テニスは対人競技だから、良いプレーをしても相手が上回れば望ましい結果は得られない。互いに相手に失敗させようとあの手この手を繰り出すのだから、どうしてもエラーは出る。そもそも人間、時には凡ミスもある。それを承知で競技に取り組む選手は、何が起き…

テニスは対人競技だから、良いプレーをしても相手が上回れば望ましい結果は得られない。互いに相手に失敗させようとあの手この手を繰り出すのだから、どうしてもエラーは出る。そもそも人間、時には凡ミスもある。

それを承知で競技に取り組む選手は、何が起きてもネガティブにならず、前を向くべきなのだが、もちろん簡単ではない。大坂なおみ(日本/日清食品)は昨年、まさにそこで苦しんだ。

しかし、選手というのは時に、信じられない速度で成長する。大坂は四大大会初の4回戦でランキング1位のシモナ・ハレプ(ルーマニア)に挑み、跳ね返された。しかし、その態度は終始、冷静でポジティブだった。

序盤から集中してゲームを進め、ストロークでもサーブでも積極的だった。しかし、先に展開したはずの大坂が、いつの間にか逆に振り回されていた。ハレプのカウンターショットがそれだけ鋭かった。

狙い澄まして打ったクロスやダウンザラインがわずかにラインを外れた。ハレプの足を警戒して、わずかに精度が狂ったのだ。

3回戦では効果的だったデュースコートのワイドのサーブが決まらない。ハレプが駆け引きしてきたからだ。ワイドを待ち構えていることを相手に知らせるために、リターンのポジションを変え、そこに打たせないようにした。読み合いを相手に支配された大坂のサービスエースは、わずか5本にとどまった。

悪いプレーではないのに、思うようにゲームが取れない。その違和感が、いつフラストレーションに移行してもおかしくなかった。しかし、大坂は持ちこたえた。徐々にミスが増え、スコアが離れても、ネガティブな姿を見せなかった。これまで2度対戦し2勝のハレプも、大坂の成長を感じたようだ。

「彼女は落ち着いて見える。これは選手にとってとても大事なこと」「彼女はポジティブだった。私がリードしているときでさえ、そうだった」と20歳のチャレンジャーを称えた。

スタンドで観戦した土橋登志久フェドカップ日本代表監督も「成長している」と褒めた。「ハレプに隙がなかったので、(終盤は)エネルギーを出そうと思っても保てない部分があったと思う。今回はあれが精一杯だと思う」。

大坂も「彼女のプレーが素晴らしかったし、私も悪くなかったと思います。なんとかいい試合になるように力を尽くしたし、ゲーム内容の進歩には満足しています。少しもネガティブになる必要はないと思っています」と振り返っている。

16年の「全米オープン」3回戦では、第3セット5-1からマディソン・キーズ(アメリカ)に逆転を許して敗れた。「追い上げられて、わけがわからなくなってしまった」と泣いた少女が今、一流選手の仲間入りを果たそうとしている。(秋山英宏)

※写真は「全豪オープン」4回戦で敗れた大坂なおみ

(Photo by Quinn Rooney/Getty Images)