皆さん、ついに東西地区の4強が出揃いました。決勝シリーズに残ったのは前年度王者、ステフィン・カリー擁するウォリアーズ。そして前年度準優勝、キング・レブロン・ジェームズを要するキャバリアーズ。この二つは共に順当な2チームでした。特にレブロンの…

皆さん、ついに東西地区の4強が出揃いました。

決勝シリーズに残ったのは前年度王者、ステフィン・カリー擁するウォリアーズ。そして前年度準優勝、キング・レブロン・ジェームズを要するキャバリアーズ。この二つは共に順当な2チームでした。特にレブロンの所属するキャバリアーズは1回戦も準決勝も無敗での勝ち上がりで、東地区優勝候補筆頭に挙げられています。

さあ、残りの2枠ですが、まず名乗りを上げたのは、西地区の常勝軍団スパーズを倒す偉業を達成したサンダー。レギュラーシーズン67勝のスパーズが圧倒的に有利とされる中、ケビン・デュラント、ラッセル・ウェストブルックの2大スターが驚異的な活躍を見せ、チームを4強に導きました。

1回戦第7戦にもつれるヒートとの死闘を勝ち抜き、残りの1枠を手にしたのはトロント・ラプターズ。

今シーズンのラプターズ、レギュラーシーズン56勝でキャバリアーズに次いで2位通過ですから、普通に考えたら順当な勝ち上がりです。

でも東地区決勝ラウンドにトロント・ラプターズ。。。あまり聞き慣れないですよね?

それもそのはず、なんとラプターズはプレーオフ1回戦を勝つこと自体が15年ぶりなのです。

それだけではなく、西の決勝進出はなんと21年の球団史上初めての快挙!!ここ最近のラプターズは、シーズン中は沢山勝つけど、プレーオフになると苦戦して1回戦で姿を消す。上位通過で有利なはずなのに、プレーオフになると経験のある下位チームに競り負ける印象でした。

これは僕の勝手な意見ですが、NBA30球団中、唯一カナダに本拠地を置く彼らはプレーオフになると、ガツガツ勝ちを狙ってくる他のチームに比べ、ヨソヨソしい振る舞いで遠慮がちに見えていました。

今季のプレーオフ、1回戦も準決勝も第7戦にもつれる死闘を彼らは勝ち抜いてきました。インディアナ・ペイサーズを下した1回戦の第7戦、ケーシーHCは試合後、チームは1回戦を突破できていないというプレッシャーで、“ガチガチだった”とコメント。

レギュラーシーズンどんなに勝ち星を重ねても、4戦先勝のプレーオフトーナメントには違う魔物が存在する。

NBAを取材していると、このフレーズをよく耳にします。メディアは特にプレーオフ特集や取材の中で使いたがります。実際、毎年のように聞き続けているので、最初は“そんなの関係ないでしょ”と思っていてもだんだん信じていることに気がつくことがあります。

選手にとってもそれは同じなのです。負けたらシーズンが終わる。チームの夢がワンプレーの結果に大きく左右される。プレーオフに入ると全員の頭にこの事実が重くのしかかるからこそ、土壇場での決定力や精神力が大きく試されていきます。要は、メンタルの強さ=チームの強さになるケースも多く、経験がものをいうシチュエーションが増えます。

そうゆう意味で言うと、プレーオフに入ってからのラプターズの選手達は本当に可愛いの一言に尽きます。

先ほど述べましたが、15年間プレーオフ1回戦で敗退してきた彼ら、ヘッドコーチがまさかの公式コメントで“ガチガチ”だったというくらい緊張しまくるのを皮切りに、若いエースのラウリーとデローザンがびっくりするほど明らかなスランプに突入しました。ラウリーに関しては観てる人全員が分かるぐらいシュートを避け始め、それをメディアに取り上げられていた。早急に自信を取り戻したかったのでしょう、準決勝マイアミとの第1戦が終わったあとに夜中までシューティングをしました。相手と精神的な駆け引きをして流れを呼び込むのが当たり前のプレーオフで、あまりにも分かりすぎるメンタルの弱さを露呈しちゃう彼ら。。 

ミスをしたくない、大切にプレーしなきゃいけないと真面目に思っていた結果なのか、ヒートとのシリーズでは毎プレー、ショットクロック残り13秒位まで全くパスを回さずセットプレーをやり続け、シュートも決まらない退屈な試合を展開。

またもやメディアに、“超つまらなくて見てられない”、“NBAのバスケットボールと違う競技を始めた”などと書かれ、デローザンとラウリー共に“もっと自分達らしく、プレーオフを楽しまないといけない”と反省気味なコメント。

とにかく真面目で素直すぎるラプターズの選手たちは、本当に突っ込みどころ満載で可愛いのです。

 

そんな彼らが臨んだ準決勝ヒートとの第7戦。ラウリーとデローザンはどん底のスランプ時よりは大分良い状態で期待が持てるようになっていました。

ところがこの試合、スタート時間が現地の午後3時半。なんとラプターズはプレーオフの試合で午後4時前にスタートするのは、1999-2000年にまで遡って13連敗中だったのです。

いや、そんなこと言ったらマズイ! 可愛いラプター君達がガチガチに緊張しちゃう。

 

しかし悪い数字もあれば、良い数字もあるのがNBA。

ラプターズはプレーオフに入ってから負けた次の試合は5勝0敗というニュースも発表されました。何が彼らの緊張をほぐす材料になったのか定かではありませんが、奇跡的にラウリー、デローザンの二人が63得点10アシストの大活躍して、ウェイド率いる強豪ヒートを撃破!念願の初決勝シリーズへ進出することになったのです。

急にノリノリになったので何があったのか調べてみたら、ケーシーHC が試合前に“全くプレッシャーを感じる必要なし、7戦目はいつでも楽しいゲーム。思いっきりプレイするだけだ”とコメントしていたのですね。さすがドウェイン・ケーシー、ちゃんと彼らのメンタルを良い状態に仕上げていました。

さらにラプターズはこの日、プレーオフで勝ち上がるためにケーシーHCが重要視していた二つの鍵となる要素を上手く揃えていました。

 

一つはサプライズ的に現れるラウリー、デローザン以外のヒーロー。

このプレーオフで怪我したビッグマン、バランチュナスの代わりに急成長を遂げたのが、控えのビヨンボ。第7戦では17得点に16リバウンドと大暴れ。インサイドの存在感と同時に、今後チーム3番手の核となりそうです。

 

二つめは、ラプターズを支える、カナダ・トロントの熱狂的なファン。

NBAの世界で成長するのは、選手だけではない。ラプターズの進化はファンと共に歩んできた過程でもあるのです。エア・カナダ・センターのアリーナを埋め尽くすファンがいることが彼らを強くしてきました。

さらに地元ラプターズファンはアリーナ外に特設されたジュラシックパークと呼ばれる広場に毎試合2,000人ほど集まって、チームを応援しているのです。

相手チームからすれば敵地に乗り込んでの試合はそれだけでも十分不利。ラプターズのファンの存在は殊更に大きいわけです。

 

紆余曲折を経験しながらNBAのトップチームへと成長するラプターズ。次なる対戦相手は、NBA界のキング、レブロン・ジェームズを擁するクリーブランド・キャバリアーズ。

誰もがキャバリアーズの圧勝を予想している中、若く素直で純粋なラプターズがどこまで自分達を信じて邁進できるのか、皆さんと一緒にあたたかく見守りたいと思います。

 

明日(18日)木曜午前9:15より、いよいよ東プレーオフ決勝がスタート。ラプターズvsキャバリアーズ第1戦の結果は果たして?ラウリー、デローザン、そしてビヨンボに注目です。

オリジナル好評企画、長澤壮太郎のSO!スポNBAもあるので、NBAは是非WOWOWで!

 

長澤 壮太郎(ながさわ そうたろう)

生年月日: 1973年5月3日
出身地:東京都
大学在学中にモデルとしての活動を開始。日本国内のみならず、パリ、ミラノなど海外においても日本を代表する男性ファッションモデルとして活躍中。 

●担当番組
NBAバスケットボールほか
NBAのオフコート情報をお届けする長澤壮太郎presents「So!スポ」を担当。 

■好きなNBAチーム
ニューヨーク・ニックス
理由:ホームタウンチームなので

■NBAで注目している選手
ステフィン・カリー(ウォリアーズ)
ケビン・デュラント(サンダー