テニスファンにとって2017年のキーワードのひとつは「怪我」だったかもしれない。錦織圭(日清食品)が8月に手首の怪我でツアーを離脱したほか、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)やスタン・ワウリンカ(スイス)も負傷を理由に治療に専念している。また…

テニスファンにとって2017年のキーワードのひとつは「怪我」だったかもしれない。錦織圭(日清食品)が8月に手首の怪我でツアーを離脱したほか、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)やスタン・ワウリンカ(スイス)も負傷を理由に治療に専念している。

また今年は対照的に、怪我からのカムバックを果たした有名選手もおり、復帰してきたという側面でも、「怪我」がカギとなる見方だったといえるだろう。

今回は、2017年に怪我から復帰して、見るべき成績を残した選手について取り上げ、紹介していく。

■治療から復帰し、年末のランキングトップに返り咲いたラファエル・ナダル(スペイン)

※写真は「全仏オープン」のときのもの

(Photo by Julian Finney/Getty Images)

最初に取り上げるべきなのは、現在、2017年末のランキング1位の座を守っているナダルだろう。昨シーズンとなる2016年は、10月に怪我の治療への専念を理由に、ツアーを離脱した経緯があり、同選手の2017年は怪我からの復帰戦で幕を開けた。

年初からのランキングを振り返ると、1月2日時点では9位と前年のシーズン後半を治療に充てたもののなんとかトップ10に留まっていたが、そこから上位へ再び返り咲いた。

年初に行われる「ブリスベン国際」では、準々決勝まで進出したもののミロシュ・ラオニッチ(カナダ)に敗れたが、「全豪オープン」ではロジャー・フェデラー(スイス) との決勝戦に進出し、準優勝の結果を手に入れた。順調にツアー復帰できるかどうか不安もあったものの、上々の滑り出しを示した格好だった。

シーズン上旬のハードコートでのトーナメントではほかにも、「マイアミ・オープン」でも、ナダルは決勝戦に進出し、フェデラーと対戦した。試合自体は惜しくも、負けてしまったが、上位に進出するなどクレーシーズンに向けて、弾みをつけた。

その後、4月頃からはじまったクレーコートの大会でナダルは、「クレーキング」と呼ばれてきた実力の本領を発揮しはじめ、「モンテカルロ・ロレックス・マスターズ」では見事に優勝。2017年内では初のタイトルを獲得した。

さらに、「バルセロナ・オープン」「ムトゥア マドリッド・オープン」「全仏オープン」と、グランドスラムを含む4つの、クレーコートでの大会で優勝するという、印象的な成績を残した。特に「全仏オープン」では、決勝でスタン・ワウリンカ(スイス)を圧倒的な強さで破り、ナダル持ち前のクレーシーズンでの強さを再度、アピールした格好となった。

グラスコートのシーズンは、「ウィンブルドン」にだけ出場した。同大会では4回戦で、ジル・ミュラー(ルクセンブルク)との試合が敗戦で終わったものの、3-6、4-6、6-3、6-4、13-15、4時間48分にも及ぶ激しい試合を戦い抜いた。ナダルにとっての結果は黒星だったものの、ミュラーの長時間の試合でも質の落ちないテニスに競り負けた格好で、十分にファンをわかせた。

北米に舞台を移すと、ナダルはまたグランドスラムで再び結果を残す。「全米オープン」で躍動し、決勝戦へ進出すると、ケビン・アンダーソン(南アフリカ)を6-3、6-3、6-4のストレートで下して今期2つ目となるグランドスラムの優勝という栄誉に浴した。

今年はさらに、「チャイナ・オープン」でもタイトルを獲得。ナダルは今年、6つのタイトルを手にし、4度の準優勝を飾るなど、怪我の治療からの復帰シーズンを見事に飾り、伝説級のプレーヤーとしての存在感を再び示した。

■手術から復帰して2つのグランドスラムをかっさらったロジャー・フェデラー(スイス)

※写真は今年の「ウィンブルドン」のときのもの

(Photo by Clive Brunskill/Getty Images)

もう一人の「レジェンド」も2017年には、ツアーへの復帰を果たした。今や、いわずと知れたスーパースターのフェデラーだ。2016年に、左膝の手術をしたり、背中の怪我も重なるなど、「ウィンブルドン」直後からツアーを離脱し、復帰をかけたシーズンだった。

結果的に、ナダルと同様に、フェデラーのツアー復帰は順調だった。

1月に「全豪オープン」に出場すると、怒涛の勢いで、フェデラーは勝利を積み重ねた。4回戦には錦織圭(日清食品)との試合に臨むと、6(4)-7、6-4、6-1、4-6、6-3とファイナルセットまでもつれこむ接戦を制して、準々決勝に進出。そのまま決勝まで駆け上がると、ナダルにも勝利し優勝。復帰シーズンの、序盤でいきなりグランドスラムのタイトルを取得して、ファンを驚かせた。

「BNPパリバ・オープン」「マイアミ・オープン」でもタイトルを獲得。クレーシーズンは休んだものの、グラスコートで行われる「ゲリー・ウェバー・オープン」「ウィンブルドン」では優勝。ナダルと同様に、復帰シーズンで、2つのグランドスラムを手にし、周囲を驚かせた。

8月に入ると、「ロジャーズ・カップ」で決勝まで進出し、アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)に負けはしたものの、準優勝という結果。さらに、「全米オープン」では、フアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)に準々決勝で敗れたものの、上位への進出を果たした。

ほかにも、秋以降のシーズンでも、「上海ロレックス・マスターズ」に続いて、フェデラーの地元でもある「スイス・インドア」での優勝も決めた。「ATPファイナルズ」では、ダビド・ゴファン(ベルギー)に準決勝で惜敗したが、年間を通じてみれば7つのタイトルを手にする十分すぎる成績での復帰を果たした。

■ランキング38位から11位まで急浮上したデル ポトロ

※写真は今年の「全米オープンのときのもの

(Photo by Clive Brunskill/Getty Images)

フェデラーに対して互角以上の戦いを繰り広げられるデル ポトロも、今年怪我から復帰して、ツアーに戻ってきた強豪選手の一人だ。

長らく怪我に泣かされてきたデル ポトロは、1月に出場を予定していた大会を欠場し、2月からツアーに復帰した。同選手自身が長年にわたって怪我とその治療に苦しんできた経緯もあり、今シーズンの出鼻も同じ問題にくじかれた格好だった。

しかし、デル ポトロは今年、タイトルも獲得するなどの活躍を見せた。具体的には、「ストックホルム・オープン」で優勝したほか、「スイス・インドア」では決勝戦に進出。フェデラーとの決勝戦は敗戦となったものの、7-6(5)、4-6、3-6と3セットを戦いきって、はつらつとプレーする姿を見せた。

デル ポトロについては、今シーズンの成績では復帰してランキングを大きく上げてもきた。年初の1月2日時点では38位。2月20日にはいったん42位までランキングを下げたものの、「全米オープン」を終えた時点で24位に。さらに9~10月にかけて「上海ロレックス・マスターズ」でベスト4、「スイス・インドア」での準優勝も影響して、11月に入った時点で11位と一気にランキングを戻してきた。

デル ポトロ自身のキャリア最高ランキングは4位となっており、今後、トップ10入りや、上位へ食い込んでその順位に迫れるか来シーズンでは問われる。(テニスデイリー編集部)※写真は左からナダル(Photo by Julian Finney/Getty Images)、フェデラー(Photo by Clive Brunskill/Getty Images)、デル ポトロ(Photo by Clive Brunskill/Getty Images)