今年もMoto2クラスに参戦する長島哲太 2月6日から8日までの3日間、Moto2/Moto3クラスのプレシーズンテストがスペインのバレンシア・サーキットで行なわれた。 3日間通して気温はひとケタ台と低く、しかも初日は雨でほとんど走行で…



今年もMoto2クラスに参戦する長島哲太

 2月6日から8日までの3日間、Moto2/Moto3クラスのプレシーズンテストがスペインのバレンシア・サーキットで行なわれた。

 3日間通して気温はひとケタ台と低く、しかも初日は雨でほとんど走行できなかったためにけっして理想的なコンディションではなかったが、若い年齢層の選手が多いカテゴリーだけに、各チームはこの厳しい状況のなかでも精力的にテストメニューを消化していった。

 2018年のMoto2クラスは、今季からIDEMITSU Honda Team Asiaに移籍した長島哲太(ながしま・てつた/25歳)が唯一の日本人選手となる。初めてフル参戦に挑んだ2014年は第12戦・イギリスGPで転倒に巻き込まれて負傷し、以後のシーズンを棒に振る結果になった。

 その後、FIM CEVレプソルインターナショナル選手権参戦を経て再度世界へ挑戦した昨年は、マシン面等で不利な状況ながらも善戦し、シーズン終盤のマレーシアでは10位フィニッシュも果たした。

「今年は、すごく体制が整っているチームに移籍できました。テスト初日はシェイクダウンで車体も新品だし、自分にとって新しいパーツもいろいろと試しました。新しいパーツで走り始めること自体が、僕にとっては初めての経験です」と笑顔を見せる。



Moto3クラスで4年目となる鈴木竜生

「去年はとにかく、『翌年につなげなきゃ』ということで精一杯でした。3年ぶりの世界選手権で雰囲気に呑まれないように心がけながらも、いろんな意味でバタバタしましたが、一戦一戦全力で走りきったシーズンでした。

 去年はベストが10位だったので、今年は常にトップテンに入り、表彰台にも上がることを目指していきます。それができるだけのチームにいると思うので、最低限でもこの目標はクリアしていくつもりです」

 Moto3クラスには、4名の日本人選手が参戦する。そのなかで、20歳の日本人最年長として4年目のシーズンを迎えるのが鈴木竜生(すずき・たつき/SIC58 Squadra Corse)だ。Moto3最初の2年はインドメーカーのマヒンドラ製マシンで戦い、昨年からホンダ陣営の現チームへ移籍した。



昨年の最終戦でルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得した佐々木歩夢

「さすがにもう4年目なので、表彰台には立たなければならないと思っています」

 毎レース大混戦の激闘が続くこのクラスで、昨年は何度も上位陣に食い込んで存在感を一気に高めた反面、あともう少しのところで転倒してチャンスをフイにすることもたびたびだった。

「去年1年を経験したことでだいぶ自信もついたので、もう焦って無理をして転ぶこともないと思います。Moto3は誰が来るか予想がつかないクラスなので、開幕戦から皆を驚かせるような位置で走りたいですね。そして、それが自分の当たり前の位置になるように、1年間を戦っていきたいと思います」

 鈴木同様に、昨年おおいに注目を集めた17歳の佐々木歩夢(ささき・あゆむ/Petronas Sprinta Racing)は、最終戦でルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得したが、当人としてはけっして満足できない1年だった、と去年の戦いを振り返る。

「ルーキー・オブ・ザ・イヤーはチームにとってはよかったけど、自分の走りという意味では、今までのバイク人生で一番悔しい年でした。今年は2年目のシーズンで、自分もチームもすでにお互いを理解しているので、去年よりもいい感じでテストに入ることができています。



昨年のルーキーシーズンは苦しんだ鳥羽海渡

 今年は、心の中ではもちろんチャンピオンを目指しているけど、まず第一歩として一戦一戦に集中しながら、できれば開幕戦のカタールからでもさっそく表彰台に乗れるように、バイクのセッティングと自分自身を仕上げていきます」

 一方、佐々木と同様にルーキーシーズンを戦いながら、2017年は世界選手権の厳しい洗礼を受ける格好になったのが鳥羽海渡(とば・かいと/Honda Team Asia)だ。

 第2戦のアルゼンチンでいきなり10位に入賞して高い資質を披露したが、以後のレースでは苦戦してポイント圏内に届かない結果が続いた。ライディングにも迷いが生じて精神的に沈みがちになることも多かったが、今年は心機一転、強い意気込みで表情も明るくバレンシアテストを迎えた。

「自分では(表情の変化に)あまり意識をしていないんですが、今年はとにかく前向きに行こうと思っています。去年はデビューイヤーだったので苦労したこともたくさんありましたが、とにかくもう、いろいろと学びすぎるくらい学びました」

 そう言いながら、相好を崩した。

「精神面でいつも強さを保たなければならないということもそうだし、バイクの乗り方やメカニックたちとのコミュニケーションについても、たくさん学びました。2018年は一戦ずつしっかりと走りぬいて、毎戦トップテンには入りたいですね。今年は一輝も来たから、負けていられません」



Moto3に初参戦する真崎一輝

 鳥羽がそう話す真崎一輝(まさき・かずき/RBA BOE Skull Rider Team)は、年が明けてから急転直下でフル参戦が決定した。佐々木や鳥羽とは同年齢の2000年生まれ。ともに切磋琢磨してきた彼らがMoto3クラスに昇格した後もRedBull MotoGPルーキーズカップを戦い、2017年のチャンピオンを獲得した。

 昨年の最終戦バレンシアGPにワイルドカード参戦した際には、上記のフル参戦3名よりも高い成績の10位に入賞する活躍を見せた。しかし、2018年のホンダ勢のシートはすでに埋まっていたため、FIM CEVレプソルインターナショナル選手権を戦いながらMoto3クラスに数戦スポット参戦する予定だった。ところが、KTM勢の現チームで参戦予定だった選手が急遽引退することになり、チャンスが巡ってきた。

「ホンダではなくKTMなのでずっと悩んで決められなかったんですが、正月におみくじをひいたら大吉だったので、『これはもう行くしかない!』と決断しました。去年の最終戦が10位だったので、今年は毎戦できる限り10位以内を狙いたいし、表彰台も目指したいです。

 アジアタレントカップからずっと一緒に走ってきた歩夢や海渡が去年苦戦しているのを見ているので、Moto3クラスが厳しいことはもちろんわかっています。それでも、目指すべきところはしっかり目指したいし、日本人選手に勝つだけではなくて、ヨーロッパの選手たちも含めて、誰よりも前に行く気持ちでがんばります」

 過去の歴史を見ても、ライバルに恵まれる世代は、ともに切磋琢磨しながら名勝負を展開し、高い成績を収めてきた。2018年はMoto3を戦う若い日本人ライダーたちにとって、果たしてその端緒のシーズンとなるだろうか。