スイス出身のテニス選手といえば、最初に思い浮かべるのは、ロジャー・フェデラー(スイス)だろうか。それともマルチナ・ヒンギス(スイス)だろうか。いずれにしても、伝説的なプレーヤーだ。もしこれら2人の名前しか思い浮かんでこなければ、もう一人の名…

スイス出身のテニス選手といえば、最初に思い浮かべるのは、ロジャー・フェデラー(スイス)だろうか。それともマルチナ・ヒンギス(スイス)だろうか。いずれにしても、伝説的なプレーヤーだ。

もしこれら2人の名前しか思い浮かんでこなければ、もう一人の名前をスイス人テニスプレーヤーのイメージに書き加えるといいかもしれない。ベリンダ・ベンチッチ(スイス)がその人だ。

■手術のために、ツアー離脱を余儀なくされたベンチッチ

ベンチッチのランキング順位は74位。100位圏内であるとはいえ、それほど注目に値する順位ではないかもしれないし、トッププレーヤーたちの順位争いに日々、注意を向けているなら、話題にしたいとさえ受け止められないかもしれない。

しかしそれが、現在は20歳の選手で、自身の最高順位は7位とトップ10に入っていて、今は怪我からの復帰を目指す真っ最中だとすればどうだろうか。ベンチッチはまさに今、そんな環境におかれているところだ。

他方で、ツアー離脱前までのベンチッチの実績には目を見張るものが当然ある。その中には、WTA(女子テニス協会)の公式サイトによれば、ジュニア時代にグランドスラムを2度制し、ジュニアで1位になった実績もあり、2015年にはプロツアーでも大きな実績を残した。

同様に、カナダのトロントで行われた同年の「ロジャーズ・カップ」では、当時のランキングで1位だったセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)を準決勝で破り、見事に優勝を決めた。昨年には、最年少でのトップ10入りを果たして、ランキング7位を記録していた。

ただ、ベンチッチは昨年来、逆境にも直面してきた。2016年の春には、背中下部の怪我を理由にクレーシーズンを棒に振り、さらに左手首の怪我にも苦しんできた。

その後、手術を決断し、ツアーを離脱せざるを得なかった。WTAによれば、ベンチッチは左手首の怪我について「手首の中の腱が飛び出していたんです。元の場所に固定する必要がありました」と説明したという。

■300位以下から74位まで一気にカムバックしたベンチッチ

ベンチッチはツアーを離脱している間に、順位も自然と大幅に後退させ、2017年9月11日付けのランキングでは、318位にまで落ち込んでいた。

ツアープロにとって、これほどのランキング低下は、ベンチッチのように怪我でもなければそれほどないことなのかもしれない。が、それだけカムバックを印象的なものにしているといえるだろう。

実際のところ、ベンチッチのカムバックはすでに劇的だ。2カ月の間、ラケットを持つこともかなわなかったという。

その中で、ベンチッチはWTAによれば「ナーバスになっていました。正しい方向に進んでいるのだろうか。自分自身を何度も疑っていました」と振り返る。

しかし、いったんトーナメントに参加し始めると、勢いよく順位を上げ始める。上位トーナメントを管理するWTAではなく、ITF(国際テニス連盟)の大会に出場。復帰戦となったロシア・サンクトペテルブルクで9月18日から行われた大会で見事に優勝して、ランキングの巻き返しを開始した。

ベンチッチはその後、2017年シーズンを74位(12月18日付ランキング)で終えており、驚異的な巻き返しを見せた。

同選手は最近のカムバックについて「簡単な決断でした。プレーする用意ができたので、プロテクト・ランキングを使用しない決断をしました。より低いランキングで、より早くプレーを開始したんです」と話した。

さらに「目標は全豪オープンの出場資格を得ることで、メインドローに入れるかは最後の瞬間までわかりませんでした。台北の大会で優勝していなければ、入ることはできませんでした」(ベンチッチ)と話したことを、WTAが公式サイトで明らかにしている。

2018年にさらに高いパフォーマンスを見せて、カムバックをより劇的なものになるだろうか。慎重に見守っていきたい。(テニスデイリー編集部)

※写真は2017年のホップマンカップでリターンの構えを取るベンチッチ

(Photo by Paul Kane/Getty Images)