◆サウジC・G1(2月14日、キングアブドゥルアジーズ競馬場・ダート1800メートル) 胸が高鳴る。昨年3月に開業したば…

◆サウジC・G1(2月14日、キングアブドゥルアジーズ競馬場・ダート1800メートル)

 胸が高鳴る。昨年3月に開業したばかりの前川調教師がサンライズジパングと海を渡る。レースは砂上の世界最高峰を争うサウジC。「本当にオーナーさんに感謝です。どんな馬でも海外を目指すわけじゃない。適性の合う馬なら、どこでも行きたいんです」と厩舎初の海外遠征へ力を込めた。

 技術調教師として矢作厩舎で研修していた24年は、レースやセリで6か国に同行。実際にサウジアラビアの馬場も歩き、感触は知っている。「土に近い感じです。ジパングはサラサラの馬場だったチャンピオンズCで走りづらそうなのを見て、中東のダートが合いそうと思ったんです」。確かな“経験値”に基づいた判断だった。

 この1年はJRA初の女性調教師として、注目を集めてきた。「忙しかったです。厩舎で馬を見ていないと不安なタイプで…。ずっと頭使いっぱなしみたいな感覚でした。1年が長かった」。多忙な中でも、ほこり除去のために乾草を蒸すスチーマーの導入など女性らしい工夫も積極的に取り入れた。少し草が固いため、柔らかくなるようにサウジにも持ち込んでいる。1頭、1頭を見守る時間も長く、常にベースは“馬ファースト”。「ジパングは可愛い。子供っぽいんです、性格が。調教でも他の馬に頼ったりとかで、末っ子タイプです」と笑顔で説明する。

 期待が膨らむ理由はもうひとつある。「世界で一番好きなジョッキーなんですよ」と口にするオイシン・マーフィー騎手=英国=との初コンビだ。助手時代の19年、栗東・坂口厩舎で担当のロードエクスプレスに騎乗した秋明菊賞だった。普段はうるさかった馬が、マーフィーが乗るやスッと落ち着いた。「動じないですよね。すごく馬が、馬に乗るのも大好きな人だなって。一昨年ドバイで話しましたが、すごくピュアな感じでした」。今度は自らの管理馬を、しかも世界の大一番で託す。

 2年ぶりに戻ってきた中東の地。当時はまだ子供っぽく映り、馬場へ向かう手綱も引いていたフォーエバーヤングが今や砂上で世界の主役となっている。「本当に胸を借りる気持ちですけど、勝負ですから、やっぱり勝ちたいという気持ちがなければ出走してはいけないと思う。狙っていきます」。自分の感性を信じた大いなる挑戦。1年の集大成を異国の地に刻み込む。

(山本 武志)

 ◆前川 恭子(まえかわ・きょうこ)1977年4月9日、千葉県生まれ。48歳。03年から栗東に入り、崎山博樹、田所秀孝、坂口智康厩舎での助手を経て、23年12月に調教師試験に合格し、JRAで初めて女性調教師となった。25年3月に厩舎を開業。同23日の阪神4R(ミトノオルフェ)で初勝利。JRA通算10勝。