錦織圭(日本/日清食品)や杉田祐一(日本/三菱電機)、大坂なおみ(日本/日清食品)ら日本人選手の活躍もあり、テニス熱も一気に高まり、さらに多勢がテニスに興味を抱くようになったといわれている。ただし、そうは言ってもまだまだ、「一度、テニスの試…

錦織圭(日本/日清食品)や杉田祐一(日本/三菱電機)、大坂なおみ(日本/日清食品)ら日本人選手の活躍もあり、テニス熱も一気に高まり、さらに多勢がテニスに興味を抱くようになったといわれている。

ただし、そうは言ってもまだまだ、「一度、テニスの試合をとりあえず観戦してみたい」だったり「テニスの試合は観たいけど、よくわからない」だったりとハードルを感じてしまっているなんてこともあるだろう。今回はそこで、3つのテニス観戦の心得を紹介したい。

■心得その1:出場選手のライバル関係とプレースタイルを把握せよ!...同じ相手と何度も対戦することが多い選手たち。戦いの軌跡を確認して、観戦に備えよう

テニスでは、年間に60~70もの大会が開催され、それぞれにプレースタイルを確立したトッププロが優勝を目指してしのぎを削りあっており、どんな武器を駆使して試合をしているかが見所だ。

たとえばラファエル・ナダル(スペイン)とロジャー・フェデラー(スイス)は長年にわたって何度も対戦したカードだが、それぞれの特徴がよく表れている。

ナダルはフォアハンドから繰り出す、スピンの効いた打球を最大の武器にしているとよくいわれ、基本的には「ストローカー」や「ベースライナー」と呼ばれるスタイル。大きく弾む打球は返球しにくく、その強烈なストロークをどう駆使しているか注目だ。

対する、フェデラーは、もちろん強力なストロークも持っているが、サーブやネット付近でのボレーなどあらゆる種類のプレーを使ってゲームを組み立てる「オールラウンダー」だ。フォアハンドとバックハンドの両方を使ったストローク戦でも、サービスからすぐさまネットまで前進してボレーでポイントするなどさまざまな展開を見せてくれるのが魅力のひとつだ。

ちなみに、ナダルとフェデラーの通算戦績は、ナダルが23勝15敗となっている一方で、2017年だけを見れば、フェデラーが4戦全勝。つまり、もともとはベースライナーのナダルが勝ち越してきていたが、昨年などは「オールラウンダー」のフェデラーが巻き返してきているということで、強いプレースタイルをみつけ出そうとするのも一つの見方だろう。

ほかにも、威力のあるサーブを武器に、サーブ後にすぐネットプレーをしてポイントを重ねる「サーブ&ボレーヤー」や、ストロークを武器にベースラインからどんどんと攻撃を仕掛けていく「アグレッシブベースライナー」、同様に基本的にはストロークで戦うもののラリー戦に持ち込んで相手の隙をついてポイントを狙う「カウンターパンチャー」といったスタイルもある。

こうした選手の特徴や、過去の対戦成績を知っておくのが心得のひとつ目だ。

■心得その2:選手の心をとらえよ!...窮地に追いやられたときのシチュエーションと選手の緊張感を想像しよう

またテニスは、メンタルも非常に大切になるスポーツだといわれている。実際に、試合を経験する中では、実に多様なプレッシャーにさらされる。ポイント毎、ゲーム毎、セット毎に異なる状況になり、選手の心理を想像するのもいいだろう。

特に追い詰められた場面では、否が応にも緊張感が高まる。たとえば、通常は有利とされるサービスで15-40となれば、あと1ポイント取られると、ゲームを取られてしまう。対戦相手にサービス力があれば、ほとんどブレークは困難。いったんブレークされればもう敗戦濃厚だとなれば、ぜがひでも巻き返したいだろう。

しかし、サーバーからすれば「サービスを失敗できない」「ミスしたくない」「ゲームを取られたくない」と思えば思うほど、実際には身体が思うように動かないことも多い。つまり、追い詰められた場面で、自分のプレーができるか、普段のプレー以上のプレーでポイントを取れるかが大切になり、メンタルの強さも求められるのだ。

ほかにも、接戦になり、両選手ともキープを続けて迎えたゲームカウント5-4の場面(つまり、4ゲームを取得した選手のサービス)では、このサービスをブレークされるとセットを奪われてダメージは大きい。そのため「このサービスは落とせない」というプレッシャーがかかる。

ただ、一転して5-5になると、プレッシャーを感じるのは逆に、次にサービスをする選手だ。なぜかと言えば、自身のサービスをブレークされれば、5-6となり、あと1ゲームを取られると、そのセットを奪われてしまうからだ。さらに、もしもこの場面でサービスを落とせば、次は相手選手のサービスゲームで、ゲームを取るのは難しく、セットを失う公算が高まってしまう。

つまり、ゲーム内のポイントや試合の進み具合に応じて、プレッシャーのかかり方も、プレッシャーを感じる選手も変わることから、選手の心理を想像しながら、観戦すれば面白味も増してくるだろう。

■心得その3:ショットの技術に括目せよ!...各選手のショットの打ち方を把握して、試合展開を見届けよう

さらに、試合ではさまざまな種類のショットが使われるのも、テニスを深みのあるスポーツにしてくれている。サービスでも、グラウンドストロークでも、いくつかの基本的な種類があり、試合の中でも使われていることから、ショットの打ち方や球種を見極めながら試合を観戦するのも一つの手だ。

特に、ベースライン付近で打ち合うラリー戦では、ショットの凄みが光るシーンで、ショットの技術の見所だ。プレーをよくよく見てみると、選手の打ち方によってボールの飛ぶ早さ、軌道、跳ね方が大きく変わっていることに気づくかもしれないが、そうした球種の組み合わせで、ポイントを奪い合っているのだ。

具体的には、ナダルのフォアハンドのように、強いスピンのかかった返球は弧を描いて飛び、バウンドした後に大きく弾むのが特徴で、相手選手からしてみれば返しにくい打球になる。また、円弧を描いた軌道ではネットミスを犯す確率も下がるため、ポイントを失いにくいという特徴もある。

反対にバックスピンをかけた打球を目にすることも多く、テニスでは「スライス」と呼ばれるショットもよく駆使される。スライスは基本的には、スピンと異なり、直線的に飛び、相手コートに入ると比較的に小さなバウンドしかしない。

相手のストロークが強くおもいきり返球できない時に、とりあえずいったん相手コートに返してしのぐために使われたり、小さいバウンドしかしない特徴を生かしてペースを変えるために使われたりすることになる。

ほかにも、回転の少ない「フラット」と呼ばれる打球や、スピンに近い打ち方でも、直線的な軌道でより速く飛ぶ球種もあり、選手ごとに得意な球種も異なる。そこで、こうした球種の違いや、選手ごとに得意な打球を見極めていくのも、一つの見方だといえるだろう。(テニスデイリー編集部)

※写真は昨年の「全豪オープン」でのフェデラー

(Photo by Michael Dodge/Getty Images)