アンドレ・アガシ(アメリカ)は、185センチメートルの長身で、首と背中の負傷にも負けず、世界ランキングで8位までになったラデク・ステパネク(チェコ)を、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)に紹介した。ステパネクは30代の終わりにこれらの怪我のた…

アンドレ・アガシ(アメリカ)は、185センチメートルの長身で、首と背中の負傷にも負けず、世界ランキングで8位までになったラデク・ステパネク(チェコ)を、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)に紹介した。ステパネクは30代の終わりにこれらの怪我のために順位を下げたが、彼の闘争本能は少しもひるむことはなかった。アガシはグランドスラムの時しか同行出来ないので、彼がATPツアーに同行する補助コーチとしてジョコビッチのチームに参加することになった。

確かに、ステパネクはグランドスラムで8回優勝した記録を持つアガシとは記録で比べれば問題にならない。しかし、彼の試合中に極端に戦術を変えられる技量や何よりも彼のネット際でのボレー能力や熟練は称賛に値する。実際彼は、シングルスでは、マスターズ1000の準優勝までだが、ダブルスでは、グランドスラムで2回の優勝をしている。ジョコビッチの最後に決めるべきショットに、ネットでのステパネクの専門技術を取り入れたかったのかもしれない。なぜなら、アガシにはこの技術がないからである。

ジョコビッチは手首の負傷のために、トマーシュ・ベルディヒ(チェコ)、ドミニク・ティーム(オーストリア)、ダビド・ゴファン(ベルギー)、ニック・キリオス(オーストラリア)といった選手たちに敗れた。ジョコビッチは、2016年の「全仏オープン」の獲得以来、わずかに3つのイベントとただ1回の「ロジャーズ・カップ」のマスターズ1000の勝利しかない。

ステパネクがただちに提供できる最も価値あるものとは、現在のほとんどのエリート選手との実戦経験だ。彼は、昨年まで第一線でのプレーをしていた。そのため、エリート選手に対する攻略法にも精通している。

「私の意見と経験によれば、この世で最も優れたコーチは期待以上の成果を挙げるものだ。期待以上の成果を挙げる人は、適応し、即応し、克服する必要がある。彼らは自身の短所を抑制する一方、長所を最大化する方法を見出す。それに加えて何年もの成功を収めた強い労働倫理と、親切な精神。それがステパネクのもたらしてくれる有益なものだ」とアガシはESPN.comに語った。

アガシはコーチとしては、初めての経験だが、彼は、教育家であり興行主でもある。アガシのデビューは鮮烈で、1989年18歳で世界ランキングで3位になり、翌年、「全仏オープン」、「全米オープン」の決勝に進出した。準決勝で敗れたが、1992年に「ウィンブルドン」で、1994年に「全米オープン」で、1995年「全豪オープン」で優勝し、1996年にはアトランタ五輪で金メダルを獲得した。しかし、その後極端なスランプに陥り、多くの人から忘れられていた。当時のコーチだったブラッド・ギルバート(アメリカ)とともに、レシーブの能力をあげることによって復活した。1999年に「全仏オープン」を制し、ロッド・レーバー(オーストラリア)以来30年ぶりの5人目の生涯グランドスラマーとなり、同年の「全米オープン」、2000年、2001年、2003年「全豪オープン」で優勝し、2005年35歳で「全米オープン」の決勝に進出し、フェデラーに敗れて翌年引退している。彼のプレースタイルは、ライジングをとらえた強打にあり、早いタイミングでボールを捉えられる天賦の才能があった。復活は、これをリターン力に応用し、ビッグサーバーを攻略していった。

現在の14位からランキングを立て直そうとしているジョコビッチには、ステパネクの就任によって、常にすぐそばにコーチがいることとなる。アガシとステパネクのチームは、ジョコビッチが以前のコーチであるボリス・ベッカー(ドイツ)とともに打ち立てた記録を追うという厳しい課題に取り組まなければならない。

ジョコビッチの年齢、30歳を考えると、彼は選手生活の最後の段階に入りつつあると言ってよい。同じような状況から復活を遂げたロジャー・フェデラー(スイス)やラファエル・ナダル(スペイン)の状況を考えれば、彼の復活劇に期待したい。

この時期に、アガシとステパネクのチームとともに進めるのは、ジョコビッチは幸運を掴んだと言ってもいいのではないだろうか。(テニスデイリー編集部)

※写真はジョコビッチ(左)とステパネク(右)

(Photo by Michael Dodge/Getty Images)