金曜夜に行われた「全豪オープン」準決勝で、昨年覇者のロジャー・フェデラー(スイス)がチョン・ヒョン(韓国)に対して第2セット6-1、5-2とリードしたところでチョンが棄権し、フェデラーは20個目となる4大大会シングルスのタイトル獲得まであと…

金曜夜に行われた「全豪オープン」準決勝で、昨年覇者のロジャー・フェデラー(スイス)がチョン・ヒョン(韓国)に対して第2セット6-1、5-2とリードしたところでチョンが棄権し、フェデラーは20個目となる4大大会シングルスのタイトル獲得まであと1勝と迫った。

チョンとの試合に臨んだ時、フェデラーはメルボルン・パークにおける準決勝の戦績が13戦6勝と、勝率5割を切っていた。

ロッド・レーバー・アリーナの閉じられた屋根のもと、1時間2分後に、フェデラーの戦績は7勝7敗となった (それでも他の4大大会の数字は下回っている。「ウィンブルドン」は11勝1敗、「全米オープン」は7勝3敗、「全仏オープン」は5勝2敗)。

フェデラーは、こんな形での決勝進出を予想していたわけではない。

「できれば早く試合を終わらせたいとは思う。体にダメージが及ぶから」とフェデラーは言った。「"これ以上のことはない"とは思わない」

「だからこの勝利はほろ苦い。決勝に行けるのは嬉しいが、こんな形は望んでいなかった」

チョンは左足の傷の痛みを隠すためにあらゆる手を尽くした。チョンのエージェントはこう説明する。「マメの下にマメができて、そのまた下にマメができていた」

フェデラーはチョンの気持ちを知っている。また、チョンの動きがどこかおかしいことにも気づいていた。

「僕もマメをこらえてプレーしたことは何度もあるし、猛烈に痛い。痛みが限界を超えると、それ以上我慢できなくなる。プレーを続けることができなくなる」とフェデラーは言う。「彼は素晴らしい大会を戦った。今日もまたあれほど懸命に戦ったことを称えよう」

「全豪オープン」決勝におけるフェデラーの勝率は、遙かに高い。負けを喫したのはラファエル・ナダル(スペイン)と戦った2009年の決勝のみだ。

つまりフェデラーは、日曜日に行われる第6シードのマリン・チリッチ(クロアチア)との試合に落ち着いて臨めることになる。チリッチはフェデラーより1日余分に休息を取っているものの、フェデラーは金曜夜にそれほど体力を消耗しなかった上、試合時間はわずか1時間だった。

決勝はフェデラーにとって「全豪オープン」最多記録となる7度目で、グランドスラム全体では30回目となる。

チリッチは昨年の「ウィンブルドン」決勝でフェデラーに敗れた際にマメに悩まされたが、今大会の自身のハーフのドローでは、ナダルの怪我による途中棄権での準々決勝の勝利も含め、比較的楽に勝ち進んできた。

チョンの体調がもし万全だったとしても、初となるATPツアー決勝に到達するには、95個のタイトルを保持し、そのうち19個はグランドスラムのタイトルというフェデラーを倒さねばならなかった。

チョンはメルボルン・パークで快進撃を見せた。3回戦で第4シードのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)を、4回戦では「全豪オープン」6度優勝のノバク・ジョコビッチ(セルビア)を破って注目を集め、テニスのメジャー大会で準決勝に進出する初めての韓国選手となった。

しかし、体には負担がかかった。試合前に痛み止めの注射を打ち、第2セットでブレークされた後にはメディカルタイムアウトを取って左足のテーピングをやり直さねばならなかった。そしてそのわずか2ゲーム後に棄権を申し出た。

「正しい決断だった。コートで情けないプレーをするのはファンに対しても観客に対しても失礼だ。ものすごく痛い。もう歩けない」とチョンは語った。

36歳のフェデラーは、15歳年下のチョンの明るい未来を予測した。チョンもまた、今回の経験によって、今後は4大大会の過酷な5セットマッチに向けてより良い準備を整えられるはずと確信している。

「間違いない。この2週間、本当にいいプレーをした。ベスト16になって、準々決勝、準決勝に進出した。サーシャ(ズベレフ)、 ノバク、ロジャーと対戦した。今後はますますいいプレーができるだろう」とチョンは語る。

フェデラーはこの勝利により、いわゆるビッグ4-ナダル、ジョコビッチ、アンディ・マレー(イギリス)-のうちの1人が決勝に臨むという、2005年以来の伝統を維持した。ちなみに決勝戦がビッグ4同士の対戦にならなかったのは、2008年以降ではスタン・ワウリンカ(スイス)とナダルの対戦となった2014年のみだ。

世界ランク1位のナダルは準々決勝でチリッチに敗れ、ジョコビッチはチョンに屈し、「全豪オープン」5回準優勝のマレーは臀部の怪我のために欠場して、オーストラリアにおけるビッグ4の名声の維持はフェデラーに委ねられた。

11月に「ネクスト・ジェネレーション・ATPファイナルズ」で優勝した世界ランク58位のチョンに対する勝利は、相手の体調不良による途中棄権によるものとはいえ、誰も失望させなかった。(C)AP(テニスデイリー編集部)※写真は準決勝後に行われた記者会見でのフェデラー

(AP Photo/Vincent Thian)