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2018年シーズン10大注目ポイント@中編

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(4)トロロッソ・ホンダに勝機はあるのか?

 マクラーレンと決別したホンダは心機一転、トロロッソとのタッグによってF1活動の再スタートを切る。しかし、その道筋は決して平坦なものではないだろう。

 ちまたでは「トロロッソはしょせんミナルディ。期待はできない」と見る向きもあるが、これは正しいとは言えない。



トロロッソとコンビを組むホンダはどこまで戦えるのか

 万年下位だった弱小チームのミナルディが2006年にレッドブルに買収されて誕生したトロロッソは、今もイタリアのファエンツァに本拠地を置いているとはいえ、ファクトリーは完全に刷新されてミナルディ時代とは比べものにならないほど近代化され拡張されている。空力部門はイギリスのビスターにあり、同じイギリスのミルトンキーンズにあるレッドブルテクノロジーズからの技術供与も受けている。

 テクニカルディレクターを務めるのはジェームス・キーで、小林可夢偉時代のザウバーで低予算ながら高性能なマシンを生み出し、開発能力には定評のある人物だ。トロロッソでも予算の制約のためシーズン後半戦には開発が続けられず苦戦を強いられているが、シーズン開幕当初は毎年のように中団グループのトップを争う位置につけていることからも、彼の生み出すマシンの基本性能が高いことはわかる(2017年開幕戦も予選・決勝ともに8位・9位)。

 チーム代表のフランツ・トストはオーストリア人で、無駄が嫌いな質実剛健の純粋なレース屋だ。1990年代には当時のフォーミュラ・ニッポンに参戦するラルフ・シューマッハのマネージャーとして日本で1年間過ごしたことがあり、日本人のメンタリティもよく理解している。

 チームスタッフは今もイタリア人が多いとはいえ、顔ぶれは多国籍化しており、今のトロロッソはかつてのミナルディとはまったく別のチームだ。「ミナルディのシェフが作るパスタがF1パドックで一番美味い」などと言われたものだが、今はトロロッソの食事もレッドブルのオーストリア人ホスピタリティクルーが作っているので、そんなことを言う人がいればモグリだと思ったほうがいい。

 ただ、ミナルディと別モノとはいっても、チームとして上位で戦った経験が不足していることもまた事実だ。トロロッソとしての最上位、そして表彰台獲得は2008年イタリアGPのセバスチャン・ベッテルによる優勝のみ。レース運営やレース戦略などのミスで、マシンパッケージの実力をフルに発揮しきれない弱さも多々ある。

 ドライバーの布陣にしても、トロロッソはレッドブルのジュニアチームであり、その育成プログラム所属の若手が起用されるため、どうしても不完全なものにならざるを得ない。

 また予算面でも、2018年はレッドブル本体からの供出が減ると言われており、財政は厳しくなりつつある。ホンダはレッドブル側から資金提供の依頼を受けてはいないが、パートナーとしてともに上位を目指すために、資金面でも何らかのバックアップを行なうことに前向きなようだ。その規模によってはジェームス・キー率いる開発陣の能力をフルに発揮することもできるだけに、それがトロロッソの成績を大きく左右することになるかもしれない。

 そして、もっとも気になるのが、ホンダ自身のパワーユニット開発だ。

 体制を一新して2018年に臨むホンダだが、基本的には昨年型をベースに正常進化させたものが2018年型パワーユニットとなる。そのため昨年の序盤戦に経験したような大きな失敗は起きないはずだが、逆に言えば驚くような進歩を果たすことも考えにくい。

 ホンダにとっても、トロロッソにとっても、再出発のシーズン。その初年度からの表彰台は難しいだろう。むしろ、これがF1参戦初年度だと思うべきで、高望みはできないのも当然だ。しかし、昨年のような大失敗もない。中団グループでコンスタントに入賞圏を争うところから再スタートすることになるだろう。

(5)大型新人シャルル・ルクレールはどれだけすごい?

 2018年は注目の大型新人がデビューする。

 一昨年のGP2王者から日本のスーパーフォーミュラを経て、昨年トロロッソのシートを獲得したピエール・ガスリーは今年初めてのF1フル参戦となる。WECからトロロッソに加入したブレンドン・ハートレイも、同じく今年が初の本格参戦だ。

 しかし、ガスリーやストフェル・バンドーン(マクラーレン)を超える逸材と期待されているのが、今年ザウバーからデビューを果たすモナコ出身・20歳のシャルル・ルクレールだろう。2016年はGP3、そして2017年はFIA F2と、それぞれ挑戦初年度ながら圧倒的な強さで制した。11ラウンド中ポールポジション8回という速さだけでなく、レースでの強さ、そしてメンタルの強さも新人離れしている。

 フェラーリの育成ドライバーとして、すでにフェラーリでのF1テストやザウバーからのFP-1出走を経験しており、F1フル参戦への準備も万端。2019年にはフェラーリ入りも噂されるほどの「フェラーリの秘蔵っ子」ルクレールがどんな走りを見せてくれるのか楽しみだ。

(6)伝説のアルファロメオ、F1復帰はいかに?

 1950年にF1世界選手権が始まったとき、初代王者となったジュゼッペ・ファリーナとその翌年王者となるファン・マヌエル・ファンジオらのドライブでF1を席巻したのが、イタリアの名門アルファロメオだった。

 そのアルファロメオが「ザウバーのタイトルスポンサー」というかたちでF1に復帰する。これは、フェラーリの親会社であるフィアットのセルジオ・マルキオンネ会長の肝煎(きもい)りで、いわばザウバーをフェラーリのジュニアチーム化しようというもの。ハースと同じようにフェラーリの最新型パワーユニットを供給するだけでなく、全面的に技術提携と資金提供を行なう。

 つまり、レッドブルとトロロッソのような関係になるのだ。

 これによって、メーカーの再編も次々と進みそうだ。ルノーはすでにマクラーレンと強固な関係を築き始めており、これに対抗するようにレッドブルはホンダとの距離を縮めている。そしてメルセデスAMGもフォースインディアのジュニアチーム化を視野に入れ始めていると言われており、2021年以降のF1新時代に向けた再編が動きつつある。

(後編に続く)