2017年のシーズンなかばでツアーを離脱した錦織圭の復帰が近づいている。 11月に一時帰国した錦織は、全豪オープンの前哨戦で12月末に開幕する「ブリスベン国際」での復帰を目指す、と話した。ただ、「けががいつ治るかわからないので、ブリスベン…

 2017年のシーズンなかばでツアーを離脱した錦織圭の復帰が近づいている。

 11月に一時帰国した錦織は、全豪オープンの前哨戦で12月末に開幕する「ブリスベン国際」での復帰を目指す、と話した。ただ、「けががいつ治るかわからないので、ブリスベンを目指すが、(復帰は)2月、3月になるかもしれない。なるべく焦らず、しっかり治してからツアーに戻りたい」と口ぶりは慎重だった。

 11月下旬、錦織は拠点の米国・IMGアカデミーから日本に戻り、日清食品ドリームテニスARIAKEなどのイベントに参加した。メディア対応の機会もあり、故障の回復ぶり、復帰の見通しなどを率直に語った。

 その時点ではIMGアカデミーでリハビリやトレーニングに取り組んでおり、トレーニングは1日3、4時間、テニスの練習は1、2時間。当初は打球時の衝撃を軽くするために空気圧を落としたボールと軽量のラケットを使って練習をスタートし、その後、通常のボールで行うようになった。「だいぶ打てるようになってきているが、まだ(力の入れ方は)5割6割くらい。まだ思いきりは打てない」という。

 打球時に大きな負荷がかかる右手首だけに、慎重に練習を進めている様子だ。もちろん医師やトレーナーにも助言を求めるが、最終的なゴーサインは自分自身で出すつもりだ。

「自分の中で『治った』と思えば出るだけ。ドクターやトレーナーには分からない感覚なので、僕自身が手首に100%、テニスしていて痛みがなければ出られる。それがいつ来るかわらないので、まだ復帰のメドは立たない」

 復帰の時期は自分で決める、治ったと思ったら出る、と腹をくくったことで、復帰を焦る気持ちは消えたようだ。

 ツアーを離れている間にアレクサンダー・ズベレフなど若手も台頭、ロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダルも健在で、ライバルは増える一方だが、「挑戦は楽しみ」ととらえている。

「よりタフになっているのは感じているので、ある意味、楽しみな部分もある。フェデラー、ナダルが戻り、プラス、下の若い層が上がってきて層は厚くなっている。けがをして半年(近く)出られなかったが、その中に入っていけるように戻っていきたい」

 トップ10の地位を3年近く維持してきたが、現在は22位までランキングが落ちた。しかし、この離脱が残したものはマイナス面だけではないようだ。

 17年は不振にあえぎ、マイケル・チャンコーチには「ハングリーさを失っている」と指摘された。確かに、どこか覇気がなく、疲れの色も見えた。しかし、この数カ月の離脱が初心を取り戻すきっかけになったのかもしれない。なかでも、「メンタル的にもしっかりリセットできた」(錦織)ことは大きかったのではないか。

 まだ公式戦のコートに立つことはできていないが、前向きな気持ちは取り戻せたようだ。言葉を選びながら慎重に復帰の見通しを語る中で、頼もしい言葉も聞くことができた。

「(復帰後)最初の数カ月は大変だとは思いますけど、それもたぶん、苦しいながらも楽しんでできると思う。久しぶりにトップ20以下に落ちて、なるべく早くトップ10、トップ5に戻っていきたい」

 その自信は、と問われると、こう答えた。

「ぼんやりとはある。いつかはできるだろう、とは。今現在はなかなかフェデラー、ナダルに勝つっていう考えまでいかないが、しっかり練習もできて、手首に自信がついて試合も行えるようになったら自然に自信もついてくると思う。層も厚くなり、ジョコビッチやマレーも戻ってくるので大変にはなるけど、その挑戦も楽しんでやりたい」

 早ければブリスベンで、あるいは全豪オープンで、あのアグレッシブで、ひたむきで、しかも遊び心たっぷりのプレーが見られる。その日が待ち遠しくてならない。(秋山英宏)※写真は2017年全豪オープンテニスでの錦織圭 (Photo by Clive Brunskill/Getty Images)