卓球は流れのスポーツ前回の記事では、「ピンチから逆転する為の3つの方法」を紹介した。そこでも書いたように、卓球の試合には流れがある。たとえ実力が拮抗した相手であろうとも、圧倒的に点差が開くこともある。あるいは、デュースまでもつれ込む接戦を繰…
卓球は流れのスポーツ
前回の記事では、「ピンチから逆転する為の3つの方法」を紹介した。
そこでも書いたように、卓球の試合には流れがある。たとえ実力が拮抗した相手であろうとも、圧倒的に点差が開くこともある。あるいは、デュースまでもつれ込む接戦を繰り返した末の最終ゲームで11-3で決着がつく、といったこともごく普通にある。
またあるいは、10-5で誰もが勝敗が決まったと思ったとたん、大逆転で試合がひっくり返る、ということもよくある。あなたもそういった経験はあるのではないだろうか。
これらは卓球というスポーツにおいて「試合の流れ」という要素が非常に強いことから考えられる。
あっさりと試合が決まってしまうこともあれば、あっと驚く大逆転劇も起こる、というのが卓球の面白いところであり、同時に怖いところでもある。
今回は、前回の記事とは反対に、あなたがリードしている状況で、逆転負けを喫しないための方法を考えていこう。
なぜ逆転されてしまうのか
綿密に練った作戦を実行し、気迫のこもったプレーを繰り広げ、得点は10-6。
「ふう、10点取ったぞ。あと1点とれば勝ちだ」
そんな状況からの逆転負けは、精神的にもかなりのショックを覚えることだろう。
では、それまでリードしていたのに、あと「たった1点」取れば勝ちなのに、なぜ逆転されてしまうのだろうか。
それは、間違いなく心理的な状況の変化によるものだ。
1.気が抜けてしまう
9点、10点を取ったら、勝ちはもう目前である。というところで、人間はどうしても気が抜けて余裕が生まれてしまう。「もう、ほぼ勝ったな」と安心してしまうのである。
試合会場でも、点差を離して余裕があるから、入らなさそうなボールを無理に打ちにいったり、11点目をかっこよく決めようとしてミスしたり、といった光景をよく目にする。しかし、こういったプレーは非常に危険である。その1本のミスが、相手の「逆転のきっかけ」となってしまうケースも十分に考えられるからだ。
大きく点差を離した、10点目を取った、そこで「ほぼ勝った」気持ちになるのは分かる。だが、もちろん「まだ」勝っていはいない。勝負は最後の最後まで、何が起こるか分からない。11点目を取るまで、絶対に気を抜いてはいけない。
2. 勝ちを意識して硬くなる。
2011年世界選手権の、張継科vs王皓の決勝戦。張継科がゲームカウント3-2とリードし、得点が9-5。ここで王皓が痛恨のサーブミス。10-5となり、誰もがそのまま試合が決まると思いきや、ここから張継科はミスを繰り返し10-10にまで追いつかれてしまう。
張継科は「勝ち」を意識して体が硬くなり、それまで普通に入っていたボールが、全く入らなくなってしまったのである。
こういったことは、ビッグゲームになればなるほど顕著に見られる。
結局最後は張継科が踏ん張って勝ちをもぎ取りはしたが、10-5の時点では余裕の表情だったのが、失点を重ねるごとに表情がこわばっていく様が見てとれる。
そして王皓の方も、相手が硬くなっていることを把握したうえで、サーブを出す位置をフォア側に変えたり、ロングサーブを出したり、それまでより若干トスを高くしたり、わざとスピードを落とした緩いボールを出したりと、揺さぶりをかけている。このあたりは逆転する側としては非常に参考になるプレーだ。
逆転されない為の3つの方法
1.リードしているということを忘れる
リードした状況から逆転されない為に、まず大前提となるのが、「絶対に気を抜かない」ことである。「気を抜かない」と簡単に言っても、気は抜けてしまうものなので、気が抜けない為の方法を考えよう。
・得点を見ない
審判の得点板を見て、「10-7」となっていれば、どうしても少しは気が緩んでしまうものである。それならば、いっそ見ないようにするのも手である。これまでの状況は忘れて、ただただ、目の前の一本を取ることのみに集中しよう。
・得点が逆だと思い込む
あるいは、「10-7でリード」ではなく、「7-10で追いかけているんだ」と思い込むのはどうだろうか。さらに言えば、「3-10だったところから、追い上げて7-10まで来た」という風に考えれば、気持ちが抜けることはなく、より引き締まって積極的にプレーができるであろう。
2.これまでどうやって得点していたのかを分析し、そのまま継続する
逆転する方法と同様に、リードしている際もこれまでの自分のプレーの分析は重要である。
・どのサーブが効いていたのか・どのレシーブが効いていたのか
・ラリーでの得点が多かったのか、3,4球目での得点が多かったのか
しっかりと振り返り、そのプレーを継続しよう。
リードしていて余裕があるからといって、急に今まで出していなかったサーブを出したりすることは、危険である。
フォア前へのサーブが効いていたなら、徹底してフォア前。バック対バックのラリーで得点していたなら、そのままバック対バックでの戦法で押し切る。
余計なことは考えず、これまでと同じことを徹底して続けよう。もし相手がそれに対応してきたなら、そこで初めて作戦を変更すればよいのである。
3.強気で攻める
リードしたときに自身の心理的な変化があるのは当然のことである。そこで、あと1点を取る為に、「安全に入れるか、強気に攻めるか」の選択に迫られることがあるだろう。
ここは間違いなく、「強気で攻める」ことを勧める。
リードしている状況ということは、相手は崖っぷちなので強気でガンガン攻めてくるはずである。安全に入れにいったところで、相手は攻めてくるので、いいボールを打ちこまれることが想像できる。
それに、安全なプレーはどうしても気持ちが消極的になりがちだ。それは相手にも必ず伝わる。相手に「お、勝ちを意識して入れに来たな」と思われたら、逆転負けパターンまっしぐらだ。そうならない為に、強気で攻めることを心掛けよう。
また、「強気で攻める」とは「なんでもかんでも強打する」という意味ではない。
ストップならピタりとネット際にストップ。ロングサーブなら思い切ってスピードを出す。ループドライブならネット深くに思い切り、とミスを恐れず積極的なプレーを選択しよう。
それでも、逆転されることはある
「10-5でリードした。ふう。よし、勝ちはもうすぐだ。」
↓
「あれ、10-7になったぞ。このまま逆転されたらどうしよう」。
↓
「あっという間に10-10に追いつかれた。どうしよう、目の前が真っ暗だ。」
↓
「そのまま10-12で逆転負け。最悪だ。」
これまで逆転されない為の3つの方法を紹介してきた。しかし、どれだけこれを実践しても、逆転されるときは逆転される。これは仕方がない。
それを少しでも防ぐために、こういう考え方もある。
将棋などは、一手目から勝負が決まるまでで、1試合だ。
しかし卓球の場合は、点取り合戦だ。
「“試合をして勝った方が1点を得る”ということを、どちらかが11点になるまで繰り返している」というようにも考えられる。
要はジャンケンを11勝するまで繰り返しているようなものだ。
仮に自分がジャンケンで10連勝したからとって、その後相手が11連勝したって、なんら不思議なことではない。なので、「リードしてもどうせ逆転されるんだ」というように考えれば、変に気負わず、平静を保ったプレーができるだろう。
もしくは「自分が5点連続で取ったなら、次は相手が5点連続で取る番だな」くらいに思っていればよい。そのように考えていれば、たとえ10-10に追いつかれたとしても、「ほらやっぱりね」という気持ちで、プレッシャーを感じることなくプレーができる。
まとめ
1.リードしているということを忘れる2.これまでどうやって得点していたのかを分析し、そのまま継続する
3.強気で攻める
以上が、筆者が考える逆転されない為の3つの方法だ。
実は、わたし自身も逆転負けを喫することがよくある。そのときわたしは、典型的な逆転負けパターンのプレーをしている。
・リードしていることから余裕が生まれて、安全に入れてしまう
・余裕があるとこれまでと違うプレーをしてしまう
・追いつかれだすと弱気になり、どんどんプレーが消極的になる
こうなった時には、ほぼ100%逆転負けを経験している。なので、これと逆のことをすれば必ず勝ちきることができる。
普段、リードしていて逆転負けをよくするという方は、今回の内容を参考にして、目の前に迫った勝利を確実にものにして頂きたい。
文:若槻軸足(卓球ライター)