ミラノ・コルティナ五輪ノルディックスキー女子でチームの柱、伊藤有希(31)=土屋ホーム=を、陰から支えるのが北海道・下…

 ミラノ・コルティナ五輪ノルディックスキー女子でチームの柱、伊藤有希(31)=土屋ホーム=を、陰から支えるのが北海道・下川ジャンプ少年団のコーチでもある父・克彦さん(59)だ。10代から世界に飛び出し、活躍する娘を指導し、成長を見守り続けてきた。自身の果たせなかった夢舞台に4度目も立つ娘へ、エールを送り続ける。(取材・構成=松末 守司)

 ジャンプの五輪会場にひときわ目立つオレンジ色のポンチョを着た集団がいる。ジャンプの聖地として名高い北海道・下川町の応援団だ。その中に下川ジャンプ少年団のコーチを務める女子代表の伊藤の父・克彦さんもいる。地域の育成に励み、競技の普及と底辺拡大に尽力してきた一人。伊藤も幼少期からその環境に身を置き、技術を高め世界に飛び出した。

 若い頃は競技に集中しすぎる面もあったが、今はオン・オフを使い分ける娘に頼もしささえ感じるという。「夏の大会などで妻が一緒に見に来ているときは『何か食べに行こうか』とか言ってくるようになった。(2022年)北京五輪後くらいからか、空いている時間をやりたいことに使えるようになった」と成長に目を細める。

 父として誇らしい出来事があった。女子のフライングが初めて実施されることになった22~23年シーズンのW杯。大きなジャンプ台で危険が伴うため、上位15人しか出場できない。伊藤は直前の大会でまさかの失格。出場圏外に脱落したが伊藤のため世界が動いた。

 各国選手、コーチたちが署名活動するなどして出場を後押し。結局、他の選手の辞退などもあり、スタートゲートに座った。国内外の選手からも愛され、尊敬されるその姿は、父として何よりの宝物になった。「1番で飛んで、公式練習で全員の選手を下で出迎えていたんですが、子どもの頃に小さいジャンプ台で何回も転んで、最後立った時に『やったー』と喜んだ顔と同じ顔をしていた。『そこ(楽しさ)にスキージャンプをやる意味がある』って話をしていたけど、親としてはこんなうれしいことはないです」

 4度目の五輪では、7日の個人ノーマルヒルで17位。思うような結果が出せていない。今大会初採用のラージヒルが最後の種目となる。「妻も私も五輪には出られなかった。4度も出るなんてどれだけ大変かは分かる。自分が持っているものを出せるように、準備して臨んでほしい」と話すまなざしは優しい。現地で、最後まで精いっぱいの思いを届け続ける。

 ◆伊藤 克彦(いとう・かつひこ)1967年1月18日、北海道・下川町出身。59歳。元ノルディックスキー複合の選手。東海大四高から東洋実業へ。下川ジャンプ少年団でコーチを務める。妻の真智恵さんは元アルペン選手で全日本選手権覇者。長女は有希、長男は元ジャンパーの将充氏。