2月2~4日に、岩手・盛岡タカヤアリーナで開催された男子テニス国別対抗戦デビスカップ(以下デ杯)・ワールドグループ(以下WG)1回戦で、日本(ITF国別ランキング16位)は、1勝3敗でイタリア(9位)に敗れて、2014年以来のWGベス…

 2月2~4日に、岩手・盛岡タカヤアリーナで開催された男子テニス国別対抗戦デビスカップ(以下デ杯)・ワールドグループ(以下WG)1回戦で、日本(ITF国別ランキング16位)は、1勝3敗でイタリア(9位)に敗れて、2014年以来のWGベスト8進出はならなかった。



日本代表チーム。左からマクラクラン勉、内山靖崇、添田豪、ダニエル太郎、杉田祐一、岩渕聡監督

「本当に悔しさはすごくありますけど、ネガティブな考えになることは何もないというか、かなり得るものが多かった対戦になった。各選手、課題ももちろん見つかっただろうけど、得た自信もかなり多かったと思います」

 このように岩渕聡デ杯日本代表監督が振り返ったように、日本は負けたものの、ようやくWGに属する国らしいプレーができた大会であったといえる。

 2012年以降、日本は2013年に一度、アジア・オセアニアゾーンIに降格しただけで、今季は6回目のWGでの戦いになったが、つい2~3年前のWGでは錦織圭(ATPランキング27位、1月29日付け、以下同)だけしか勝利を見込めなかった。

 だが、今回のイタリア戦では、杉田祐一(41位)がWGの試合で初めて、エースにあたる”シングルス1”の重責を任され、ここ約半年の間にATPツアーで急成長した実力を遺憾なく発揮してみせた。

 イタリア戦の初日には、シングルス2のアンドレアス・セッピ(78位)を、4-6、6-2、6-4、4-6、7-6(1)で破った。セッピにも1回マッチポイントを握られたが、3時間28分の接戦の末、杉田はWGでのシングルス初勝利を手にした。

 3日目のエース対決では、経験に優るファビオ・フォニーニ(22位)に対して、杉田は2回のマッチポイントを取り切れず、6-3、1-6、6-3、6-7(6)、5-7で、4時間8分の激戦の末に敗れた。

「最後、サーブの修正ができず、サービスキープがうまくいかなった」と振り返った杉田だったが、全体的に2試合ともよく足が動いていて、ボールへの反応もよく、高い集中力でテニスができていた。それは日本のエースにふさわしいプレーだった。

「どの試合も絶対ギリギリになると思っていたので、本当に悔しい結果です。けれども、充実感はありますね。こういう戦いが今まではできていなかったので。この舞台でできたことは、本当に僕ひとりの力だけでないのは間違いない。みなさん(日本チーム)が支えてくれて、最後までいいプレーができた。また、みんなで(ツアーでの)個人戦も頑張っていきたい」

 これまで錦織頼みであったWGでのシングルス戦で、杉田が結果を残したことは、今後の日本代表の戦い方に光明をもたらした。

 また、ダブルスではマクラクラン勉(ATPダブルスランキング以下D、36位)/内山靖崇(D122位)組が、WGでのトップダブルスチームと互角に戦えたことも日本にとっては意義深い。

 日本は長年ダブルスが弱点と指摘され、1981年以降の世界16カ国で構成される現行のWGでのダブルスでは、2014年のカナダとの1回戦で、錦織/内山組が1勝を挙げているのみで、大きな課題となっていた。

 イタリア戦2日目に、マクラクラン/内山組は、フォニーニ(D87位)/シモネ・ボレリ(D168
位)組と対戦し、5-7、7-6(4)、(3)6-7、5-7で敗れた。3時間37分におよぶハイレベルな試合だったが、セット終盤のゲームで、プレーの精度に差が出た。

 だが、フォニーニ/ボレリ組は、2015年の全豪オープン男子ダブルスの優勝ペアでもあり、そんな強豪と大接戦を戦えたことは、日本ペアにとって大収穫であり、長年の問題がようやく改善されつつあることを示した。岩渕監督もたしかな手ごたえを感じたと言う。

「勉が入って、ダブルス固定の選手ができました。本当に初めてと言っていいと思うんですけど、このレベル(WG)のダブルスで、本当の意味で勝負できるというか、勝ちにいけた試合だった。

(大事な)局面でのポイントの取り方や落とし方は、この経験を踏んだことで、次に同じ場面になった時、今回のことが活かされると思う。このレベルで”勝ちにいく”ダブルスの初戦としては、よくやってくれたという印象ですし、日本チームにとって今後さらに期待できるペアだと思っています」

 一方、右手首のケガから復帰し、デ杯と同じ週に行なわれたATPチャレンジャー・ダラス大会で優勝した錦織が、今後、日本代表へ合流することはなかなか難しいのではないだろうか。28歳になり、右手首の回復具合や年齢による体力回復スピードの衰えを踏まえると、ツアーでの個人戦と代表戦の両立は簡単ではなくなる。

 また、自身のキャリア後半に入っている錦織がグランドスラム初制覇のために、個人戦を優先させたいと言っても何ら不思議ではない。岩渕監督も状況を理解し、まずは錦織がベストコンディションに戻ることを願っている。

「もしかしたら100%というのは、選手をやっている限りないかもしれないですけども、(錦織が)なるべく100%に近づいた状態で、プレーできるようになるといい。

 協会としてもできる限りのサポートをしたいですし、そのうえで代表戦もタイミングが合って、彼にとってプラスになり、チームにとっていい方向でいくようであれば、招集をかけて一緒にプレーしたい。まずは、個人戦でランキングを元に戻すことが優先になるかなと思います」

 日本はWG残留をかけて、9月にプレーオフ(入れ替え戦)を戦うことになる。

 そこで、左ひざの手術からカムバックした西岡良仁(170位)が代表に復帰すれば、シングルスは杉田との2枚看板で臨めることになり、たとえ錦織がいなくても、単複で勝利を計算することができる。

「(日本代表の)レベルが高くなって、層が厚くなる。そういう流れが来ていることは感じている」

 イタリアに負けはしたものの、”岩渕ジャパン”は自信をさらに深めて、たしかに前進をしている。