2018年シーズン10大注目ポイント@前編 開幕まで70日を切った2018年のF1は、いったいどんなシーズンになるのだろうか? 昨年は規定変更で速さを増したワイドF1マシンのダイナミックな走りや、メルセデスAMG対フェラーリのチャンピオ…

2018年シーズン10大注目ポイント@前編

 開幕まで70日を切った2018年のF1は、いったいどんなシーズンになるのだろうか?

 昨年は規定変更で速さを増したワイドF1マシンのダイナミックな走りや、メルセデスAMG対フェラーリのチャンピオン争い、そしてコース外ではマクラーレン・ホンダの離婚騒動など、さまざまな話題が巻き起こった。



20歳6ヵ月で今年の開幕を迎えるフェルスタッペン

 では、2018年はどうか――。どんなところに注目すれば、より面白く2018年のF1を楽しめるか、スポルティーバの独自の視点で予想してみよう。

(1)フェルスタッペンが史上最年少で戴冠なるか?

 2017年はメルセデスAMGが4連覇を達成したものの、シーズン前半戦は大きく実力を伸ばしたフェラーリがリードして折り返すなど、チャンピオン争いは過去3シーズンとはまったく違ったものになった。特にドライバーズタイトルがルイス・ハミルトンとセバスチャン・ベッテルという異なるチームのドライバーによって争われたことで、面白さは増したと言えるだろう。

 シーズン後半戦になるとフェラーリが何度も自滅を繰り返したことで、一気に流れはメルセデスAMG&ハミルトンへと傾いてしまい、タイトル争いは白けたものになってしまった。だが、序盤はマシン開発につまずいていたレッドブルが優勝争いをするところまで挽回し、幾度となく3強チームが入り乱れての「三つ巴の戦い」が繰り広げられることになった。

 2018年はマシンとパワーユニットに大きな規定変更がなく、2017年の延長線上での戦いとなる。ということはメルセデスAMG、フェラーリ、そしてレッドブルという3強チーム6人のドライバーがしのぎを削る大激戦になるはずだ。

 過去を振り返ってみても、3チームが選手権争いに絡むという例はほとんどなく、実現すれば稀(まれ)に見る激戦のシーズンとなるだろう。1982年には全15戦で勝者が11名誕生し、わずか1勝のケケ・ロズベルグ(ウイリアムズ)がチャンピオンに輝くという事例もある。

 さすがに現代のF1でそこまでの混戦はないだろうが、3強チームの争いが激化すれば波乱も起きやすくなり、中団グループのチームに優勝のチャンスが巡ってくることもあり得る。タイトル争いがまったく先の読めないものになる可能性も十分にあるだろう。

 そんななかで俄然注目が集まるのが、20歳の最若手マックス・フェルスタッペンの存在だ。

 17歳でトロロッソからF1デビューを果たし、シーズン途中でレッドブルに抜擢された2016年のスペインGPで18歳227日の史上最年少優勝、そして昨年は後半戦に2勝を挙げている。その驚異的な戦績のみならず、並み居るベテランを相手にまったく物怖じしないアグレッシブなドライビングとバトル能力は、大激戦のなかでより一層モノを言うだろう。

 ベッテルが持つ23歳134日という記録を大幅に塗り替え、9月30日が誕生日のフェルスタッペンが21歳になったばかりで史上最年少チャンピオンに輝く可能性もある。

(2)さらに差が縮まった中団グループの勢力図は?

 大混戦が予想されるのは3強チームだけではなく、むしろそれ以上の混戦になりそうなのが中団グループだ。

 2017年に中団トップの地位を確固たるものとしたフォースインディアは、2018年もそのポジションを守るべく臨んでくるだろう。しかし、彼らよりも予算の豊富なルノーとマクラーレンからの追い上げをかわすことは容易ではない。

 ワークス復帰3年目のルノーは、準備期間の間にチーム体制強化も進み、いよいよ本気で勝ちを狙ってくる。その第一段階として2018年は中団グループのトップに躍り出て、常に表彰台を狙える位置へのポジションアップを目指している。

 昨シーズン後半戦にニコ・ヒュルケンベルグとカルロス・サインツという強力なラインナップを完成させ、サーキット特性によってはフォースインディアを上回るほどの速さを見せた。これは、パワーユニットではまだ及ばずとも、車体面で彼らに勝(まさ)るところまで実力を伸ばしてきたことを意味している。2018年はさらに、その違いが顕著になるかもしれない。

 ハースにとって参戦2年目だった2017年は、人手不足を抱えつつレースを戦いながら開発したマシンで戦わなければならない、という厳しいシーズンだった。それでもシーズン終盤までアップデートを継続し、中団でポイントを争う力を維持し続けたのはさすが。3年目にして初めてレギュレーションが安定したなかで迎える2018年は、小さな所帯のハースにとってパフォーマンス面での真価が問われるシーズンになりそうだ。

 別項で解説するが、マクラーレンやトロロッソも2017年よりさらに強力な体制でシーズンに臨むことになるため、中団グループはさらに混戦度を増すことになるだろう。

(3)マクラーレン・ルノーは本当に勝てるのか?

「ルノーにスイッチすれば勝てる」と豪語したマクラーレンだが、2018年は本当に勝てるのだろうか?

 あるエンジニアは「レッドブルが優勝しているということは、我々にも勝つチャンスがあるということだ。20kW(約26馬力)の差は大きい」と語る。

 しかし、話はそう単純ではない。レッドブルは非力なルノー製パワーユニットでも勝負ができるよう、ダウンフォースの最大値よりも、いかに少ない空気抵抗で効率的にダウンフォースを生み出すか、という空力効率を重視したマシン作りをしている。

 その一方でマクラーレンは、ウイングを立てて空気抵抗に目をつむってでもダウンフォースをつけて走ろう、というマシン哲学だ。空気抵抗を蹴散らすほどのパワーがあれば圧倒的な強さを発揮できるが、ホンダからルノーにスイッチしたところで、そこまでのゲインが得られるわけではない。

 加えて、ホンダ製パワーユニットのコンパクトさによって受けていた恩恵も手放すことになる。ホンダRA617Hはユニット後方が極めてコンパクトで、車体のリア周りを細く、低く絞り込むことができた。これによって得ていた空力面のゲインは小さくない。

 また、総重量としてはそれほど差がないものの、ラジエーターなど補器類まで含めたRA617Hの重心位置はかなり低く、運動性能面への目に見えない貢献も小さくなかった。

 ピットストップ作業の速さに目を向けても、2017年の全20戦でマクラーレンがトップ5に入ったことは一度もない。レース戦略面でも弱体化は目立っており、優勝を争う勝負勘のようなものはそう簡単に取り戻せるものではない。

 もちろん、ホンダ製パワーユニットを搭載していた2017年よりも上位で戦えることは間違いないだろうが、2017年のレッドブルでさえ上位勢が潰れたレースを拾うのがやっとであったことを考えると、マクラーレンが優勝するのは容易ではない。勝つためにはパワーユニットの変更だけでなく、マクラーレン自身が大きく前に進まなければならないだろう。

(中編に続く)