文:赤羽ひな(ラリーズ編集部・欧州特派員)写真:T3 PING PONG卓球の常識を覆そうとしている会社がロンドンにある。その名も「T3ピンポン」。同社は、円形の台で3対3のゲームを行う卓球台を製造する会社だ。T3とは”Triples Ta…
文:赤羽ひな(ラリーズ編集部・欧州特派員)
写真:T3 PING PONG
卓球の常識を覆そうとしている会社がロンドンにある。その名も「T3ピンポン」。
同社は、円形の台で3対3のゲームを行う卓球台を製造する会社だ。
T3とは”Triples Table Tennis”の略称で、個人で戦うという卓球の常識を覆し、1つの台の中でチームとして協力的に戦うことに重きを置く新しい卓球を提案する。
円形卓球台の誕生
T3ピンポンは、1979年にイギリス人の大学教授によって発明された。
当時、教育学を研究していた教授が「イギリスの小学生は体育の授業時に恥ずかしがってしまう」と悩んでいた。そこで「子どもたちが体育の授業で恥ずかしがらず、大勢で思い切り楽しめるゲームを作りたい」と考え、T3ピンポンが誕生した。
その後、1988年には卓球がオリンピック公式種目になり、卓球という競技の知名度向上と共にT3ピンポンの生産も拡大を続けた。現在ではイギリス国内に留まらず、アメリカ・スウェーデン・スイス・オランダ・オーストラリア・中国でも採用されている。
遊び方
基本的には普通の卓球のルールと変わらない。
ネットを挟んで3対3のチーム戦で戦う。大きいサイズの台では、6対6で戦うこともできる。サーブは斜めに打つことが求められるが、レシーブ以降は相手のどこに球を打っても構わない。とにかく楽しむことが重要視され、細かいルールはほとんど問われない。
公式ラケットは、面に大きく数字が描かれたものが存在するが、球に回転はほとんどかからない仕様になっている。一般的な卓球で用いるラケットを使うことももちろん可能だ。
卓球台のサイズは4種類で、利用者の年齢や部屋の大きさに合わせて選べる。インドア用とアウトドア用があり、インドア用で一番大きいサイズの台は約24万円(1650ポンド)。子ども用のミニサイズは約11万円(750ポンド)。
国内の卓球チャリティー団体やエリザベス女王の90歳記念でコラボレーションした商品もあり、一見すると卓球台とは思えないような派手やかなものもある。
介護用アイテムも充実
2016年からは「T3ファウンデーション」という名のNPOを立ち上げ、介護用の卓球アイテムにも本格的に参入を始めた。
車椅子に乗った人が腕を置ける高さの卓球台は、主に認知症の高齢者のエクササイズのために利用されている。円形の卓球台は、角がないのでぶつける心配がない。低くて安心な台は、小さい子どもにも使える。
高齢者施設でのイベントも年中行っており、今後は特に介護用アイテムに力を入れていく方針だという。
個人で戦う卓球の常識を覆し、1つの台の中でチームとして協力的に戦うことに重きを置かれたT3ピンポン。
いつかパラリンピックの正式種目として採用されることを長期目標として掲げている。
ロンドン北部にあるオフィス近くの公園「パーリアメント・ヒル・フィールド」では、アウトドア用の台を無料開放しているので、ロンドン旅行に訪れた際に覗いてみるのも良いかもしれない。