WEEKLY TOUR REPORT米ツアー・トピックス 2018年の年明け初戦、セントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズ(1月4日~7日/ハワイ州)は、世界ランキング1位のダスティン・ジョンソン(アメリカ)がその強さを遺憾なく発…
WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス
2018年の年明け初戦、セントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズ(1月4日~7日/ハワイ州)は、世界ランキング1位のダスティン・ジョンソン(アメリカ)がその強さを遺憾なく発揮した。3日目を終えてトップに立つと、最終日もベストスコアの「65」をマーク。通算24アンダーまでスコアを伸ばして、2位に8打差をつける圧勝劇で今季(2017-2018シーズン)1勝目を飾った。
圧巻のプレーで今季初優勝を飾ったダスティン・ジョンソン
強風が吹き荒れ、時折雨も降る厳しいコンディションとなった最終日。ジョンソンは、「リードしていても、いいプレーをしないと勝てないと思った」と、後続に2打差をつけてのスタートであっても、決して油断することはなかった。
「どれくらい、いいプレーが必要なのかはわからなかったけど、昨日(3日目)までと同じゲームプランで攻撃的にコースを攻めた。目標を25アンダーに設定し、『昨年の上海と同じことが起こらないように』ということを意識していた。結果、勝ててよかった」
試合後、ジョンソンはそう言って胸をなで下ろすと、ホッとした表情を見せて笑みをこぼした。
ジョンソンが言う「昨年の上海」とは、2017年10月末に中国・上海で開催された、今季4戦目となる世界選手権シリーズ(WGC)のHSBCチャンピオンズでのこと。3日目を終えて2位に6打差をつけていたジョンソンだったが、最終日に「77」と崩れて、最終的に「67」で回ったジャスティン・ローズ(イングランド)に優勝をさらわれてしまった。
過去にもジョンソンは、最終日に崩れてメジャー優勝を何度か逃してきた。おかげで、この大会の結果によって、そうした”悪癖”が再発したかのようにメディアでは騒がれてしまった。
その悪評を払拭するためにも、ジョンソンは「今回はどうしても勝たないといけないと思った」と、密かに闘志を燃やしていた。
「だから、バックナインに入っても、決して気を緩めなかった」
実際、最終日は強風が終日吹きつけて、一時その風速は15m超えを記録するほどだったが、ジョンソンには関係なかった。追いすがるジョン・ラーム(スペイン)との差もじわじわと広げ、バックナインを迎えたときには6打ものリードを奪っていたが、それでもジョンソンの集中力が途切れることはなかった。
なかでも圧巻だったのは、12番パー4だ。
打ち下ろしながら、ピンまで433ヤード。ジョンソンは果敢に1オンを狙ってドライバーを振り抜くと、ボールは落下してからも傾斜を下ってグリーンをとらえ、さらにピンに向かって真っ直ぐ転がっていったのだ。
ボールは完全にラインに乗っていたが、結局カップのわずか手前でストップ。パー4での”ホールインワン”は惜しくも叶わなかったものの、楽々とイーグルを奪うと後続を完全に振り切った。
「(12番のティーショットは)完璧なショットだった。歓声を聞いて(カップに)近いとは思ったけれど、まさかあれほど近いとは思わなかったよ。まだパー4でホールインワンを達成したことがないから、ちょっと残念だったね(笑)。
とにかく今週は、本当にドライバーの調子がよかった。こうしてベストなプレーができたら、僕は(どの大会でも)勝てると思う」
世界ランキング1位として、その自信を改めてみなぎらせたジョンソン。この勝利で、2008年のルーキーイヤー以来、11シーズン連続勝利を果たした。この記録は歴代7位。記録更新中の選手の中では最長記録となる。
※ちなみに、1996年~2009年まで14シーズン連続勝利を遂げたタイガー・ウッズは歴代4位。
ところで、このジョンソンの”433ヤードのビッグドライブ”は、ゴルフ界で起きている『ボールが飛びすぎる論争』に一層火をつけることになりそうだ。
昨秋、ゴルフのルールを司(つかさど)るUSGA(全米ゴルフ協会)のマイク・デービス氏は、米メディアのインタビューで「飛びすぎるボールは、ゴルフにとって”恐ろしい出来事”だ」と警鐘を鳴らしている。
もちろん、テクノロジーの進化はボールだけでなく、クラブやシャフトにもおよび、飛距離のことを言えば、トラックマン(弾道測定器)などの分析力がアップしたことも挙げられる。
それも踏まえて、「このまま飛距離が伸びすぎると、ゴルフゲームが違う形になる。それは非常に危険なこと」とデービス氏は語る。そして、ボールやクラブのメーカー関係者と何らかの協議を持ちたい意向を示している。
そうした状況の中での、今回の”驚愕のビッグドライブ”である。
無論、ジョンソンはツアーでも1、2を争うロングヒッターで、昨季の平均飛距離はツアー2位の315ヤード(※1位はロリー・マキロイで317.2ヤード)。彼なら想定できることとはいえ、ジョンソンは今大会、4日間で375ヤード以上のティーショットを15回も放っているのだ。
これを機に、USGAなどが改めて”論争”を起こしてもおかしくない。
テクノロジーの進化によって、パワーゴルフ一辺倒となれば、確かにゴルフというゲームを根本から変えてしまうかもしれない。反面、ジョンソンの圧巻のドライバーショットは、見ているファンにとっては興味深いものでもある。
はたして、この”論争”はどうなっていくのか。今後の行方に注目である。