2012年世界選手権ペア銅メダリストで、14年ソチ五輪で木原龍一と組んだ高橋成美さん(34)が、「りくりゅう」の快挙を…

 2012年世界選手権ペア銅メダリストで、14年ソチ五輪で木原龍一と組んだ高橋成美さん(34)が、「りくりゅう」の快挙を「見た」。

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 ものすごくうれしいです。人生でこんなに自分のこと以上にうれしかったことは経験したことがないくらいです。逆転を生んだ一番のポイントは集中力です。互いを信頼し合った、全く気を抜く瞬間がない4分間でした。減点を回避するのではなく、より加点を求めていった、攻撃的な素晴らしいフリーでした。「りくりゅう」の2人は互いのすべてを補い合えている気がします。2人を見ていると、自分のこと以上に相手のことの方が詳しいんじゃないかなって。そんな2人が支え合い、信じ合い、金メダルにたどり着きました。

 序盤のサイドバイサイド(並んで同時に跳ぶジャンプ)での3連続は普段以上に質の高いものでした。そして、SPで珍しいミスがあったリフト。フリーも同じ入り方なのでドキドキしましたが、いつもの「りくりゅう」のリフトでした。最後のスロー3回転ループも美しかった。あそこまでノーミスで来ると慎重になりすぎて、投げる側が低く出してしまうことはよく見るパターンです。そうなってもしかたがないと思って見ていたら、全然なんのその。全く迷いがなかった。私はテレビの解説中ではあったのですが、ここで立ち上がって次の解説をしてしまうほど心打たれました。

 歴代1位だったロシアのミシナ、ガリアモフ組と、2位だった北京五輪金メダルの隋文静(ずい・ぶんせい)、韓聡(かん・そう)組(中国)の「スイハン」を上回る世界最高得点。これはものすごいことです。「スイハン」が北京後に休養に入り、ロシアの選手は試合に出られなくなりました。「りくりゅう」が世界一になっても、「環境が変わったから」という見方をされることがありました。とっくの昔にスケートの内容では覆していたのですが、今日数字としても結果を残しました。日本のペアがチャンピオンなんだという事実を、世界中の誰もが認めざるを得ないはずです。

 私自身、ペアを続けるうえで苦労はありました。スケート人口に対して、日本はアイスリンクが少ない。ペアは貸し切りでなければ練習できることがかなり限られますが、貸し切ることが日本では困難です。ペアを専門としているコーチがなかなかいないということもあります。練習場所を日本から遠ざけると、その分、日本人とパートナーを組める可能性も減っていく。クリアしないといけないハードルがどんどん増えることになるのです。

 そんな環境で長く日本のペアをリードしてきた木原選手の強さは、積み重ねる力です。いろんな方々が、木原選手をサポートしたいと思える。それは積み重ねている姿を周りが見ているから。決して木原龍一は天才型ではありません。正真正銘の努力型で、努力の達人。天性の努力職人! だからこそ周りが応援したいと思えるし、こうして三浦選手という素敵なパートナーとも巡り合えました。

 今後は「りくりゅう」に憧れてペアを始めたという子、さらに「りくりゅう」に憧れてスケートを始めたという子が出てきてくれたら感動しちゃいます。木原選手は常々「僕たちを見てペアを始める人が増えたらうれしい」と言っています。そういう気持ちが一番いい形でつながりそうな、今日の出来事だったんじゃないかなと思います。(14年ソチ五輪代表)