文:新川 諒昨年までボストン・レッドソックスの球団社長を務めていたラリー・ルキーノ氏はこれまでボルティモアのカムデン・ヤード、サンディエゴのペトコ・パークなどメジャーリーグを代表するボールパークの建設に携わってきた。ボールパークの在り方に大…

文:新川 諒

昨年までボストン・レッドソックスの球団社長を務めていたラリー・ルキーノ氏はこれまでボルティモアのカムデン・ヤード、サンディエゴのペトコ・パークなどメジャーリーグを代表するボールパークの建設に携わってきた。ボールパークの在り方に大きな影響をもたらしたルキーノ氏のキャリア、そしてボールパーク像について伺った。

まずはルキーノさんのキャリアについてお聞かせください。

まず始めに、人生の長い期間に渡り、スポーツ、そして野球に携わることが出来たことを非常に光栄に思います。私のキャリアのスタートは弁護士からで、当事は主に訴訟当事者になるための勉強を続けていて、スポーツの世界に入ることなど全く考えていませんでした。私のパートナーはとても有名な法廷弁護士で、彼が関わるスポーツの世界に私も自然と導かれようになります。

彼はNFLのワシントン・レッドスキンズのオーナーを務め、後にMLBのボルティモア・オリオールズも買収することになります。私はワシントン・レッドスキンズの法律顧問としてまずは仕事をしていましたが、彼がオリオールズの買収に成功すると、オリオールズで法律顧問の副社長に任命されることになります。6年から7年間はオリオールズ、レッドスキンズでの仕事を兼任していましたが、少しずつ野球での仕事の割合が増えていくようになりました。そして1985年からオリオールズの仕事に集中するようになり、1988年正式にオリオールズの社長に任命されます。私の野球界で築いてきたキャリアの全ては彼が機会を与えてくれたことから始まります。

社長就任後、まず関わったのはボルティモア・オリオールズのカムデン・ヤードの建設です。とても良い経験をさせてもらいました。パートナーがオリオールズを売却したことで、私のボルティモアでの時間は1995年で終わりを迎えます。ボルティモアを去ってからはサンディエゴ・パドレスで社長兼CEOとして仕事をする機会をいただきました。

すると2001年には、ジョン・ヘンリーオーナーとトム・ワーナーがボストン・レッドソックス買収に成功したことで、私は社長兼CEOとしてレッドソックスに迎え入れられます。球団を経営する者にとって、ボストン・レッドソックスで仕事が出来るのは、天国に行くような気分でした。素晴らしいマーケット、施設を誇り伝統もある球団です。CEOとして14年間レッドソックスで仕事ができたのは非常に光栄なことでした。

ルキーノさんはこれまでボルティモアのカムデン・ヤード、サンディエゴのペトコ・パークの建設、そしてボストンでのフェンウェイ・パークの改修に携わり、ボールパークとは切っても切れない関係であるかと思いますが、それぞれのコンセプトを教えていただけますでしょうか。

形体においては不規則な非正対照であり、かつ伝統的な昔風の球場を作るというのが私の思いついたアイディアでした。それを実現できたのがボルティモアのカムデン・ヤードでした。その後はサンディエゴのペトコ・パークでも同じコンセプトを下に実現することが出来ました。

そしてボストンに来てからは新球場を作るのではなく、改修工事に投資をすることにしました。我々は伝統あるフェンウェイ・パークを修復し、拡大そして次の世代に残していくために改良を加えていくことにしました。それでも最初はグリーン・モンスター(ウェンウェイ・パークのレフトに立つ巨大な緑色のフェンス)上の座席には賛否両論がありました。私だけでなく、チーム内の人間の多くがプライム・テリトリー(最良な場所)だと感じていました。スペースに余裕があり、立ち見でも行けると思い新しい形になると思いました。もちろん新しい収入源にもなると感じました。

当時ボストン市長を務めていたメニーノは最終的に増設の許可を与えてくれたのですが、レッドソックスの決断は過ちであると豪語されてしまいました。いずれはレッドソックスもそれを認めて、席を解体するために再び訪れるだろうとまで言われます。それが今となってはメジャーリーグ全体でも人気のある席の一つです。

フェンウェイ・パークの改修ではいくつかの賭けにも出ましたが、二つの球場を作った経験があったので、我々は初心者ではなかった。その後もレッドソックスがスプリング・トレーニングでも利用するジェットブルー・パークをキャンプ地のフォート・マイヤーズ(フロリダ州)に建設し、合計4つの球場に関わります。次はトリプルA(ロードアイランド州・ポータケット)の新球場に関わり、5つ目のボールパークを実現したいと思います。

魅力的なボールパークを作っていくためには、何を心がけていくことが大切でしょうか?

第一にファンを大切にするべきだと思います。ボールパークには野球を見るために足を運ぶのですが、それと同時にその空間でしか得ることの出来ない体験をするためにも人は訪れるのだと思います。人にとって居心地が良く、快適な設備を提供できる魅力あるボールパークを作ることが出来れば、野球そのものだけではなく、ボールパークでの経験を売ることが出来ます。

これを実践出来ているのがフェンウェイ・パークかと思います。歴史もあり、みんなに愛されているボールパークになっています。そのため熱狂的な野球ファンだけでなく、フェンウェイ・パークで得られる体験のためだけに来ている人もいるのではないでしょうか。

両方の要素を兼ね揃えることが出来れば、チームにとっても大きな強みになると思います。

ルキーノさんの中で世界一のボールパークはどこですか。

まずボールパークとは野球専用であり、スタジアムはフットボールやサッカーがプレーされる場だと思います。スタジアムの方がより広大であり、収容人数が多いですが、ボールパークに比べると個性は少ないかと思います。

私が一番と思うのは、米国内にあります。ボルティモア・オリオールズのカムデン・ヤードはそのうちの一つだと思っています。サンフランシスコ・ジャイアンツのAT&Tパークも素晴らしい。サンディエゴ・パドレスのペトコ・パーク、そしてピッツバーグ・パイレーツのPNCパークも良いボールパークです。ボルティモアにカムデン・ヤードが建設されてからはいくつも素晴らしいボールパークが誕生しました。