馬トク報知で今年から始まった過去の名勝負を当時の記事中心に振り返る【競走伝】。今回はヴィルシーナが勝った2012年のク…
馬トク報知で今年から始まった過去の名勝負を当時の記事中心に振り返る【競走伝】。今回はヴィルシーナが勝った2012年のクイーンCを取り上げる。投手として、横浜(現DeNAベイスターズ)や米大リーグで活躍した“大魔神”佐々木主浩オーナーの重賞初制覇。馬主としても大活躍のきっかけとなったのは、同馬の母で「尻尾のない馬」との出会いによるものだった。
完ぺきなレースだった。好スタートを切ったヴィルシーナは、2番手をキープ。1000メートル通過が1分2秒7のスローペースでもしっかり折り合い、直線では、はじけるように伸びた。「ゲートを出した後に控えたら自分から息を抜いた。本当に賢い馬です」と岩田康。会心のレースで重賞初制覇を飾った。
これで、この年の3歳世代のディープインパクト産駒は重賞出走機会7連勝となった。「ディープには乗ったことないんですけど、こういう跳びをするのかなと思いました」。初騎乗の岩田康だったが、父譲りの高い能力を感じ取った。
馬主は大魔神こと佐々木主浩さん。この日は、ヴィルシーナの名付け親でもあるタレントの加奈子夫人とともに観戦し、「ドキドキしました。ゴール前は、相当力が入りました。こうやって重賞を勝って、G1が楽しみになってきた」と笑みが絶えない。JRAの馬主となって7年目、3度目の挑戦で重賞初勝利を挙げた。
母のハルーワスウィートは生まれながらにして、尻尾がなかった馬として知られる。そんなハンデがありながらも現役時代に5勝をマーク。佐々木オーナーは、そのひたむきな走りに現役時代から注目していたのだ。ハルーワの子だからこそ所有し、熱い気持ちがしっかりと花開いた形だ。
その母も管理していた友道調教師は「前走(エリカ賞1着)から、けっこう前に行けるようになっていた。折り合い? 馬房でものんびりしていて、手のかからない馬だから」と笑顔で勝因を分析。佐々木オーナーとの「鉄壁ライン」の始まりは、この勝利だった。
ヴィルシーナは3歳牝馬3冠路線に駒を進めたが、3戦すべてで3冠馬ジェンティルドンナの2着。頂点まであと一歩で手が届かず、もどかしい思いを続けた。しかし、古馬になってからは2013、14年にヴィクトリアマイルで史上初の連覇を達成。常に一線級で走り続け、通算成績は21戦5勝。2014年の有馬記念(14着)を最後に現役引退し、繁殖入りした。産駒もディヴィーナ(23年アイルランドT府中牝馬S勝利)、ブラヴァス(20年新潟記念勝利)などが重賞勝利を挙げている。
「尻尾のない馬」ハルーワスウィートはその後、シュヴァルグラン(17年ジャパンC勝利)、ヴィブロス(16年秋華賞、17年ドバイターフ勝利)と2頭のG1ホースを輩出。日本屈指の名牝として注目を集め、そのDNAは令和の時代にも広がり続けている。