世界ランク1位のシモナ・ハレプ(ルーマニア)と2位のカロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)による女子シングルス決勝は、ランキング1位の座とグランドスラム初優勝を懸けた戦いだった。この試合の勝者が来週月曜に更新されるランキングで1位になるこ…

世界ランク1位のシモナ・ハレプ(ルーマニア)と2位のカロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)による女子シングルス決勝は、ランキング1位の座とグランドスラム初優勝を懸けた戦いだった。

この試合の勝者が来週月曜に更新されるランキングで1位になることが確定していた。また、両者とも四大大会の決勝は3度目。ウォズニアッキは09年と14年の「全米オープン」で決勝に進出し、いずれも敗れていた。ハレプは14年と17年の「全仏オープン」で栄冠まであと1勝としたが、準優勝に終わっていた。今度こそは、の執念がぶつかり合う、2時間49分の死闘となった。

スタートダッシュに成功したのはウォズニアッキだった。タイブレークまでもつれた第1セットのストロークのアンフォーストエラーはわずか6本。ファーストサーブは確率72%、ポイント獲得率81%という堂々たるスタッツが、安定したゲーム運びを示している。効果的なファーストサーブと、そこからの的確な攻めで、ウォズニアッキがリズムに乗った。

一方のハレプもサービスゲームが素晴らしかった。両者とも、このセットは6度ずつあったサービスゲームで一度しかブレークを許さなかった。女子でもサーブで優位に立つことはゲームを進める上で重要だ。サーブ側は優位を生かして積極的に攻撃する。リターン側はそれをなんとかしのぎ、チャンスがあれば、果敢に挑む。基本戦術のお手本のような、二人の攻防だった。この決勝が素晴らしい試合になった要因の一つが、そこにあった。

第2セットのウォズニアッキは、43%とファーストサーブの確率が落ちたのが痛かった。一方、ハレプのサービスゲームは安定しており、それが6-3のスコアにつながった。

この夜のメルボルンは蒸し暑く、ナイトセッションにもかかわらず、「全豪オープン」独自の酷暑ルール「ヒートポリシー」が適用されるほどだった。10分間の休憩がとられたのち開始された最終セットは、ともに体力を削り合う戦いになった。

ハレプは右足を痛めており、それでなくてもギリギリの戦いを強いられていた。ウォズニアッキもこのセット途中に左足の治療を受けた。サービスゲームのブレークが相次ぎ、両者のスタッツは大きく落ち込んだ。ゲームはプレーの内容を競う戦いから、神経戦、消耗戦に様相を変える。しかし、ハレプの動きが目に見えて落ち、栄冠はウォズニアッキのものとなった。

「ずっと夢見ていました。声が震えています。今にも泣きそうです」。

ウォズニアッキが高ぶる気持ちをそのまま言葉にした。そのスピーチで彼女がハレプに向けて「ごめんなさい。でも、今日の私は勝たなくてはならなかった」と話すと、観客席からどよめきが起きた。勝ちたかったのはハレプも同じだろう。しかし、ここで「勝たなくてはならなかった」と言えるのが、ウォズニアッキのどん欲さ、気持ちの強さだ。

敗れたハレプは記者会見で「第1セットが終わったときにはエネルギーもパワーも残っていなかった。でも、全部のボールを返そうと(自分に)言い、第2セットを取ることができた」と振り返った。

この、二人の精神力、勝利を求める一途さが、試合を感動的なものにした要因である。この戦いにインスパイアされたのか、試合直後からセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)やジョハナ・コンタ(イギリス)ら数多くの女子選手がSNSで優勝を争った二人を称えた。

戦術、技術というスキル、気迫、執念といったメンタル面、どちらが欠けても、この高揚感は残らなかったはずだ。頂上決戦の名にふさわしい激闘であり、女子テニスの一つの指標、教科書となるようなゲームだった。(秋山英宏)※写真はセレモニーでのウォズニアッキ(左)とハレプ(右)

(Photo by Scott Barbour/Getty Images)