フランス・パリで開催されている全仏オープン(5月22日〜6月5日)は大会2日目。 前日に続いて降雨のためにスケジュールは乱れ、約2時間遅れのスタートとなった。またいつ降り出すかわからない曇天の下、底冷えのするロラン・ギャロ…

 フランス・パリで開催されている全仏オープン(5月22日〜6月5日)は大会2日目。

 前日に続いて降雨のためにスケジュールは乱れ、約2時間遅れのスタートとなった。またいつ降り出すかわからない曇天の下、底冷えのするロラン・ギャロスだったが、日本勢の活躍がどんよりムードを吹き飛ばしてくれた。

 まずは全仏初出場の18歳、大坂なおみが第32シードのエレナ・オスタペンコ(ラトビア)を6-4 7-5で破り、連続2年目出場のダニエル太郎(エイブル)がマルティン・クーリザン(スロバキア)に逆転勝ち。最後はクーリザンが上腕の痛みで途中棄権したが、グランドスラム初勝利を手にした。そして前日に2セットアップの2-1で中断になっていた錦織圭(日清食品)とシモーネ・ボレッリ(イタリア)の試合は、錦織が6-3で締めくくった。

日比野菜緒

 しかし日比野菜緒(フリー)は第6シードのシモナ・ハレプ(ルーマニア)に2-6 0-6で完敗。土居美咲(ミキハウス)とサマンサ・ストーサー(オーストラリア)の試合は2-6 3-1で日没となり、奈良くるみ(安藤証券)とデニサ・アレルトワ(チェコ)の試合は火曜日に完全順延となった。

土居美咲

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 大坂とダニエル、日本が大きな期待を寄せる男女それぞれのハーフ選手が全仏オープン初勝利を挙げた。

 大坂は全仏オープン初出場。相手は同い年ながらすでに第32シードがついているオスタペンコだ。大坂の負けん気が出て当然だろう。しかしクレーは得意のサーフェスとはいえない。大坂の武器であるサービスやフォアハンドの威力は半減するし、クレーでのフットワークは習得に長い時間を要する。クレー育ちでなければ、プロサーキットを戦い始めたばかりの若手はまず壁にぶつかるものだ。クレーの経験は「厳密に言えば今年が初めて」と言う大坂も例外ではなかったが、徐々に勝ち星を増やしてきた。

 「ハードコートとは全然違う」と言うが、得意のハードコートと同じようにエースやウィナーを次々と決めた。特に印象的だったのは第2セット、それぞれ1ブレークで迎えた第7ゲーム。オスタペンコのサービスゲームは40-0だったが、そこから4ポイント連続でフォアハンドのリターンエースを叩き込んだ。これでブレークに成功し、すぐにブレークバックを許したものの最後までアグレッシブなプレーはブレず、第11ゲームで2本のダブルフォールトをもらってブレークすると、次のサービスゲームを最後はトレードマークのサービスエースで締めくくった。

大坂なおみ

 その点、ダニエルはスペインのクレー育ちだ。その生い立ちにふさわしい粘り強さを見せた。クーリザンはクレーで2回優勝経験のある26歳で、今年はハードコートのロッテルダムも制している。最初の2セットを3-6 4-6で失い、第3セットも第3ゲームで先にブレークを許していたが、すぐにブレークバック。第10ゲームで一度セットポイントを逃したが、第12ゲームをブレークしてセットを奪うと、第4セットも先にブレークされながら追いつき、逆転した。 

 これでクーリザンの気力にも影響を与えたことは明らか。最終セットをダニエルが3-0としたところでクーリザンが棄権した。

 「自分で締めくくったわけではないので、ワーッていう感じのうれしさはなかった」 記念すべきグランドスラム初勝利としてはやや残念な状況だったが、ダニエルがそれを残念がる素振りはなく、それがクレーの全仏オープンだったことにも大げさな感慨は示さなかった。

 「これ(初勝利)が全豪オープンのときでもおかしくなかった」 ルーカシュ・ロソル(チェコ)にフルセットで敗れた試合のことだ。惜敗のたびに「こういう経験を繰り返していれば、いつか勝てる」という確信を強くしてきた。だからこの初勝利も淡々と受け入れられるのだろう。  次の2回戦の相手は、そのロソルにセット2-1と追い込まれながらなんとか逆転勝ちしたディフェンディング・チャンピオンのスタン・ワウリンカ(スイス)。ダニエルにとってトップ5との対戦は3月のデビスカップでのアンディ・マレー(イギリス)に続いて2度目。「あれよりはいい試合をしたい」と控えめな抱負を語った。

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 「昨日終わらせたかった」という思いは、夜を挟んで再開後には「早く終わらせたい」という焦りにつながってしまった。「相手(ボレッリ)がリセットしてくるのも嫌だった」し、コート上は強い風が吹いていて「入りはよくなかった」と錦織。いろいろな思いや状況でなかなか思い通りのプレーができなかったというが、「2、3ゲーム終わったあたりで1回考え直して、リラックスして集中力を高めることができた」のは経験の賜物か。

錦織圭

 先にピンチを迎えたのは錦織で、第7ゲームで30-30からダブルフォールトをおかしたが、ここをしのぐと次のゲームで逆にブレーク。すぐに15-40でブレークバックのピンチになったが、最後はエースで締めくくった。2日を擁したが、終わってみれば6-1 7-5 6-3。前日にコートに入ったときから30時間近くを要したが、無事に初戦突破した。

 2回戦の相手は世界ランク40位のアンドレイ・クズネツォフ(ロシア)。6年前に芝で一度対戦し、錦織は途中棄権で敗れているが、今となってはまったく参考になるデータではないだろう。

(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)