウラー(アメリカ)が優勝争いをリードした。2日目にトップタイに浮上し、3日目を終えて単独首位に立つと、いよいよ一昨年の雪辱なるか、という期待が膨らんだ。が――。

 ファウラーは最終日に失速。代わって、この日のベストスコア「64」をマークしたゲーリー・ウッドランド(アメリカ)が浮上し、最後はチェズ・リービー(アメリカ)とのプレーオフを制して、ツアー3勝目を飾った。



最終日に崩れて優勝を逃したリッキー・ファウラー

 ファン注目のファウラーは、「一昨年はヒデキに負けたが、このコースは僕に合っている。必ず勝てる」と優勝への自信がみなぎらせていたが、最終日は前日までの好調さが嘘のようにプレーの精彩を欠いた。最終的には「73」とスコアを落として、11位タイに終わっている。

「いいパットを打っても、ラインが違ったりして、まるでカップが動いているかのようで、ボールは(カップに)沈んでくれなかった……」

 試合後、ファウラーはそう言ってがっくりと肩を落とした。

 3日目はバックナインで猛チャージをかけて、上がりで3連続バーディーを記録。2位に1打差をつけて、首位の座をキープした。それが、最終日はまるで逆の展開となる。

 終盤の15番パー5でティーショットを池に入れてボギーを叩くと、続く16番パー3では2m半のパーパットを逃してボギー。さらに、距離の短い17番パー4で再びティーショットを池に打ち込んで3連続ボギーとし、優勝争いから脱落するとともに、一気に順位を落とした。

「悪いスイングも、悪いショットもなかったのに……。アンラッキーな部分があった。やること、すべてが裏目に出てしまった」(ファウラー)

 PGAツアーにおいて、ファウラーが最終日を首位(タイも含む)で迎えたのは、今回で6回目。そのうち、勝利を収めたのは、2017年ホンダクラシックの1回だけだ。

 つまり、ツアー通算4勝のうち、3度は逆転優勝。メジャーもトップ5には7回入ったことがあるが、いまだ勝利はない。その結果、今や「ファウラーはプレッシャーに弱いのでは?」と、論調が大勢を占めている。

 ただ実際のところ、昨年のPGAツアーでも、54ホールを終えて首位に立った選手が勝利したのは、わずか27%である。最終日をトップで迎えて、そのまま優勝を飾るのは、それだけ難しいということ。プレッシャーを抱えて勝つことは、誰にとっても容易なことではないのだ。

 一昨年、松山にプレーオフで負けたとき、ファウラーは涙を流していた。観戦に訪れていた祖父の前で何としても勝ちたかったのだが、それを惜しくも果たせなかったからだ。悔し涙を流したあと、「ヒデキ、またやろうな」と松山に声をかけてコースを去っていったファウラーの姿は今でも忘れられない。

 ファウラーの祖父は日系人の田中豊さん。その祖父は、今年も元気な姿でコースを歩いてファウラーの雄姿を見守っていた。ゆえに、ファウラーの士気は今回も高かったが、実は今年はもうひとつ、ファウラーには勝ちたい理由があった。

 それは、グリフィンくんという小さな男の子の存在だ。大会中の4日間、ファウラーとキャディーの帽子には彼の写真が貼り付けられていた。

 グリフィンくんというのは地元フェニックスに住む少年で、ファウラーの大ファン。毎年オレンジ色のシャツに身を包んで、ファウラーの応援にかけつけていた。

 そんな彼とファウラーが出会ったのは5年前。以来、「僕のナンバー1のファンだ」というファウラーと、グリフィンくんとの交流は毎年続いていた。

 しかし、生まれつき気道疾患を抱えていたグリフィンくん。何度も手術を受けていたが、完治することはなく、ついに今年の大会直前に帰らぬ人となってしまった。

「グリフィン、君は永遠に僕たちのチームの一員だ」

 そうメッセージを寄せた写真を身につけて、今大会を懸命に戦ったファウラー。勝利には届かなかったけれども、グリフィンくんはきっと、ファウラーの戦いを天国から見つめていたことだろう。

「最終日をどう戦うかは、僕にとっては大きな課題。でも、その答えなんて、そう簡単には見つからない。とにかく(勝利への)ドアを叩き続けるしかない」

 松山と同様、メジャー勝利に最も近い選手に挙げられるファウラー。誰かのために「勝ちたい」と強く願って戦う彼の思いが届く日は、必ず来るはずだ。

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