◆ミラノ・コルティナ五輪 ▽フィギュアスケート 男子フリー(13日、ミラノ・アイススケートアリーナ) 男子フリーが行われ…

◆ミラノ・コルティナ五輪 ▽フィギュアスケート 男子フリー(13日、ミラノ・アイススケートアリーナ)

 男子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)2位の鍵山優真(オリエンタルバイオ・中京大)が、合計280・06点で銀メダル。22年北京五輪に続く団体とのダブルメダルで、フィギュアの日本勢最多の通算4個目のメダル獲得となった。初出場の佐藤駿(ともに22)=エームサービス・明大=が合計274・90点でSPから大逆転の銅メダル。日本勢男子は3大会連続でのダブル表彰台となった。優勝候補のマリニン(米国)はまさかの8位に終わった。

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 鍵山選手と佐藤選手のダブル表彰台は予想できましたが、マリニン選手の失速は私を含め、業界全体の驚きでもあったと思います。これほど苦しむマリニン選手の姿を見るのは、恐らく初めてでしょう。

 4回転アクセルや4回転ループの回転が抜けたり、4回転ルッツで転倒したりと、予想外のミスが続きました。マリニン選手は体力的に苦しい時でも、ほとんどミスはしなかった。だからこそ絶対王者であり、誰もが金メダルを有力視していたはずです。

 気持ちのコントロールが追いつかなかったことが、原因かもしれません。団体戦を2本滑り、体力というよりも、精神的なエネルギーが100パーセントではなかった。マリニン選手が滑らなければ、団体戦での金メダルは難しかったでしょう。団体戦で金メダルを取ったことで、シングルに向かう気持ちを整わせられなかったのかもしれません。例えば、2本目の4回転アクセル。転倒はあったとしても、回転が抜けて1回転になるとは誰が想像したでしょうか。このシーンを見た時に、普段のマリニン選手とは違うと感じました。

 鍵山選手は、4回転フリップを決めたかったところですが、練習の時よりもジャンプに入るスピードと流れが不十分でした。しかし鍵山選手の強みは、ミスをしてもステップとスピンで絶対に取りこぼさすに、フィニッシュすることです。この4年間で積み上げてきた美しいスケートを最後まで出来たことが、銀メダルにつながりました。

 佐藤選手には、SP(ショートプログラム)9位でもチャンスはあると思っていました。五輪直前の国際大会では、マリニン選手の前に滑って完璧な演技を見せました。今季はSP、フリーともに安定感があり、五輪でも期待をしていましたが、ワンランク上の安定感で銅メダルを獲得してくれました。

 金メダルのシャイドロフ選手は今シーズン、ジャンプに苦しんでいました。回転不足を取られ、それを意識しすぎてミスを誘発。負の連鎖にメダルは難しいと予想していましたが、大舞台で持ち味でもある細い軸からのスピード豊かな4回転を全て成功させました。気持ちもテクニックも、よくコントロールされた演技でした。

 3大会連続のダブル表彰台は、羽生選手や宇野選手らが第一線から退いても、変わらない日本の層の厚さを世界にアピールしました。同時に、マリニン選手に代表される”4回転時代”の空中戦が、リスクを伴うものであることも実感させられました。(2010年バンクーバー五輪代表・織田 信成)