ノルディックスキー複合で6大会連続五輪代表の渡部暁斗(37)=北野建設=にとって、19日の団体スプリントが五輪で最後の…

 ノルディックスキー複合で6大会連続五輪代表の渡部暁斗(37)=北野建設=にとって、19日の団体スプリントが五輪で最後の種目になる。長く競技を引っ張ってきたベテランのラスト五輪。支え続けてきた妻・由梨恵さん(37)が取材に応じ、エールを送った。(取材・構成=松末 守司)

 由梨恵さんは引退を初めて告げられた時のことを今でも覚えている。21年春、渡部暁から「たぶんここ(22年北京五輪)でやめる」と伝えられた。同5月に次男が誕生後も「もうやめるかな」と気持ちは変わらなかったが、北京五輪の個人、団体で銅メダルを取ると「もう1、2年続ける」と言われたという。

 不安だった。秋から冬の終わりまで海外遠征に出る夫。長男1人の育児は「1人でも大丈夫」と奮闘してきたが、次男出産後は体調を崩したこともあり、追い込まれた。22~23年シーズン途中、渡部暁は家族のために遠征を切り上げて緊急帰国。「帰ってこさせてしまった」と心苦しかったが、それから家族の一体感は増した。

 会話が増え、渡部暁も保育園の送迎や料理など育児により積極的になったという。「トレーニングの仕方も効率的になって子どもたちの時間を増やしていますね」と由梨恵さん。現役続行を決めながら「もう無理かも」と弱音を吐く夫を「中途半端にやるならやめれば」とげきを飛ばしたこともあった。「あれだけ自分と向き合える人に会ったことがない。やりたい自分が『もういい』ってところまでやってほしかった」

 昨年10月の引退会見。渡部暁は随筆「徒然草」の一節「花は盛りに、月は隈なきをのみ、見るものかは」を紹介したが、妻にも思いを伝えていた。「桜が満開の時に見て奇麗だなっていうのもいいけど、その散っている姿も美しいと。(最後まで)美しいと思われるような競技人生にしたい、みたいな話をしていた。何かいいなと思って聞いてました」

 19日の団体スプリントが五輪で最後のレースになる。「面白いレースをしたがっているので、そういうレースで終えられたら。自分の理想のレース展開とか、1個でも多くできるといいねという気持ち。楽しかったと思ってくれれば」。由梨恵さんは静かにその時を見守るつもりだ。

 ◆渡部 由梨恵(わたべ・ゆりえ)1989年1月12日、北海道。富良野市出身。37歳。6歳からアルペンスキーを始め、早大在学中はアルペンスキー選手。大学卒業後、フリースタイルスキー・HPに転向。14年5月に渡部暁と結婚。18年平昌五輪に出場。17年12月のW杯中国大会で2位。19年に現役を引退。