大坂なおみ(日本/日清食品)の「誰も見ていないような、例えば13番コートとかでプレーするのは楽しくない」という言葉を、少し前にこのコラムで紹介した。大きなコート、つまり大きな舞台でトップクラスの選手と対戦すると、自然にアドレナリンが出て「普…

大坂なおみ(日本/日清食品)の「誰も見ていないような、例えば13番コートとかでプレーするのは楽しくない」という言葉を、少し前にこのコラムで紹介した。

大きなコート、つまり大きな舞台でトップクラスの選手と対戦すると、自然にアドレナリンが出て「普段よりいいプレー」ができるという。逆に、誰にも注目されないような舞台では、エキストラのパワーが出てこない。そんな自分の特質を「13番コートは楽しくない」と、いたずらっぽく言葉にしたのだ。

ところが、この全豪オープンでは1回戦、2回戦と、彼女にはそういう種類のコートが割り振られた。試合コートの割り振りはランキングや人気、知名度、期待値などを総合して決められる。女子ツアー期待の若手スターの大坂でも、ランキング70位前後をうろうろしていたら、なかなか大きなコートには入れてもらえないのが現実だ。

1回戦では、こぢんまりとした観客席の「10番コート」で試合を行った。人通りの多い通路に近く、落ち着かないコートである。日本からの観客を中心に満員のファンがコートを囲み、誰も見ていないような環境ではなかったが、大坂が普段以上の力を出せるコートではなかっただろう。

2回戦は第16シードのエレナ・ベスニナ(ロシア)との対戦。1回戦よりは大きな観客席を備える「7番コート」に試合が組まれたが、これもいわゆる「アウトサイドのコート」である。大坂には、ちょっとした試練が続いた格好だ。それでも、この2回戦では当然のようにシード選手を退けた。

第1セットは相手のサービスゲームをブレーク、5-3までリードしながら次のサービスを落とし、もたついた。それでも、タイブレークではギアを上げ、3-4から2本連続でエースを決めてリズムをつかんだ。「大切なポイントだったので、より集中し、いいサーブを打たなければと思い、2本のエースが取れました」。それまでは戦術優先でコース重視のサーブを打っていたが、タイブレークでは「より直感的に攻めていこう」と心に決め、ビッグサーブを炸裂させた。

「彼女が安定したプレーをする選手なので、私もまずは堅実にプレーすることを心がけた」と大坂。それでも、ここというときは、チャンスを広げるため、ピンチの芽を摘むために、ギアを1段上げた。もたついた分、100点満点はつけられないが、大会の序盤としては、十分合格点がつく内容だろう。

3回戦では、地元豪州の期待を背負う第18シード、アシュリー・バーティ(オーストラリア)に挑む。相手は地元の人気選手、しかも今後の女子ツアーを背負うべき二人の対戦とあって、ロッド・レーバー・アリーナか、マーガレット・コート・アリーナか、今度こそ大きなスタジアムコートでの対戦になりそうだ。

グランドスラムではこれまで5度、3回戦に進出している大坂だが、4回戦進出はまだなく、一つの壁になっている。「今までは3回戦に進んだことで満足してしまったところがありましたが、今はもっと勝ちたい気持ちが出てきています」

そのどん欲さを、満員のスタジアムコートが後押ししてくれるだろう。(秋山英宏)※写真は「全豪オープン」2回戦の大坂なおみ

(Photo by Darrian Traynor/Getty Images)